「また日本が韓国から奪おうとしている!」日本政府のLINEヤフーへの行政指導に韓国国民が猛反発?

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日本政府がLINEヤフーに対して韓国企業NAVER(ネイバー)との資本提携の見直しを求めたことを受けて、韓国国民が「また日本が韓国のモノを奪おうとしている!」と猛反発しているという。

一体、お隣の国で何が起きているのか? また反日活動が活発になるのか? 韓国に住む現地コーディネータに協力いただき、状況を調査した。

不正アクセス事件を受け、日本政府がLINEヤフーに行政指導

事の発端は’23年9月に起きたLINEヤフーへの不正アクセス事件だ。LINEヤフーが同年11月に行った発表によると、LINEアプリの利用者情報など最大約44万件が流出した可能性があるという。

この不正アクセスの原因が、同社と韓国NAVERグループとの関係にあった。

きっかけは子会社であるNAVER Cloud社の委託先の従業員のパソコンがマルウェアに感染したことだが、LINEヤフーがNAVERと認証システムを共有していたことから日本側のシステムにまで侵入され、情報が流出する事態となったのだ。

状況を重く見た総務省はLINEヤフーに対して行政指導を実施。しかし、その後の報告でLINEヤフーが「NAVERとのネットワークの完全分離には2年以上かかる」と回答したことから、2度目の行政指導でLINEヤフーにNAVERとの資本関係の見直しを求める流れになったというわけだ。

韓国野党側が猛反発

問題はこのあとだ。なんと韓国の最大野党『共に民主党』の李在明(イ・ジェミョン)代表が「伊藤博文の子孫(松本剛明総務相のこと)が韓国のサイバー領土『LINE』を強奪しようとしている」とSNSで国民に対して訴えたのだ。

また、韓国メディアもナショナリズムを煽る論調で「LINEが日本に奪われる!」との報道を繰り返した。こうした動きを受け、韓国ではLINEアプリのダウンロード数が急上昇しているという。

この騒動をきっかけに、’19年に韓国で起きた日本製品不買運動がまたしても起きてしまうのだろうか? 現地の様子を知るため、韓国・ソウルに住むコーディネーターに話を伺った。

「反日というよりは愛国運動

――日本政府がLINEヤフーにNAVERとの資本関係の見直しを求めたことについて、韓国の一般ユーザーはどのように受け止めていますか?

「2つのタイプに分かれている感じです。『政治的なことになっているよね』、『カカオトークがあるからいいよ』とあまり関心がなさそうな人と、報道を受けて怒っている人です。 

前政権の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対日強硬派だったんですが、いまはその逆です。だから、いまの尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に不満を抱いている人は『けしからん!』と怒ってます。 

よく韓国では“共通の敵”と言うんですけど、野党が支持率をあげたいときにこの言葉が使われていて、(野党からしたら)格好のネタができたっていう感じです。 

例えばこれが違う国だったらこんな反応にはならないと思います。けれども昔、日本に植民地にされたという歴史があるため、『日本に何かを奪われる』ことに対してすごく敏感になることがあるんです」

話を聞くかぎりでは、反日がメインというよりは愛国運動や政権批判に使われているようだった。韓国で広く使われているメッセンジャーアプリが、LINEではなく『カカオトーク』というのも理由として大きいようだ。

韓国内のシェア率94.4%のカカオトーク

――韓国でカカオトークはどれくらい使われているのでしょうか?

「いま調べてみたところ、LINEのシェアが20%なのに対して、カカオトークは94.4%なんです」

――韓国の人はLINEを使わない?

「元々LINEを使ってる人は、日本とお仕事されている人とか、日本人や台湾人、タイ人とグループチャットで会話する人たちです。あとは日本のアニメが好きで、そのスタンプを使いたい人とか。 

それ以外の人は本当にカカオトークがメインになっています。学校や職場のグループトークはカカオトークだし、公共のお知らせ、国税庁からの連絡もカカオトークです。 

LINEがリリースされたのが’11年6月、カカオトークは1年以上早い’10年3月で、スマホと一緒に一気に広がりました。LINEの前にNAVERトークというアプリもリリースされたんですが、もうカカオトークが使われていたのでLINEと同じくそちらも広まりませんでした」 

日本でも行政からの連絡はLINEが使われている。仮にそのLINEが他国に奪われるとなると騒ぎになりそうだが、ほかのメッセンジャーアプリであれば関心を持つ人はあまりいないだろう。

落ち着きを見せ始めているが、予断を許さない状態

とはいえ、あまり楽観的にばかり見てもいられないようだ。先出のコーディネーターが知人の韓国人に「カカオトークで送ってもらった」という意見には、手厳しいものが多かった。反対派の意見を紹介すると……

「理由は(日本が)自由意思(経済)ではなく、国の決定で無理やりなことを言ってると思うからです。自由経済社会においてあり得ないことだと思います。アメリカ企業が相手だったら絶対に言えないことを韓国の企業には言ってると思います。もちろん韓国のバカな尹錫悦政府が相手だからだと思いますけど。尹錫悦政府の支持率は21%です。40代の支持率は8%。もう長くないと思います」(※( )内は補足)

と、日本政府の要求に対して弱腰な与党を批判する声が大きかった。

また、ほかの方に韓国の会社内の意見を探ってもらったところ、若い人から中年の方まで全員が反対派であり「LINEはいま必要ないから使わないけど、韓国のものだから日本に渡すのは嫌だ」という意見が聞かれたそうだ。

20代前半の親日家の若者からは「もともと日本のものだと思ってた(笑)」「韓国で使ってる人ほとんどいないから日本に渡しちゃったほうがいい」という声もあったそうだが、韓国内では少数派だと考えられる。

現在では総務省も「経営権を奪うといった観点から資本の見直しを求めたものではありません」とあくまでセキュリティガバナンスの見直しのためだと説明し、韓国側でも「日本人利用者のデータの管理を日本側に移転する」と報じられ落ち着きを見せ始めているが、韓国与野党の政争次第で予断を許さないものになるリスクを抱えていると言えるだろう。

取材・文:篠原修司
1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりインターネットを中心とした炎上事件やデマの検証を専門にフリーランスのライターとして活動中。