「第77回カンヌ国際映画祭」監督週間で公式上映された『化け猫あんずちゃん』久野遥子監督(右)、山下敦弘監督(左奥)(C)KAZUKO WAKAYAMA

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 フランスで開催中の「第77回カンヌ国際映画祭」で現地時間21日、日仏合作アニメーション映画『化け猫あんずちゃん』が公式上映された。久野遥子監督と山下敦弘監督がそろって同映画祭初参加を果たした。

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 山下監督は、2017年に放送されたドラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』の監督を務めており、同ドラマ内で目指していた「カンヌ国際映画祭に出品する映画作品の製作」が実現。「昔、『山田孝之のカンヌ映画祭』というドラマを作っていた身としては、本当は来ちゃいけないんじゃないかと思ったんですけど(笑)。 みんなが憧れるとか、参加した人が興奮したと言うことがよくわかる気がしました」と、感慨もひとしおの様子だった。

 同映画は、作家性を重視した作品が選出され、世界で活躍する映画監督の登竜門として知られる「監督週間」部門に選ばれた。過去にはソフィア・コッポラ、スパイク・リーやアキ・カウリスマキ、日本人では大島渚、北野武、西川美和らが選出されており、日本の長編アニメーション作品としては高畑勲『かぐや姫の物語』、細田守『未来のミライ』に続く6年ぶりの選出。

 監督週間のメイン会場であるクロワゼット劇場で2回、上映が行われ、午前8時45分から行われた1回目の上映会は、約800席が満席に。世界中のプレスや映画ファンが訪れ、注目度の高さが伺える盛り上がりを見せた。午後2時45分開始の2回目の上映には、カンヌ国際映画祭「監督週間」にとっても初の試みとしてカンヌの地元の小学生180人が招待された。

 1回目の登壇前に、久野監督は「日本でもまだお客様には観てもらってないのでどんなリアクションがあるかワクワクしています」とコメント。山下監督は「とにかく楽しみ。どんな質問がくるか緊張もしますが難しい映画でもないので(笑)。楽しんでもらえていたらいいなと思います」と語っていた。

 上映後、俳優による実写映像からアニメーションを作り出す手法はとても新鮮だったようで、司会者からあんず役のキャスティングについて質問されると、山下監督は「森山未來さんは俳優であり、ダンサーでもあるので、身体能力も高い。あんずは、おっさんのダラダラした面もあるが、時に猫らしい動きも表現したくて依頼しました」と、明かした。

 あんずの魅力について聞かれた久野監督は、本作の創作のタイミングで自身も猫を飼い始めたといい、「猫を見ていると人間が気にしてしまうことに対しては雑だったり、それでも必要な時にそばにいてくれることがある。あんずにもそんな魅力があると思います」と答えていた。

 また客席からは、豊かな色彩について、原作がそもそも色彩豊かな作品なのかという質問が。それに対し久野監督は「原作はモノクロ漫画なため、映画の色味は美術監督と色彩設計を担当されたジュリアンさんのアイディアから出た色味で、日本の風景を鮮やかに表現してくれました」と答え、日仏合作で作られた本作ならではの表現について観客も興味深く聞き入る様子がみられた。

 2回目の上映は、久野・山下両監督も一緒に鑑賞。あんずがバイクでやってくるシーンで笑いが起きたのは1回目の大人たちと同じだったが、あんずの行動に、そしてカエルちゃんや貧乏神といった個性豊かなキャラクターが登場するたびに、子どもたちがリアクションする様子が見られた。エンドロールが始まると拍手喝采が沸き起こり、監督たちは感激の面持ちで4分間のスタンディングオベーションに応えていた。

 上映後、久野監督は「お客さんと観ること自体が初めてだったので、映画も初めて観るもののようで染み入りました」、山下監督は「ちょっと緊張しました。ドキドキしながら見たんですけど、途中からは自分も客になって感動してました。よかったです」と感想を述べた。

 また「カンヌでの上映で得た、今後の活動に持ち帰るものは?」という質問に山下監督は「今年48歳なので、これを20代でくらったら人生狂うかもなという感覚ですが、今は数日したら普通の淡々とした日々に戻るだろうなと思いつつ、でもまたカンヌで上映できたらという可能性がお互いにあるので、これからの決心が変わっていくかなと思います」と回答。久野監督は「私にとっては長編初作品だったので、本当にくらってしまったような気持ちがあります。これはある種ラッキーだと思って、もしこのラッキーが、この景色がまた見れたらうれしいと思うので、これを糧に頑張りたい」と話していた。

 本作は世界最大規模のアニメーション映画祭である「アヌシー国際映画祭2024」のコンペティション部門にもノミネートされており6月に久野監督・山下監督が現地を訪れる予定。日本では7月19日から公開される。

■観客のコメント

「とても楽しかったです!世界に向けて心を開かせてくれる作品だと思いました」(フランス人・20代男性)

「美しくて心温まる作品でした。カラフルな映像と人間性豊かなドラマが素晴らしく、とても大きなテーマを描いた作品だと思いました。」(ロシア人・20代男性)

「美しくて、レトロな雰囲気もある作品でした。現代のアニメとは一線を画しており、古い映画のような精神性も感じました。猫の動きなどディテールが素晴らしかったです!とても良い時間を過ごせました。ものすごく素晴らしかったです!」(オランダ人・30代女性)

「とても感動しました!子どもと一緒にみた『となりのトトロ』のような日本のアニメーションの伝統を継承して、ファンタスティックな世界を作り上げていました」(フランス人・40代女性)

「色彩のクオリティが高く、デッサンも丁寧でとても良かった。日本のアニメの伝統的なテクニックとオリジナリティが共存していて素晴らしかったです」(フランス人・40代男性)