【ライブレポート】ザ・クロマニヨンズのツアーファイナル。“かけがえのない時間”が作る、例えようのない高揚感と充実感

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■“今”という時代を生きていることへの感謝の気持ち

『ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024』が、6月15日北海道・名寄市民文化センターEN-RAYホール公演でファイナルを迎えた。全43公演、全国を問答無用の極上のロックンロールショウで熱狂の渦に巻き込んだ。その6月4日のTOKYO DOME CITY HALL公演を観た。

2月29日のSpotify O-EAST公演も観ているが、当たり前だがまったく違う感覚を覚えた。会場も違えばお客さんも違う、ツアーも後半戦になってきてバンドのアンサンブルがより強固なものになり、例えようのない高揚感と充実感に包まれた。変わらないのは最高のロックンロールと最強のロックンロールバンドが存在する、“今”という時代を生きていることへの感謝の気持ちだった。

The Son Of P.M.「King of Drums(A GO-GO)」やDan Lacksman「Coconut」など軽快なロックンロールが会場BGMとして流れる開演前。「楽しむ準備はできている」という待ち切れない客席の気持ちが熱気になり、手拍子が起こる。真島昌利(Gu)、小林勝(Ba)、桐田勝治(Dr)そして甲本ヒロト(Vo)が大歓声に迎えられ登場し「オーライ!ロックンロール」と叫び「あいのロックンロール」からスタート。2ビートのリズムが炸裂し、甲本が音を全身で感じながら歌を届けると、観客もステージに愛をぶつける。一曲目からクライマックスのような盛り上がりだ。

アルバム『HEY! WONDER』の“A面”から順番にテンポ良く披露される。重いビートの「大山椒魚」の“夢は急なもの”という歌詞は、ロックンロールと出会ったときの、甲本少年がショックを受けたシーンを想像してしまう。この曲に限らず、事実かもしれないし何かのメタファーかもしれないその歌詞の数々は、インタビューで甲本が「受け取った人が感じたことがすべて正解」と語っていたように、どこまでも優しく、そしてすべてを受け入れてくれる。「ゆでたまご」では観客が肚の底から「オイ!」と叫ぶ声が響く。

「よう来てくれたな」と甲本が客席にメッセージを贈ると、早くもA面の6曲目、“ドン”(ドラムのキック)・“パン”(手拍子)・“ウーッ!”(掛け声)というシンプルなリズムとドゥワップの旋律が印象的な「恋のOKサイン」だ。「A面終わり、他のアルバムからの曲もやるぞ」と「ランラン」を投下。「生きる」は客席も大合唱だ。甲本のブルースハープが鳴り響く「エイトビート」は “ただ生きる 生きてやる/呼吸を止めてなるものか”と力強く凛として歌が真っすぐ突き刺ささってくる。客席の熱狂ぶりに甲本も「むちゃくちゃ楽しそうだな。こっちだって楽しいぞ」と笑顔だ。“片道分の 力が欲しい/もう帰らない それでいいんだ”と願うように、拳を握りしめ歌う「メロディー」は、観客は涙を流しながら体を揺らしている。「B面最高!」と叫ぶ甲本。

■時折挟み込まれる甲本の朴訥とした温もりのあるしゃべりと、汗と涙の情熱のロックンロールが生み出すかけがえのない時間

“くだらねえ”というフレーズをひたすら繰り返す「くだらねえ」。でもその「くだらねえ」はひとつひとつ違う。この曲を書いた真島が、赤いライトに照らされギターを弾く姿に引き込まれる。小林のベースがうねるグルーヴを作り出す「SEX AND VIOLENCE」を歌い終わると“さりげなく”メンバー紹介。真島がギターを持ち帰ると甲本が「マーシーはギターを取り替えました。ちゃんと言っておかないと明日学校で『えっ、マーシー、ギター取り替えたの?!気が付かなかったわ!』という会話が起こりかねないので、ちゃんと言っておきます」と客席を笑顔にする。ファンにとって、時折挟み込まれる甲本の朴訥とした温もりのあるしゃべりと、汗と涙の情熱のロックンロールが生み出すかけがえのない時間が、クロマニヨンズのライブだ。ノスタルジーを感じる軽快なカントリーテイストの「不器用」の、“いいことがきっとある”というフレーズが沁みる。B面も終盤だ。しかしすぐにはラストにはいかない。

「イノチノマーチ」「ごくつぶし」で客席が一体となり、さらに「エルビス(仮)」「紙飛行機」とエモーショナルを加速させるナンバーが次々と投下され、「ナンバーワン野郎!」で凄まじい熱狂が生まれる。甲本から「アルバム、ええのう」という言葉がこぼれる。すべての観客が大きく頷いたはずだ。そして「B面最後の曲」の「男の愛は火薬だぜ~『東京火薬野郎』主題歌~」へ。どこか昭和歌謡を彷彿させる味のある旋律は音源とライブではまったく違う表情をして襲い掛かってくる。真島のギターソロに引き込まれる。本編が終わりメンバーがステージから捌けていき真島が「またね~」とチャーミングに手を振る。

もちろんこれで終わるはずがなく、メンバーが再び登場するとメンバーと客席、全員でタオルを掲げ、全員が笑顔、全員で楽しんだ“証”だ。甲本が客席を見渡し「全員覚えたぞ、また来いよ」と声を掛け、メンバーがTシャツを脱ぎ捨て「やることはひとつ、ロックンロール」と叫び、「SEX AND DRUGS AND ROCK’N’ROLL」からスタート。「突撃ロック」「ギリギリガガンガン」と、メンバーも思い切り楽しみながら、まだまだ終わらないぞと迸る情熱をオーディエンスに届ける。甲本の「今日は最高!」という言葉に、客席も同じ思いを大歓声で意思表示する。「楽しかったまたやろうな!」と甲本が最後にメッセ―ジを贈り、ステージから去っていく時、真島と肩を組んで手で客席に手を振る。最高のラストシーンだ。

■ザ・クロマニヨンズのライブはやめられない、止められない

いろいろなことを抱えてライブ会場に足を運ぶファン。しかしこの瞬間だけは何もかも忘れて、ザ・クロマニヨンズのメンバーと共に心からロックンロールを楽しむ。それがかけがえのない瞬間となってずっと心に残り、日々の生活の中でその人の心の中で輝き続ける。「やることはひとつ、ロックンロール」──ザ・クロマニヨンズのライブはやめられない、止められない。

TEXT BY 田中久勝
PHOTO BY 柴田恵理

『ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024』
2024年6月4日 TOKYO DOME CITY HALL
セットリスト
1.あいのロックンロール
2.大山椒魚
3.ゆでたまご
4.ハイウェイ61
5.よつであみ
6.恋のOKサイン
7.ランラン
8.生きる
9.エイトビート
10.メロディー
11.くだらねえ
12.ダーウィン(恋こそがすべて)
13.SEX AND VIOLENCE
14.不器用
15.イノチノマーチ
16.ごくつぶし
17.エルビス(仮)
18.紙飛行機
19.ナンバーワン野郎!
20.男の愛は火薬だぜ~『東京火薬野郎』主題歌~
アンコール
1.SEX AND DRUGS AND ROCK’N’ROLL
2.突撃ロック
3.ギリギリガガンガン

リリース情報

2024.9.25 ON SALE
DVD「ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024」

ザ・クロマニヨンズ OFFICIAL SITE
https://www.cro-magnons.net/