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 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週担当する東京本社・鈴木悠貴(33)が注目したのは函館競馬場内にある温泉施設。JRA獣医師の村中雅則さんに話を聞き、その効果に迫った。

 昨年、函館で取材していた時のこと。ある厩舎関係者に「この馬はなんで函館だと走るんですか?」と質問すると「温泉が好きだからじゃないかな」と驚きの返答が。恥ずかしながら、私はそこで競馬場内に「馬の温泉」があることを初めて知った。「どんな施設なんだろう」。その疑問を解決すべく、今年は函館競馬場スタッフのご協力の下、施設を見学させていただいた。

 「プールや海水を使った施設は他の国にもありますが、温泉施設は日本だけしかありません」。案内してくれたのは、自身も温泉ソムリエを取得するほどの大の温泉好きだというJRA村中獣医師。元々、競走馬の温泉は62年に湯の川温泉の「大湯温泉」内に温泉療養施設を開設したのが始まりだそう。その後は交通事情により一時廃止されたが81年、厩舎関係者の強い要望により競馬場内に“再設置”。現在は1日6〜10頭が温泉を利用しているという。

 泉質は塩化温泉。効能は血行促進による疲労回復効果、関節や腱など各種運動器の炎症治療、リラックス効果と言われている。また、飲泉による胃腸疾患や便秘に対する効果もあるそうだ。「唯一のデメリット」として村中獣医師が挙げたのは爪への影響。「ふやけたり硬くなったりを繰り返すと爪がボロボロになります」。また、一部の関係者には「競馬中にリラックスし過ぎるのもどうか」という意見もあるようで、温泉を利用する厩舎と利用しない厩舎に分かれている。

 村中獣医師に話を聞いているさなか、助手に連れられ、ある5歳馬が温泉施設にやって来た。人と同じくシャワーで一通り体を洗った後、40度前後の温泉がたまった浴槽へ。上部に取り付けられたシャワーで背中や腰にお湯をかけられると馬は舌を出し、目はうつろ。完全リラックスモードだ。「気持ち良過ぎて寝てしまう馬、寒い時季には温泉から出ようとしない馬もいるんですよ」と村中獣医師。温泉好きなのは人間だけではないようだ。

 ミホシンザン、スーパークリーク、ナリタブライアン、カネヒキリなどの名馬も英気を養った函館競馬場内の温泉施設。一戦ごとの疲労が大きくなっている今だからこそ、こういう“癒やし空間”の役割は増していくのかもしれない。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の33歳。千葉大法経学部を卒業後14年にスポニチ入社。昨年1月から競馬担当。