アップルのiPhoneは中国のハイエンドのスマートフォン市場でシェアを落としている。写真は浙江省温州市のアップルストア(同社ウェブサイトより)

アップルの中国事業が苦戦を強いられている。

同社は2月1日、2023年10〜12月期の決算を発表。同四半期のグローバル売上高は前年同期比2.1%増の1195億7500万ドル(約17兆5309億円)、純利益は同13.1%増の339億1600万ドル(約4兆9724億円)と、全体的には好調だった。

イギリスのロンドン証券取引所グループ(LSEG)がまとめたアナリスト予想の平均値は、グローバル売上高が1179億1000万ドル(約17兆2868億円)、1株当たり純利益が2.10ドル(約308円)だった。実際の1株当たり純利益は過去最高の2.18ドル(約320円)を記録し、売上高とともに事前予想を上回った。

主要市場で大中華圏だけ減収

にもかかわらず、アップルの株価は決算発表後に急落。2月2日の取引開始直後には、一時的に前日の終値比4%安の179.25ドル(約2万6280円)まで売り込まれた。

投資家の不安を誘ったのは、10〜12月期の大中華圏(訳注:中国本土および香港・マカオ・台湾)での売上高が208億1900万ドル(約3兆523億円)にとどまり、前年同期比12.9%の2桁減を記録したことだ。アナリストも大中華圏の減収を予想しており、LSEGの平均値は235億3000万ドル(約3兆4497億円)だったが、実績はそれに届かなかった。

世界の主要市場のなかで、アップルの10〜12月期の売上高が減少したのは大中華圏だけだ。決算報告書によれば、同四半期の南北アメリカ大陸の売上高は前年同期比2.3%増の504億3000万ドル(約7兆3935億円)、ヨーロッパは同9.8%増の303億9700万ドル(約4兆4565億円)、日本は同15.0%増の77億6700万ドル(約1兆1387億円)だった。

アップルが決算発表後に開催した業績説明会では、中国事業の予想を超える落ち込みに参加者の関心が集中した。


アップルのティム・クックCEOは、中国市場の将来を楽観していると強調するが……。写真は「iPhone15シリーズ」の発売時にニューヨークのアップルストアを訪れたクック氏(同社ウェブサイトより)

「為替変動の影響を差し引けば、中国本土市場のiPhone販売額の減少幅は前年同期比1桁台半ばにとどまる。2023年の中国本土市場において、アップルは依然として出荷量が最多のスマートフォン・ブランドだった」

同社のティム・クックCEO(最高経営責任者)はそう強調し、自身の見方を次のように語った。

「私は中国市場の長期的発展について楽観している。中国では通信ネットワークに接続する端末数が過去最高を更新し続けており、スマホユーザーの買い替え意欲も高い」

「市場シェア低下は当面続く」

だが、市場調査会社のデータによれば、中国本土におけるiPhoneの販売台数と市場シェアは2023年10〜12月期にそろって縮小した。例えばカウンターポイントのデータでは、同四半期のiPhoneの販売台数は前年同期比9%減少、市場シェアは20.2%と前年同期より3.5ポイント低下した。


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市場関係者の間では、今後のアップルの中国事業に対してより悲観的な見方が増えている。例えば天風証券の香港法人でアナリストを務める郭明錤氏は、1月31日付のレポートでこう述べた。

「中国本土におけるiPhoneの出荷台数は、ここ数週にわたって前年同期比30〜40%減で推移している。その要因はハイエンドスマホ市場でファーウェイ(華為技術)が復活を果たしたことや、(アップルの製品ラインナップにはない)フォルダブル(折り畳み式)スマホの人気が高まっていることなどにある。アップルの市場シェア低下は当面続くだろう」

(訳注:中国のスマホ市場におけるファーウェイの復活については『ファーウェイ「自社設計チップ」搭載拡大の衝撃』を参照)

(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は2月2日

(財新 Biz&Tech)