アリババは6大事業グループの経営の独立性を高めて成長の再加速を目指すが、成果はまだ見えない(写真は同社ウェブサイトより)

中国のEC(電子商取引)最大手、阿里巴巴集団(アリババ)の成長鈍化が続いている。

同社が2月7日に発表した2023年10〜12月期決算によれば、同四半期の売上高は2603億4800万元(約5兆4120億円)と前年同期比5%の増加にとどまり、アナリスト予想の平均値の2617億2400万元(約5兆4406億円)にあと一歩届かなかった。

アリババは2023年3月、主要事業の6分割を柱とする大規模な構造改革に着手し、各事業グループの経営の独立性を高めることで成長の再加速を目指してきた。だが、四半期売上高の伸び率の実績は2023年4〜6月期が前年同期比14%、7〜9月期が同9%、今回開示した10〜12月期が同5%と、減速に歯止めがかからない状況だ。

一時損失を除外しても減益

それだけではない。10〜12月期の純利益は144億3300万元(約3000億円)と、前年同期比69%の大幅減益となった。

アリババはその要因として、保有株式の時価評価損に約190億元(約3950億円)、傘下のスーパーマーケット「高鑫零售(サン・アート・リテール)」の無形資産に関わる減損処理に約120億8400万元(約2512億円)、同じく動画サイトの「優酷(Youku)」に関わるのれん代の償却に約84億9000万元(約1765億円)を計上したことを挙げた。

だが、上述の一時損失およびストックオプションの影響を除いた非アメリカ会計基準(Non-GAAP)で見ても、10〜12月期の純利益は前年同期比4%減少した。

事業の成長力と収益力の低下が鮮明になり、アリババの株価は決算発表後に急落。アメリカのニューヨーク証券取引所に上場するADS(アメリカ預託株式)の2月7日の終値は73.64ドル(約1万899円)と、前日比5.87%安で引けた。

事業グループ別の業績に目を移すと、中国国内のEC事業を束ねる「淘宝天猫(タオバオ・Tモール)コマース・グループ」の2023年10〜12月期の売上高は1290億7000万元(約2兆6830億円)にとどまり、前年同期比の伸び率は2%と6大事業グループのなかで最低だった。

また、国内ECの収益の要である(出店者が支払う手数料や広告料金を含む)顧客管理収入が921億1300万元(約1兆9148億円)と前年同期比横ばいだったことも、成長鈍化を印象づけた。


アリババの創業メンバーの1人で会長職を務める蔡崇信氏は、非中核資産の売却を急いでいる(写真は同社ウェブサイトより)

それとは対照的に、海外市場向けの越境ECが主力の「インターナショナル・デジタル・コマース・グループ」は、10〜12月期の売上高が285億1600万元(約5928億円)と前年同期比44%の大幅な伸びを達成。6大事業グループのなかでトップの成長率を記録した。

しかしながら、同グループの調整後EBITA(利払い前、税引き前、無形固定資産減価償却前損益)は31億4600万元(約654億円)の赤字で、損失額が前年同期の6億4500万元(約134億円)から5倍近くに膨らんだ。

従業員数が1年で2万人減

クラウド事業が主力の「クラウド・インテリジェンス・グループ」も、10〜12月期の売上高は前年同期比3%増の280億6600万元(約5834億円)と伸び悩んだ。

ただし注目すべきなのは、同グループの調整後EBITAが23億6400万元(約491億円)と前年同期比86%の大幅増益となったことだ。アリババの説明によれば、利益率の低いプロジェクトから撤退するとともに、パブリッククラウド事業への集中を通じてプロダクト・ミックスを改善したことや、業務改革による効率アップを図ったことが功を奏したという。


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アリババは(巨大化した組織をスリム化するため)2023年7〜9月期から既存事業の選別と非中核資産の売却を進めている。同社の創業メンバーの1人で董事会主席(会長に相当)を務める蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)氏は、10〜12月期の決算説明会で「2023年4月からの9カ月間で17億ドル(約2516億円)相当の非中核資産の売却を完了した」と述べた。

資産売却と並行して人員カットも続いている。決算報告書によれば、2023年12月末時点のグループ従業員数は21万9300人。同年9月末からの3カ月間で約5700人減り、1年前との比較では約2万人も減少した。

(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は2月8日

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