(写真:kai / PIXTA)

日経平均株価が史上最高値を更新し、4万円台に乗せた日本の株式市場。

『週刊東洋経済』3月16日号の第1特集は「株の道場 4万円時代に買える株」だ。会社四季報「春号」を先取りし、新NISA時代のお宝銘柄を発掘しよう。


3月18日に『会社四季報』2024年2集春号が刊行される。春号の特徴は、記者の視線が来期の業績動向に移っていることだ。

業績欄のコメントは半分以上が来期に関する内容となり、「見出し」(先頭の【 】の部分)も来期の業績を意識した用語になっている。有望銘柄を先回り買いするのにうってつけの号といえるだろう。

前号の新春号だと、来期業績を織り込み株価は上昇しているのに見出しは今期の【不振】【後退】など真逆になっていることがあったが、春号では一致するため好業績銘柄を探しやすい。

見出しは来期に関する内容であることを理解し、銘柄探しに役立てることが重要だ。

まずは見出しと「↑」に注目

3月決算会社のうち、上方修正企業のチェックもしておきたい。四季報では前号に比べて予想営業利益を増やしたかどうかを欄外の記号で確かめられる。5%以上30%未満なら「↑」、30%以上なら「↑↑」と表記される。会社が予想を据え置いた場合でも、記者が独自で増減させることがある。

ここで上矢印がついている会社は、第3四半期決算で業績予想を増額し足元の勢いがよいことを示している。上矢印の数が多いほど勢いがあることを意味する。

一般的に、多くの会社は半期を終えた第2四半期で上方・下方いずれかの修正を発表する。ここで好業績だった会社が、さらに第3四半期でも増額するということは、来期にも大いに期待が持てることを意味している。

中でも、メッキ用化学品首位の上村工業や中小企業向けソフトのオービックビジネスコンサルタントなど、主力事業の利益率が20%以上の銘柄は強い。

なお、減益であっても上矢印がついていれば、有望企業と見なして構わないだろう。会社比強気の会社には「ニコちゃんマーク」が記載されているが、こちらは期初からついたままのケースもある。春号では、直近の勢いを見るには矢印を重視すべきだ。

投資単位(最低購入額)が50万円以上の銘柄にも注目している。かねて東京証券取引所は、個人投資家が投資しやすい環境を整備するため、上場株の投資単位について50万円未満という水準を打ち出しており、値ガサ株の会社には引き下げを要請してきた。

現状ではどうかというと、前号発売時点では220近い銘柄の投資単位が50万円を超えており、そのうち56社が日経225採用銘柄。セブン&アイ・ホールディングス(HD)などいくつかの会社は株式分割を発表しており四季報にもその旨が書かれていたが、昨年12月時点で投資単位が50万円超だったので、この社数に含めている。

ちなみに、日本の主力である証券コード6000番台(機械・電機)は52社で最も多かった。

41社が株式分割を発表

ところが、前号の新春号が出た後から2月12日までに株式分割を発表した会社は41社に上っている。こうした銘柄は個人投資家が買いやすいので、株価の上昇が期待できる。

例えば、日清食品HDは1月1日付で1株を3株に分割すると発表したが、そこでチェックしたいのは投資単位が50万円以上の同業他社の動き。東洋水産は2月半ば時点で投資単位は約80万円だが、もしかすると日清食品HDに追随する可能性がある。富士通も4月1日付で1対10の株式分割を実施すると1月31日に発表したが、NECはどうするのかは気になるところだ。

東証からの要請もさることながら、新NISAの開始以降、アクティビストへの対抗軸として個人投資家の長期保有を目的に投資単位を引き下げる会社が増えている。次の決算に合わせて発表するケースもあるだろうし、四季報内に記載されていたらこれを機に買うことも考えられる。中でも、日経225採用銘柄が実施するとしたらインパクトは大きい。


日経平均株価が史上最高値を更新するなど市場は盛り上がっているが、すべての会社が好調なわけではない。

中国の景気低迷は顕著であり、資生堂など同国を軸に事業を展開する会社は業績、株価ともに芳しくない。他方、トヨタ自動車コマツなど米国で事業が好調な会社は冴えている。現地のインフレや円安が業績を後押ししているのも要因だ。

新NISA関連としては、個人投資家に認知されているBtoCビジネスを展開する会社は株が買われやすく、上昇は継続するだろう。

防衛関連銘柄は思惑で動いていたが、業績に反映され始めるのは今後のこと。NECは200億円規模の設備投資を行い、魚群探知機や船舶レーダーを取り扱う古野電気も売り上げ増といわれているが、本格的に動くのはこれからだ。

チェックしておきたい「DOE」

東証の要請もあり株主への配当を高める会社が増える中、「DOE(自己資本配当率)」はチェックしておきたい経営指標だ。

これは、自己資本に対して企業がどの程度の利益配分を行っているかを示すもので、例えば、自己資本100億円に対して配当金総額が10億円ならDOEは10%。業績に合わせた配当性向より変動が小さく安定的な指標として捉えやすいことから、発表する会社が増えている。

DOEを分解すると配当性向×自己資本利益率(ROE)となり、前者の目安は30%で後者は8%なので、DOEは2.4%が基準。日本マクドナルドHDはちょうどこの水準だ。四季報の新春号ではDOEが特集されていたので保存しておくとよいと思う。

仮に「2.5%を目指す」と明言している場合、現在の配当性向やROEの水準からして妥当性はあるのか確かめればよい。こういった視点からも、投資家から買われやすい銘柄を見つけることができるだろう。


(構成:ライター 大正谷正晴)


(山本 隆行 : 『会社四季報』元編集長)