(漫画:©︎三田紀房/コルク)

東大に合格できる可能性を秘めた子供の才能が、親や先生の無知のせいで潰されてしまうことが非常に多い――。東大セミナー講師・指導歴25年のベテラン・川本雄介氏はこう語ります。今回は『ドラゴン桜で学ぶ 伸びる子供の育て方』を上梓した川本氏が、親の機嫌が、子供の学力に与える影響について共有します。

「親の機嫌の良し悪しが、その子の学力に直結することがある」と言ったら、みなさんは納得できるでしょうか?

もしかしたら「そんなことはないんじゃないか」とお考えの人のほうが多いかもしれませんが、これは長年の経験から私が確信していることの1つです。

親の機嫌が悪いと、子供の成績も伸び悩む

親御さんの機嫌とお子さんの成績には、一定の相関関係がある場合があります。

例えば、成績が伸び悩んでいる家庭の親御さんを観察すると、子供よりもむしろ親御さんのほうが問題を抱えている場合が多いです。

親御さんが、仕事や家族関係で問題を抱えていて、思い悩む時間が長く、機嫌が悪いと、子供にも影響が及んでしまい、成績が伸び悩むのです。

私が介入して家族関係が良好になったり、親御さんの抱える問題が解消されることで、親御さんの機嫌がいい状態が続くと、子供の成績も上がります。

東大に合格した家庭や、それ以外の難関大学に合格した家庭を見ていると、親子の仲がよくて、家族の関係性がとても良好であることに驚かされます。

小さいときから、親御さんと子供が軽口を叩き合えるほどに仲がよくて、なんでも言い合える仲になっている場合が多いのです。私はそれを見て、「友達のような親子」などと表現したりします。

もしかしたらみなさんの中には、「親は親として、毅然と振る舞ったほうがいいんじゃないか」「親が子供をしっかりと導けるように、子供に舐められないような態度のほうが理想的なのではないか」と考える人もいるかもしれませんが、そんなことはないと思います。

核家族化が進んで、家族の構成員の数が減っている現代であるからこそ、親子仲がいいか悪いかは、その子の学力に直結することがあります。

その理由について、私の仮説をお話しすると、「精神的にオープンな状態の子のほうが成績は伸びやすいので、親御さんの機嫌がいいと、その精神状態に引っ張られて、オープンで素直に人の話を聞けるようになるのではないか」と考えています。

心がオープンな子ほど、成績は伸びやすい

以前の記事(東大合格する生徒「わかる」と簡単に言わない理由)でもご紹介しましたが、「わからないことを素直にわからない」と言ってくれる生徒のほうが、成績が伸びやすいことがあります。

それはつまり、精神的にオープンで、他人からの指摘をしっかりと受け入れられる「精神的な余裕」が必要だということにほかなりません。

ですから、心をオープンにしてくれている状態であれば、勉強の成績は上がりやすく、心を閉ざしてしまっている状態では子供の成績は上がりにくいのです。親子仲がよく、家庭環境に余裕がある家庭のほうが、うまくいく場合が多いわけですね。

また、もう1つ仮説として考えられるのは、コミュニケーションです。親の機嫌が悪いと、子供とのコミュニケーションが減ってしまいます。

東大合格を目指す漫画『ドラゴン桜』ではこんなシーンがあります。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください




(漫画:©︎三田紀房/コルク)




(漫画:©︎三田紀房/コルク)

この漫画にもあるとおり、学力のアップには、「コミュニケーション」が大事です。普段の生活の中で、親が「なぜ?」と聞くことによって、子供に思考させる余地を与えることが、ポイントの1つだと言えます。

私はこの状況をよく、「コミュニケーションのラリーが行われている」と説明します。

問いかけを行うことで、子供の成績は伸びる


例えば「今日のサッカーの試合、どうだった?」と子供に聞いて、「うーん、あんまりうまくいかなかったんだよね」と返されたとします。その場合、「そうなんだ」と言うだけなのか、「どうして?」と聞くのかによって、子供の学力は変わってきます。言うまでもなく、「どうして?」ときちんと問いかけを行うと、そこにコミュニケーションのラリーが発生します。

1つの話題に対して、「なぜ?どうして?」という深掘りを親御さんがしっかりしている家庭は、子供の成績が上がりやすいのです。

逆に、親御さんがコミュニケーションを疎かにしてしまうと、子どもは思考することをやめてしまいます。こうなると、あまり学力は伸びません。親の機嫌がよく、親子の仲がいい家庭は、コミュニケーションが増えて成績が上がりやすいのです。

もしこの記事を読んでいるのが親御さんであれば、ぜひ、「子供の成績について叱る」前に、「自分の機嫌のほうを直してみる」ということを意識してもらえればと思います。もしかしたら、それだけで子供の成績が上がることがあるかもしれません。

(川本 雄介 : 東大セミナー講師、ドラゴン桜コース責任者)