レノボは主力のパソコンなど個人向けデバイスの販売が上向き、業績悪化に歯止めをかけた。写真は北京の本社ビル(同社ウェブサイトより)

中国のパソコン最大手、聯想集団(レノボ・グループ)の業績が最悪期を脱しつつある。

同社は2月22日、2023年10〜12月期の決算を発表。それによれば、同四半期の売上高は157億2100万ドル(約2兆3598億円)と前年同期比3%増加し、1年半ぶりの増収を記録した。また、非香港会計基準ベースの純利益は3億5700万ドル(約536億円)と、前年同期比20%減少したものの、直前の7〜9月期(同54%減)に比べて減少幅が大きく縮小した。

レノボは事業分野をパソコン、タブレット、スマートフォンなどの「インテリジェント・デバイス・グループ(IDG)」、サーバーが主力の「インフラストラクチャー・ソリューション・グループ(ISG)」、サービス関連分野の「ソリューション・サービス・グループ(SSG)」の3つに分け、それぞれの業績を開示している。

AIパソコンは「話題先行」

同社の売上高の7割超を占めるIDGは、10〜12月期に前年同期比7%増の123億6200万ドル(約1兆8556億円)を売り上げ、業績全体の回復を牽引した。IDGの10〜12月期の営業利益率は7.4%と、4〜6月期の6.3%を底に着実な改善を見せている。

AI(人工知能)ブームが世界的に過熱するなか、パソコン業界ではAI搭載パソコンの需要拡大に期待する声が高まっている。だが、レノボの董事長兼CEO(最高経営責任者)を務める楊元慶氏は決算説明会で次のように述べ、相対的に慎重な見方を示した。

「現時点では、AI搭載パソコンは話題ばかり先行し、現実の商売につながっていない。コロナ禍の(リモートワーク特需の)時期に販売されたパソコンはまだ買い替え時期に至っておらず、需要の本格回復は2024年の後半以降になるだろう」

市場調査会社のIDCのデータによれば、全世界のパソコン出荷台数はパンデミックの最中の2021年にピークに達し、その後は(リモートワーク特需の反動で)縮小に転じた。2023年の出荷台数は2億5400万台と、2021年の3億4900万台より3割近く減少した。


レノボはリモートワーク特需の反動で需要が縮小するなかでも、市場シェアを伸ばしてきた。写真は2023年10月の開発者向けイベントで講演する楊元慶CEO(同社ウェブサイトより)

そんななか、レノボは市場環境の悪化に苦しみながらも、世界シェアトップの座を維持してきた。IDCのデータによれば、2023年10〜12月期の世界シェアランキングの上位3社は、首位がレノボの24.0%、第2位がHP(ヒューレット・パッカード)の20.8%、第3位がデルの14.8%となっている。

また、世界シェア上位5社のなかで10〜12月期の出荷台数を前年同期より伸ばしたのは、首位のレノボと第2位のHPだけだった。

サーバー需要の急回復に自信

個人向けデバイスが中心のIDGとは対照的に、法人向けが主体のISGの業績は冴えない。10〜12月期のISGの売上高は24億7300万ドル(約3712億円)と前年同期比13%減少。営業利益は前年同期の4328万ドル(約65億円)の黒字から、3773万ドル(約57億円)の赤字に転落した。大口顧客であるクラウド事業者などがコスト削減を重視し、サーバーの新規購入を抑えたことが響いた。


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しかしレノボは、ISGの先行きについては楽観的だ。あらゆる業界がIT関連の支出を増やし、AIへの投資拡大を進めるなか、クラウド事業者の需要は急回復すると見ているためだ。

「ISGの2024年1〜3月期の売上高は、前年同期比プラスに戻るだろう」。楊CEOは、決算説明会でそう自信を示した。

(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は2月22日

(財新 Biz&Tech)