「買わなきゃよかった」賢い人の"損しない"買い方
「買わなきゃよかった…」という悩みや苦しみではなく、幸せになるための買い物のコツとは(写真:IYO/PIXTA)
さまざまな悩みや不安を抱え、「楽しくないまま、いまを過ごしている」。
そんな人は珍しくありません。
とある調査によると「いま、あなたは幸せですか?」という質問にイエスと答えられる人は2割もいないのです。
現代は生きづらさや不安が増しているのかもしれません。
しかし、幸いなことに、多くの先人たちが幸せに生きるコツを残してくれています。それらを現代の生活にあわせて整え、「即役立つ」ようにしたのが、新刊『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』です。
以下では、「人生を豊かにする買い物の仕方」についてわかりやすく解説します。
多くの人が買い物で心を消耗している
身の周りのモノは私たちの心に大きな影響を与えます。
ですから「どのようなモノを選び取るか」という選択は、とても大切です。
ここでは「モノを買うコツ」についてお話しします。
買い物といえば無駄使いのことばかり話題にされますが、買い物が苦手な人は、意外にも多いのです。
実際、買い物とはなかなか難しい営みです。
「すぐにいらなくなって無駄になるのでは?」
「ちょっと違った、と後悔するのでは?」
「そもそも本当に必要か?」
このように、「必要だ」「欲しい」という気持ちと、それを否定しようとする気持ちがせめぎ合うことはよくありますよね。
そういうときは、未来への不安から、現在を我慢モードで過ごしがちではありませんか?
2つの気持ちがせめぎ合うと、「よし買おう!」と思いきれるハードルが上がってしまい、買い物に苦手意識をもってしまいます。
そうなると新しいモノと出会う機会がなくなり、人生そのものの彩りを欠いたり、場合によっては必要なモノまで買えなくなって苦しい思いをしたりします。
こうしたつらい思いは避けたいものです。
こうなる原因には「未来」が関係しています。
買い物が苦手な人は、未来を、「満足と後悔のどちらかだ」と決めてしまいがちなのです。
「満足するか、後悔するか、どちらか一方なのは当たり前じゃないか」ですって?
いいえ、人の心とはそんな簡単なものではありません。
誰だって、何を買っても、「買ってよかった満足」と「買わなければよかったという後悔」が、心の天秤の上でユラユラ、あっちに傾いたり、こっちに傾いたりします。
もし「買ってよかった」と素直に思えたら、とてもラッキーです。
というのも、心は何かと後悔の側に傾きがちだからです。
私たちは、それを何とか満足の側に傾けようと、あれこれ理由を作り頑張ってしまいます。
迷い過ぎると、楽しさから遠ざかる
「いざとなった時にないと困るから買ってよかった」とか。
「もっと安いアレよりも、こういうところが優れているので買ってよかった」とか。
「いまはピンとこないけど、いつか買ってよかったと思えそうだからよかった」とか。
そんな苦しい言い訳を自分にした覚えはありませんか?
自分を責める必要なんて、まったくありません。
それは誰でもすることですから大丈夫です。
「買い物が苦手」という人は、ひょっとしたら、そんな言い訳を過去にたくさんした記憶に疲れてしまっているのかもしれません。
買い物した後で満足するか、後悔するかはユラユラするので予測などできません。
にもかかわらず、「どちらだろうか」と気をもんでばかりいると、買い物を楽しめなくなってしまいます。
未来を心配し過ぎて、いまを無駄にしてはいけません。
「いまがこれからの人生で一番若い瞬間」という言葉がありますが、「いまは、買ったものを最も長く楽しめる瞬間」です。
先延ばしにすると、楽しむ時間を減らしてしまいます。
ですから「迷っているなら、買えるものなら、買っておきなさい」とお勧めしておきます。
そもそも買えないものは悩まないでしょう。
「やった後悔と、やらない後悔なら、やった後悔のほうがいい」という言葉があります。
ここでは「買った後悔と、買わない後悔なら、買った後悔のほうがいい」
と言い換えられるでしょう。
本来、買い物は楽しいもの。
であれば、存分に楽しみましょう。
そして買った後の気分の整理については、心の3つの領域に分けて考えればよいのです。
心の状態によって対応を決めるだけ
「ストレスの科学」によると、人の心の状態は「コンフォート」「パフォーマンス」「デンジャー」という3つの領域に大きく分けられます。
ここではわかりやすくするために「❶リラックス」「❷チャレンジ」「❸ストレス」と言い換えておきましょう。
科学における厳密な用い方とは異なりますが、自分の心の状態を把握し、判断するには有益な方法です。
買い物の後、満足していたら❶リラックス。
満足していなかったり後悔している場合は❸ストレス。
どちらとも言えない場合は❷チャレンジ。
自分の心がどれにあたるかを見極め、その後の対応をすれば困ることはありません。
また次のよき買い物へとつなげることができます。
買い物への苦手意識を抱くことも避けられます。
❶リラックスゾーン……買った後、満足している場合
買った後、心が晴れやかなら、心の天秤は満足の側に傾いているといえます。
心行くまで楽しんでください。
しかし、間違わないでほしいのは、「今回は当たりだった」などとは捉えないことです。
「今回は当たりだった」と考えると「次回は外れるかもしれない」という思いから、また重たいグルグル思考に陥ってしまいます。
大事なのは「満足できた」という結果ではなく、「買えた」「悩む時間を無駄にしなかった」「長く楽しむことができる」という事実です。
行動できた自分を褒めるべきです。
後悔しても、変化を楽しむ
❷チャレンジゾーン……買った後、満足とも後悔とも言えない場合
ほとんどの場合、「満足しているとも、後悔しているとも言えない」のではないでしょうか。
明確に「満足」とも「後悔」とも判別しにくいものです。
このどちらとも言えない気分は、良くも悪くも、自分を少しはみ出している証拠です。
その状態は、自分によい変化が起きている兆しです。
それは、マンネリを脱して新しい自分と出会うチャンスにつながりやすいからです。
こうしたチャレンジゾーンは、あなたの成長に役立ちます。
せっかくですから、買ったものを積極的に楽しみましょう。
例えば、友人に買ったものについて話してみるのはお勧めです。
人と話すと、自分でも気づいていなかった「よさ」が言語化され、口をついて出ることがあります。
会話のそんなメリットをどんどん活用しましょう。
❸ストレスゾーン……買った後、満足していなかったり後悔している場合
「しっくりこない」など満足できていない場合。
「迷っているなら、買えるものであるなら、買っておきなさい、その結果しっくりこなくても、自分に変化を起こす機会だから楽しみましょう」
先にそうお伝えしました。
しかし、それでもあなたの天秤が後悔の側に大きく傾き、心を重たくしてしまいそうなら、その事実を潔く受け入れましょう。
いつか必ず、もっといいものが見つかります。
重要なのは「ああ、また買えなかった」と自分を責めないことです。
ここまでで、あなたにはやり遂げたことがあります。
買い物したことを悩んで時間を浪費するのを避けられたことです。
あなたは、自分の人生の時間を無駄にしませんでした。
自分を褒めてあげましょう。
このように、心を3つの領域に分けて考えると、考えや行動の指針が立てやすくなります。
また慣れてくると「自分の気持ちがどこにあるのか」、すぐに見極められるようになります。
「買い物=無駄使い」と短絡的に捉えず、人生の醍醐味のひとつとして楽しんでいきましょう。
(堀内 進之介 : Screenless Media Lab. 所長、立教大学特任准教授)
(吉岡 直樹 : Screenless Media Lab.テクニカルフェロー)