キューバと韓国が65年ぶりに国交を再開した。これまでキューバは、北朝鮮と最大の友好国だった(写真・ studiocasper/Getty Images)

韓国政府が北朝鮮の兄弟国であるキューバと外交関係を樹立した。1959年の国交断絶から65年ぶりの再開となる。

韓国・外交省によると、韓国とキューバは2024年2月14日(現地時間)、アメリカ・ニューヨークにある両国の国連代表部で公式的な外交関係の樹立を行ったと明らかにした。

韓国にとってキューバは外交関係を持つ193番目の国となり、国連加盟国の中で国交がないのはシリアだけとなった。

1959年に韓国と断交したキューバ

キューバは1949年7月に大韓民国を承認したが、1959年1月のキューバの社会主義革命以降、両国間の交流は途絶えた。一方、キューバは北朝鮮と1960年に国交を結んだ後、反米の価値を共有する「兄弟国家」として友好関係を続けてきた。

韓国・外交省は「中南米・カリブ海地域国の中で唯一国交がなかったキューバとの外交関係樹立は、韓国の中米、南米への外交強化のために重要な転換点だ」と説明した。

人口約1123万人のキューバは、中南米唯一の共産主義国家だ。両国は国交がなかった時期でも観光・文化面など非政治分野で着実に交流を拡大してきた。

コロナ禍が始まる前まで、年間1万4000人の韓国国民がキューバを訪問していた。2022年でみると、両国の貿易規模は輸出1400万ドル、輸入700万ドルだった。

北朝鮮の友好国であるキューバとの修交は、とくに国際社会で北朝鮮の孤立感を高め、北朝鮮への圧力の声を高める重要な支柱になると思われる。

【解 説】

社会主義国として親密な関係を続けてきた北朝鮮にとって、韓国がキューバと国交を結んだことは相当な衝撃だろう。北朝鮮とキューバは「塹壕を共有する」仲として関係が深い。

故フィデル・カストロ議長(1926〜2016年)も1986年に訪朝し、故・金日成(キム・イルソン)主席(1912〜1994年)に対し、「一つの朝鮮だけが存在する」と述べ、金日成氏への支持を強く表明したことがある。

カストロ議長も訪朝

また、キューバがアメリカと激しく対立していたとき、金日成氏が小銃など大量の武器を供給したという話がある。カストロ議長が死去したときには、平壌をはじめ北朝鮮国内で丁重に弔ったときには話題になったほどだ。1988年のソウルオリンピックの際には、キューバは参加をボイコットしている。

北朝鮮とそのような関係を築いてきたキューバと、韓国が国交を再開することは「北朝鮮にとって長い友人を韓国側に引き寄せたことは相当な意味がある」(韓国・外交省関係者)。

韓国は2000年からしばしば、キューバに国交正常化を直接求めてきた。それ以来、まずは経済・文化面での交流を深めてきた。2016年には当時の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相がキューバを訪問し、関係改善への大きな一歩を踏み始めた。

ところが文在寅(ムン・ジェイン)政権(2017〜2022年)は、親北朝鮮的な政策を行っていたため、北朝鮮に遠慮してそれほど強い働きかけはしなかった。領事関係や通商代表部の設置を働きかけた程度だった。

現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になり、国交再開を強く推進することになった。とくに2023年、朴振(パク・チン)外相がカリブ諸国連合(ACS)閣僚会議に出席したことが、大きな転機になった。ここで韓国とキューバは高官協議まで行ったようだ。

これまで韓国人がキューバを訪れる数も増えてきた。コロナ禍前の2014〜2019年の5年間で、韓国人のキューバ訪問者数は5000人から1万5000人にまで増え、交流が深まっていた。キューバ国内にも韓国語を勉強し始める人、ドラマや歌手などの韓流が好きな人など、ファンクラブの会員数は1万を超えているという。

今回、北朝鮮がキューバや韓国に対し妨害工作があったかどうかは表面化していない。ただ、元統一戦線部長の金英哲(キム・ヨンチョル)氏がキューバを訪れた際、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の親書を携え、韓国の動きを警戒するよう伝えたことがある。

(東洋経済・本誌コラムニスト 福田恵介)

(ソウル新聞)