「イマーシブ・フォート東京」世界初!体験型テーマパークの舞台裏:ガイアの夜明け
3月1日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「テーマパークでニッポンを元気に!〜客を呼ぶプロ集団「刀」の野望〜」。
「西武園ゆうえんち」を始め、レジャー施設の再生や開発を手がける「刀」。「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」をV字回復させたことで知られる森岡毅さんが率いる会社だ。
武器は、数学を駆使した独自のマーケティング術。リスクを徹底予測し、確実に採算がとれるギリギリの投資ラインを見極め、成功の“勝ち筋”を作っていく。
そんな「刀」が、各地でテーマパークの再生・開発を進めている。独自手法を武器に、成功へと導くことはできるのか? 「刀」の壮大な挑戦と野望に、ガイアのカメラが迫った。
【動画】「ヴィーナスフォート」が大変身!「イマーシブ・フォート東京」の全貌
去年10月、東京・六本木。世界初となるテーマパーク構想を発表したのは、「刀」の森岡毅さん。“体験型”アトラクションを集結させた「イマーシブ・フォート東京」を発表し、森岡さんは、「テーマパークをアップデートしたい。100人が体験したら100通りの体験になる」と話す。
その舞台に選ばれたのが、ショッピングモール「ヴィーナスフォート」だった建物だ。
1999年にオープンし、のべ2億人が来館した人気の施設で、中世のヨーロッパをイメージしたこだわりの内装がウリだったが、再開発に伴い、2年前に閉館。建物の取り壊しも考えていたオーナーの「森ビル」に、「刀」が体験型テーマパークの構想を提案した。
「『ヴィーナスフォート』の設備や建物がスクラップされていく未来っていうのは、本当にもったいない。投資とリターンのバランスを考えた時、勝算は十分ある。人を喜ばせ続ける持続可能な事業を、東京という地域に、お台場というこの場所に作り上げることができる」。
森岡さんは、世界的な消費財メーカー「P&G」で腕を鳴らしたマーケティングのプロで、その後、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」に入社。ハリウッド映画にとらわれない型破りな手法で、低迷していた業績をV字回復させた。
2017年に独立し、数学を武器にしたマーケティングで苦境の施設を次々と再生。「西武園ゆうえんち」は、懐かしい“昭和の世界観”をコンセプトに、それを面白がる新たな客層をつかんだ。
現在は、沖縄でテーマパークを開発中。やんばるの大自然の中、究極の興奮が味わえる「ジャングリア」を2025年に開業する予定だ。
森岡さんがお台場のプロジェクトを任せたのは、テーマパーク全体の責任者、「刀」シニア・クリエイティブ・ディレクターの津野庄一郎さん。「ヴィーナスフォート」の大部分を生かし、複数のアトラクションをつくっていく。中には、元の造りをそのまま生かした場所も。
ここは、地中海料理がウリだったレストラン。「非常にクオリティー高くつくられているので、しっかり活用させてもらう」と津野さん。
一方、イチからセットを組んでつくるのが、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」をテーマにしたアトラクション。その他、江戸時代の遊廓を題材にしたものなど、濃密な体験をウリにしたアトラクションを11つくる予定で、定員は8〜100人を超えるものまでさまざまだ。
津野さんが演出まで手がけるのは、2フロアを使って行うイマーシブシアター「ザ・シャーロック-ベイカー街連続殺人事件-」(定員180人)。イマーシブシアターとは、「まるでその世界に入り込んだように感じる」体験型の演劇のことを指し、去年「刀」は、「西武園ゆうえんち」でこのスタイルを仕掛け、今も人気を博している。観客が当事者として、物語の世界に巻き込まれていくのが特徴だ。
お台場で作るのはその大規模なもので、名探偵「シャーロック・ホームズ」を題材にした殺人事件と失踪事件が複雑に交錯していく作品。物語の舞台となるロンドンのベイカーストリートを、元の世界観を生かして再現するという。工事が短期間で済み、コストも抑えられるのが、既存の施設を活用するメリットだ。
津野さんの指示を受け、職人がエアブラシやハケを使い、手を入れていく。目指すは1800年代のロンドンで、エイジングという加工技術で古びた感じを表現。津野さんは、脚本作りや演出に加え、設計やデザインまで、あらゆる仕事に関わる。
津野さんは、森岡さんと同じ「USJ」の出身で、アトラクション開発で実績を積んできた。転機は8年前。同僚と訪れたロサンゼルスで、イマーシブシアターと出会う。
「確信というか、可能性を大いに感じた。そこからずっと、イマーシブが頭から離れなくなった」。
「USJ」では、小規模ながらイマーシブ作品を手がけたことも。今回は、世界でも類を見ない規模で、イマーシブシアターの魅力を世間の人たちに知ってもらえるチャンスになる。
去年11月。いよいよ稽古が始まった。津野さんとタッグを組む、演出家の菅野こうめいさんは、シーンごとにかかる時間を秒単位で測る。
「ザ・シャーロック」は、複数のシーンが同時に進むが、途中、それまで別々だったチームが合流する場面があり、時間を正確に合わせなければストーリーが崩れ、全てが台無しになってしまう。
そこで重要になるのが、キャストの動き出しを伝える裏方のスタッフ。直接指示を出したり、音楽のボリュームを上げることで合図したりと、その方法はさまざまだが、一つでも噛み合わなければ、大きなミスに発展してしまう。公演は90分ノンストップで、一度始まったら止められない。
そんな津野さんたちクリエイティブチームを影で支えるのが、数字を分析するマーケティングのプロ。100人いる「刀」の社員のうち、多くを占める。この日は、演劇にあまり興味のないライト層をどう取り込むか…戦略を練っていた。
「認知が1.5倍に増えると見込んでいる。それに加え、“好意度”を1.2倍に増やす。それが達成できれば、元の計画は上回る」。
現場は、こうした分析を元に動く。この日ゲストに招いたのは、演目の内容を知らないライト層の人たち。ゲストは、同時進行するシーンを選んで鑑賞し、自由に動くことができるが、初体験なだけに状況が読めず、どう対応したらいいのか分からない…。大人数が複数の場所を行き来するため、全員を巻き込んでいくのは至難の業だ。
「キャパ、減らしたい…」。世界初の挑戦と意気込んでいた津野さんだが、思わず本音が。オープンが近づくにつれ、焦りが見え始めていた――。
去年10月、長崎・佐世保市。津野さんは、2年前から「刀」が支援しているテーマパーク「ハウステンボス」を訪れた。日本最大の敷地面積を誇るテーマパーク「ハウステンボス」は、オランダから職人を呼び、街並みを忠実に再現した施設で、津野さんはその“本物感”に注目していた。
1992年開業。ピークの1996年には年間380万人が来園したが、その後伸び悩み、経営破綻した過去も。再生の立役者として知られるのが、旅行会社「エイチ・アイ・エス」の澤田秀雄会長(当時)だ。2010年に経営権を取得すると次々と改革し、18年間赤字が続いていた「ハウステンボス」を、たった1年で黒字化させた。
しかしコロナ禍に突入すると、状況は一変。売り上げが激減し、本業でも苦境に立たされた「エイチ・アイ・エス」は、「ハウステンボス」を売却。買い取った香港のファンドから指名を受け、支援を行うことになったのが「刀」だ。
津野さんがハロウィーンの時期に仕掛けの舞台に選んだのは、美術館として使われている「パレス ハウステンボス」。
午後7時、本物さながらの洋館で、海賊やミイラに次々と襲われるホラーイベント「ホーンテッド・ハロウィーン」が始まった。クライマックスはミイラがダンサーになり、客と一緒に盛り上がる。
日本最大級として知られるイルミネーションも、ハロウィーン仕様で開催。二刀流で、幅広い客層にアピールした。
イベント終了後、早速データの分析を行うと、29歳以下の利用者が倍近くに増え、収益面でも成果が。口コミの影響か、後半は目標を大きく超えていた。
「ハウステンボス」で働く従業員の多くは地元出身で、ブランディングを統括する野中久美子さんもその一人。経営破綻した直後の2004年に入社し、20年目を迎える。
野中さんは、マーケティング部門の責任者として「刀」から送り込まれた木村泰宏さんに呼ばれ、ある指摘を受けた。
「すごく気になるのは、パッと見た時に、やってはいけないことの看板がいっぱい出てくる。今からワクワクしに行くのにどんどん日常に戻されてしまう」。
園内をよく見ると、目につくのがアトラクションやイベントの告知看板。たしかに、せっかくの本物感が台無しだ。
「刀」はイメージ調査を行い、消費者だけでなく、社員にも聞き取りをして数値化。「美しさに感動する体験があふれる」の項目では、消費者の評価と社員の認識に大きな開きがあった。さらに、消費者からも社員からも最も評価されていなかったのが、「体験したいものが充実している」という項目。これを覆すため、“秘密兵器”となる新たなアトラクションの開発が始まった。
「刀」が仕掛ける「ハウステンボス」の新しいブランドイメージは、「憧れの異世界」。秘密兵器は、沈没した潜水艇を救出しに行くアドベンチャーだというが、果たして、その実力とは――。
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「西武園ゆうえんち」を始め、レジャー施設の再生や開発を手がける「刀」。「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」をV字回復させたことで知られる森岡毅さんが率いる会社だ。
武器は、数学を駆使した独自のマーケティング術。リスクを徹底予測し、確実に採算がとれるギリギリの投資ラインを見極め、成功の“勝ち筋”を作っていく。
そんな「刀」が、各地でテーマパークの再生・開発を進めている。独自手法を武器に、成功へと導くことはできるのか? 「刀」の壮大な挑戦と野望に、ガイアのカメラが迫った。
お台場に新名所誕生!?“世界初”テーマパーク開業の舞台裏に独占密着
去年10月、東京・六本木。世界初となるテーマパーク構想を発表したのは、「刀」の森岡毅さん。“体験型”アトラクションを集結させた「イマーシブ・フォート東京」を発表し、森岡さんは、「テーマパークをアップデートしたい。100人が体験したら100通りの体験になる」と話す。
その舞台に選ばれたのが、ショッピングモール「ヴィーナスフォート」だった建物だ。
1999年にオープンし、のべ2億人が来館した人気の施設で、中世のヨーロッパをイメージしたこだわりの内装がウリだったが、再開発に伴い、2年前に閉館。建物の取り壊しも考えていたオーナーの「森ビル」に、「刀」が体験型テーマパークの構想を提案した。
「『ヴィーナスフォート』の設備や建物がスクラップされていく未来っていうのは、本当にもったいない。投資とリターンのバランスを考えた時、勝算は十分ある。人を喜ばせ続ける持続可能な事業を、東京という地域に、お台場というこの場所に作り上げることができる」。
森岡さんは、世界的な消費財メーカー「P&G」で腕を鳴らしたマーケティングのプロで、その後、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」に入社。ハリウッド映画にとらわれない型破りな手法で、低迷していた業績をV字回復させた。
2017年に独立し、数学を武器にしたマーケティングで苦境の施設を次々と再生。「西武園ゆうえんち」は、懐かしい“昭和の世界観”をコンセプトに、それを面白がる新たな客層をつかんだ。
現在は、沖縄でテーマパークを開発中。やんばるの大自然の中、究極の興奮が味わえる「ジャングリア」を2025年に開業する予定だ。
森岡さんがお台場のプロジェクトを任せたのは、テーマパーク全体の責任者、「刀」シニア・クリエイティブ・ディレクターの津野庄一郎さん。「ヴィーナスフォート」の大部分を生かし、複数のアトラクションをつくっていく。中には、元の造りをそのまま生かした場所も。
ここは、地中海料理がウリだったレストラン。「非常にクオリティー高くつくられているので、しっかり活用させてもらう」と津野さん。
一方、イチからセットを組んでつくるのが、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」をテーマにしたアトラクション。その他、江戸時代の遊廓を題材にしたものなど、濃密な体験をウリにしたアトラクションを11つくる予定で、定員は8〜100人を超えるものまでさまざまだ。
津野さんが演出まで手がけるのは、2フロアを使って行うイマーシブシアター「ザ・シャーロック-ベイカー街連続殺人事件-」(定員180人)。イマーシブシアターとは、「まるでその世界に入り込んだように感じる」体験型の演劇のことを指し、去年「刀」は、「西武園ゆうえんち」でこのスタイルを仕掛け、今も人気を博している。観客が当事者として、物語の世界に巻き込まれていくのが特徴だ。
お台場で作るのはその大規模なもので、名探偵「シャーロック・ホームズ」を題材にした殺人事件と失踪事件が複雑に交錯していく作品。物語の舞台となるロンドンのベイカーストリートを、元の世界観を生かして再現するという。工事が短期間で済み、コストも抑えられるのが、既存の施設を活用するメリットだ。
津野さんの指示を受け、職人がエアブラシやハケを使い、手を入れていく。目指すは1800年代のロンドンで、エイジングという加工技術で古びた感じを表現。津野さんは、脚本作りや演出に加え、設計やデザインまで、あらゆる仕事に関わる。
津野さんは、森岡さんと同じ「USJ」の出身で、アトラクション開発で実績を積んできた。転機は8年前。同僚と訪れたロサンゼルスで、イマーシブシアターと出会う。
「確信というか、可能性を大いに感じた。そこからずっと、イマーシブが頭から離れなくなった」。
「USJ」では、小規模ながらイマーシブ作品を手がけたことも。今回は、世界でも類を見ない規模で、イマーシブシアターの魅力を世間の人たちに知ってもらえるチャンスになる。
去年11月。いよいよ稽古が始まった。津野さんとタッグを組む、演出家の菅野こうめいさんは、シーンごとにかかる時間を秒単位で測る。
「ザ・シャーロック」は、複数のシーンが同時に進むが、途中、それまで別々だったチームが合流する場面があり、時間を正確に合わせなければストーリーが崩れ、全てが台無しになってしまう。
そこで重要になるのが、キャストの動き出しを伝える裏方のスタッフ。直接指示を出したり、音楽のボリュームを上げることで合図したりと、その方法はさまざまだが、一つでも噛み合わなければ、大きなミスに発展してしまう。公演は90分ノンストップで、一度始まったら止められない。
そんな津野さんたちクリエイティブチームを影で支えるのが、数字を分析するマーケティングのプロ。100人いる「刀」の社員のうち、多くを占める。この日は、演劇にあまり興味のないライト層をどう取り込むか…戦略を練っていた。
「認知が1.5倍に増えると見込んでいる。それに加え、“好意度”を1.2倍に増やす。それが達成できれば、元の計画は上回る」。
現場は、こうした分析を元に動く。この日ゲストに招いたのは、演目の内容を知らないライト層の人たち。ゲストは、同時進行するシーンを選んで鑑賞し、自由に動くことができるが、初体験なだけに状況が読めず、どう対応したらいいのか分からない…。大人数が複数の場所を行き来するため、全員を巻き込んでいくのは至難の業だ。
「キャパ、減らしたい…」。世界初の挑戦と意気込んでいた津野さんだが、思わず本音が。オープンが近づくにつれ、焦りが見え始めていた――。
“憧れの異世界”へ客を呼ぶ!「ハウステンボス」生き残り戦略の全貌
去年10月、長崎・佐世保市。津野さんは、2年前から「刀」が支援しているテーマパーク「ハウステンボス」を訪れた。日本最大の敷地面積を誇るテーマパーク「ハウステンボス」は、オランダから職人を呼び、街並みを忠実に再現した施設で、津野さんはその“本物感”に注目していた。
1992年開業。ピークの1996年には年間380万人が来園したが、その後伸び悩み、経営破綻した過去も。再生の立役者として知られるのが、旅行会社「エイチ・アイ・エス」の澤田秀雄会長(当時)だ。2010年に経営権を取得すると次々と改革し、18年間赤字が続いていた「ハウステンボス」を、たった1年で黒字化させた。
しかしコロナ禍に突入すると、状況は一変。売り上げが激減し、本業でも苦境に立たされた「エイチ・アイ・エス」は、「ハウステンボス」を売却。買い取った香港のファンドから指名を受け、支援を行うことになったのが「刀」だ。
津野さんがハロウィーンの時期に仕掛けの舞台に選んだのは、美術館として使われている「パレス ハウステンボス」。
午後7時、本物さながらの洋館で、海賊やミイラに次々と襲われるホラーイベント「ホーンテッド・ハロウィーン」が始まった。クライマックスはミイラがダンサーになり、客と一緒に盛り上がる。
日本最大級として知られるイルミネーションも、ハロウィーン仕様で開催。二刀流で、幅広い客層にアピールした。
イベント終了後、早速データの分析を行うと、29歳以下の利用者が倍近くに増え、収益面でも成果が。口コミの影響か、後半は目標を大きく超えていた。
「ハウステンボス」で働く従業員の多くは地元出身で、ブランディングを統括する野中久美子さんもその一人。経営破綻した直後の2004年に入社し、20年目を迎える。
野中さんは、マーケティング部門の責任者として「刀」から送り込まれた木村泰宏さんに呼ばれ、ある指摘を受けた。
「すごく気になるのは、パッと見た時に、やってはいけないことの看板がいっぱい出てくる。今からワクワクしに行くのにどんどん日常に戻されてしまう」。
園内をよく見ると、目につくのがアトラクションやイベントの告知看板。たしかに、せっかくの本物感が台無しだ。
「刀」はイメージ調査を行い、消費者だけでなく、社員にも聞き取りをして数値化。「美しさに感動する体験があふれる」の項目では、消費者の評価と社員の認識に大きな開きがあった。さらに、消費者からも社員からも最も評価されていなかったのが、「体験したいものが充実している」という項目。これを覆すため、“秘密兵器”となる新たなアトラクションの開発が始まった。
「刀」が仕掛ける「ハウステンボス」の新しいブランドイメージは、「憧れの異世界」。秘密兵器は、沈没した潜水艇を救出しに行くアドベンチャーだというが、果たして、その実力とは――。
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