Xの代替本命と言われる「Bluesky」の一般公開が2月6日に始まりました(筆者撮影)

2月6日、Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏が立ち上げたことで知られるSNS「Bluesky」が招待制を廃止し、誰でも登録できるようになりました。

公開から約2日で新規ユーザーが100万を突破し、Bluesky CEOのジェイ・グラバー氏の投稿によると、日本語の投稿が英語の投稿を大きく上回っており、日本での熱い盛り上がりがわかります。


ネットワーク解析では英語の投稿を日本語が上回っている(筆者撮影)

国内では、マンガちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』の作者・ナガノさんのアカウントが、2月9日時点で173万を超えるフォロワーを集めています。

Xで「Blueskyのアカウントを作りました」と報告するユーザーを見かけることも増え、芸能人や企業も続々とアカウントを作成しています。iOSのApp Storeでは無料アプリランキングで1位、Google Playストアでも1位となっています(2月9日時点)。

「Xの代替」の本命として注目されるBlueskyとは、どんなSNSなのでしょうか。

カスタマイズ性が高いBluesky

Blueskyの見た目は、とてもTwitterに似ています。テキストは300文字まで、画像は4つまで投稿できます。動画の投稿や、投稿の編集には対応していません。

他ユーザーの投稿には、「返信」、「リポスト」(TwitterのRT)、「引用」(Twitterの引用RT)、「Likes」(いいね)で反応できます。検索は、検索ボタンから本文、アカウントともに検索できます。


iOS版「Bluesky Social」の画面(筆者撮影)

アカウント画面にはプロフィール画像と背景画像が設定できます。アカウントはメールアドレスを使って作成します。アカウントを非公開にする設定はなく、DM機能も用意されていません。

Blueskyは、iOS版「Bluesky Social」とAndroid版「Bluesky」などのモバイルアプリや、ウェブサイトで利用できます。どちらもシンプルで使いやすいデザインです。また、サードパーティーにより開発されたアプリも利用できます。モバイルアプリ「Graysky」や、マルチカラムでブラウザ表示ができる「Deck.blue」などがすでに公開されています。

Blueskyならではの特長

ここまでは、Twitterのシンプル版のように思えるかもしれませんが、実はBlueskyならではの特長がいくつもあります。

まずは、フィードのカスタマイズ性です。Blueskyでは、Xのタイムラインにあたる「フィード」を複数表示して、切り替えて閲覧できます。最初は「Following(フォローしている人)」と「Discover(おすすめにあたるもの)」などが用意されていますが、自分好みのフィードを追加していけるのです。


自分好みのフィードを表示できる(筆者撮影)

フィードを追加するには、好みのユーザーを追加した「リスト」を作成し、そのリストを設定します。他のユーザーが作成したリストもフィードに追加できます。Xの「リスト」に近い機能ですが、Xのように詳しい人だけが使う機能ではなく、初期設定の段階からフィードのカスタマイズをすすめられます。アプリ画面の「#」タブでは、おすすめのフィードを表示しており、「+」ボタンだけで追加できます。

表示させるコンテンツについても、「モデレーション」メニューで細かく調整できます。

例えば、セクシャル、ヘイト、スパムの投稿に対して、非表示にするか、警告を出すかといった対応を簡単に選択できます。「返信で広告を送ってくるユーザー」などをまとめてリストに追加し、一括でミュートやブロックができる「モデレーションリスト」機能もあります。もちろん、ユーザー単位でのミュートやブロックも可能です。

動画の共有が当たり前になっている今、Blueskyが動画に非対応という点は少し残念に思う人もいるかもしれません。しかし、テキストをベースに交流したい人や、見たくないものを見せられることに疲れた人にとって、このカスタマイズ性は役立ちそうです。

Blueskyは「分散型SNS」

ここまで利用するうえでの特長を説明してきましたが、Blueskyは設計思想にも大きな特長があります。それは、「分散型SNS」であるということです。Twitterのようにひとつの企業が運営する中央集権型ではなく、独立したサーバーを「プロトコル(通信手段)」でつなげて、それぞれのサーバーで自治できる構造になっています。例えていうと、メールの構造と同様です。メールは、各企業が立てたサーバーで運営され、他のサーバーとメール送受信プロトコルでつながっています。

中央集権型では運営元の方針に従うしかありませんが、分散型では自分のアカウントを好みの運営元に移動できます。

Blueskyが開発したプロトコル「AT Protocol」は、サーバーごとに表示のアルゴリズムも選択できます。自分好みの表示がされないときは、自分に合ったサーバーを選べばいいわけです。

公式ブログによると、2月中に「フェデレーション」の初期バージョンを公開する予定です。フェデレーションとは、同じプロトコルを持つ他のサービスを1つのIDで利用できるシステムのことです。これにより、アルゴリズムに束縛されず、SNSを選択する自由や離れる権利が与えられると記載されています。友達や人間関係をそのまま別のSNSへ移行できるということのようです。

モデレーションについても、今後「ラベル付けサービス」が提供される予定とのことです。公式ブログによると、例えばファクトチェック組織が投稿を「部分的に虚偽」「誤解を招く」、またはその他のカテゴリーとしてマークし、ユーザーがそのラベルを購読できるようになります。災害が多い日本では、期待したい機能です。

はたして、Xの代替となるか、ですが、今の段階では未知数です。カスタマイズ性の高さに関しては、Xのアルゴリズムに不満を持つユーザーたちが好む仕様だと思います。しかし、多数のユーザーが集まる巨大なグループが形成されていることがXの強みであり、その中で意見を激しく交わしたり、バズったりすることを喜びとしているユーザーも多くいます。また、テレビのように、同じコンテンツを見ている楽しさを感じている人もいるでしょう。簡単にフィルタリングされてしまうBlueskyに、物足りなさを感じるかもしれません。まずはユーザー数の獲得がカギとなると思います。

Bluesky以外のSNSは?

一方、他の「X対抗」SNSも、代替先としてはまだ弱いようです。MetaのThreadsは、Instagramアカウントで利用できるハードルの低さでユーザー数を得ましたが、Instagramインフルエンサーが活躍していることで独自の世界になりつつあります。

実は、Threadsも分散型SNSです。マーク・ザッカーバーグ氏は、Threadsと同じ「ActivityPub」プロトコルを採用している「Mastodon」との相互運用テストを始めると宣言しています。今後、プロトコルの違いがどう影するのか、こちらもわかりません。


Blueskyの公式サイトには「ソーシャルインターネットにようこそ」と記されている(画像:Blueskyサイトより)

現在のXは、2023年夏に始まった「広告収益分配プログラム」により、「インプレゾンビ」が多数出現しています。インプレゾンビとは、バズった投稿にリプライを付けていくアカウントのことを指します。彼らは広告収益の分配を得るために、インプレッション(表示回数)が多い投稿のおこぼれを狙っているのです。

破綻が進むXにうんざりしているユーザーは私だけではないでしょう。はたしてBlueskyの青い蝶が私たちを自由な世界に導いてくれるのか、今後も注目していきたいと思います。

(鈴木 朋子 : ITライター・スマホ安全アドバイザー)