慎吾さんは、彼なりに家庭を愛しているのだが……

写真拡大

前編【母は「チビ太」とからかわれていたボクを救ってくれた…年上女性と何度も不倫を繰り返す45歳「マザコン夫」の原体験】からのつづき

 佐島慎吾さん(45歳・仮名=以下同)は自らも認める“マザコン”。妻がいても「女性の中に母を見て、母を探してしまう」と、年上女性との不倫をしてきた。優しく、強く、たくましかったという母は、彼が中学生のときに病で亡くなった。父は立ち直れず家庭は崩壊。慎吾さんは叔母の下で育てられ、勧められた見合い話で3歳年下の陽子さんと結婚、一男一女に恵まれた。

 ***

【写真を見る】「夫が19歳女子大生と外泊報道」で離婚した女優、離婚の際「僕の財産は全部捧げる」と財産贈与した歌手など【「熟年離婚」した芸能人11人】

 妻は子育てに専念していた。幼い子をふたり育てながら、家事も丁寧、料理も完璧な妻に、彼はときどき「すごいなあ。いつもありがとう」と伝えた。もっと手抜きすればいい、めんどうなときは店屋物でもかまわないと言っているのに、妻は毎日、手作りの料理をテーブルに並べた。

慎吾さんは、彼なりに家庭を愛しているのだが……

「生活費だけ渡すという形をとっていたんですが、妻が足りないと言ったことはありません。給料日近くに『大丈夫? 足りてる?』と聞くと『大丈夫よ』って。なんだかだんだん妻のけなげさで胸が苦しくなることがありました」

 彼は彼なりに貯金をし、ある程度、運用もしていた。リスク分散しながら資産を築いていたのだ。若いころからお金にはシビアな目をもっていた。叔母夫婦は大学の入学金は出してくれたが、それ以外はむずかしかった。奨学金を借りるとあとが大変だと思っていた彼は、別の親戚にお金を借り、あとはアルバイトでせっせと稼いでいた。それでもときにはキャベツ1個で1週間を過ごしたこともあるという。そんな苦労をしたからこそ、子どもたちのためにも妻のためにも資産を形成したかった。

「生活費以外の出費は言ってくれれば必ず出すからと妻には伝えていました」

 といいつつ、彼は小首を傾げた。

「今、言いながら思ったんですが、妻と僕ってかなり他人行儀かもしれない。ケンカしたこともないんですよ。ケンカの種がないから。妻はひとりで我慢しているのかもしれません。あるいはこんな距離感でいいと思っているのか……。子どもたちと一緒に食卓を囲むと子どもの話を聞くことばかりだし、少しリビングでくつろいだら、僕はほぼ自室にこもるので、考えたみたら妻とふたりきりでゆっくり話す時間はあまりとってないですね」

 妻がどう思っているかはわからない。ひとりの時間が必要だと思っている女性であれば、むしろこれでいいと感じているかもしれない。あるいは夫婦としてじっくり話せないことを寂しいと思っている可能性もある。いずれにしても「他人行儀」だと本人が認めるような夫婦関係はあまり一般的ではなさそうだ。

「料理教室」での出会い

 慎吾さんの「今の恋」は2年ほど前から始まった。出会いは「料理教室」だったというから興味深い。慎吾さんは、彼なりに家庭を愛している。だから子どもたちのため、妻のために料理を作ってあげたいと思うようになった。仕事から離れて気分を変える趣味をもちたいとも感じていたそうだ。

 土曜日の午後の料理教室は男性も女性もいて、社外の人と利害関係のない会話を交わすのは楽しみともなった。

「同じテーブルにいた智香子さんに惹かれました。温和な感じで、毎回、テーブルのまとめ役になってくれて。年齢も職業もバラバラですが、彼女がそれとなく気を配ってくれて、僕らのテーブルはいつも笑いが絶えなかった」

 3ヶ月の講習期間を楽しく過ごした慎吾さん、家庭で料理を再現すると妻も子どもたちも大喜びだった。あと2回で講習が終わるというとき、慎吾さんは智香子さんに「よかったら帰りにお茶でもしませんか」と声をかけた。帰りがけに待ち合わせの喫茶店の場所を伝え、先にその場所で待っていると彼女がやってきた。

「『あら、他の人は?』と彼女が言ったので、『ごめんなさい。僕だけです。僕があなたと話したかったんです』と正直に言いました。智香子さんががっかりしたのか喜んでいたのかわかりませんでした」

 料理上手そうに見える智香子さんがなぜ教室に来たのか、智香子さんのコミュニケーション能力の高さはどうやって培われたのかなど、世間話のようでいて彼女の本質を知る質問をいくつかしてみた。彼女は丁寧に答えてくれたという。

「結婚しているし子どももいるから、料理は長年やってきたけど、考えてみたら正しい基本を知らなかった。だから改めて学んでみたいと思ったと。コミュニケーション能力は高いとは思ってないけど、そう見えるとしたら人が好きなだけ、と爽やかに言うんです。屈託がないというか、物事をまっすぐに見ている人なんだなと感じました。そういう人間を、本来、僕はあまり好きではないはずなんですが、智香子さんにはなぜかぐいっと惹かれるものがありました。何より彼女は明るい。笑顔が心に染みる感じなんです」

 ベタ褒めである。彼自身は「明るいタイプではないし、偏屈で嫌なヤツ」だと自分を分析している。決して嫌なヤツではないが、どこかしらこだわりのある人間ではあるから、屈託のない人に惹かれることもあるだろう。むしろある程度の年齢になって初めて、「底抜けに明るくておおらかで屈託のない人」が好きになるのはわかる気もする。

「その日はお茶だけでさっと解散したんですが、料理教室の最終日に『これからも会う機会があるとうれしい』とこっそり伝えたら、彼女はLINEを交換しましょうと言ってくれました」

彼女の年齢を知って驚き

 帰りにまた喫茶店で会った。智香子さんは次のステップの教室に通うとも言った。彼は教室はもういいやと思っていたため申し込まなかったのだが、彼女が通うならとあわてて手続きに行こうとした。

「あなたに会えるなら通うと言ったら、智香子さんは笑っていました。僕の気持ちをわかってなかったんでしょうね。といって若い人のように告白なんてできないから、いつか食事でもと誘ったら、彼女は『今日なら時間があるけど』と。飛びつきました。店を吟味する暇はなかったので、知っている小料理屋に電話して席をとってもらって……」

 仕事関係者と行く店だったが、個室をとってもらった。店主は口が堅いから彼が週末に訳ありそうな女性と訪ねてきたとしても仕事関係者に話すことはないだろうと踏んだ。

「早かったですよ。その日のうちに男女の関係になりました。軽く飲みながら食事をしているうちにお互いに秘めた思いがあったんだとわかったので」

 ベッドの中で初めて彼女の年齢を知った。彼より一回り上だった。いくつか年上だとは思ったが、まさかそんなに違うとはと彼は驚いた。

「驚いたのは彼女がものすごく若く見えたから。肉感的なタイプだし、性的にもとても積極的だったし、とにかく素敵な時間だった。『年を言わなくてごめんね』と言われたけど、そんなのまったく関係ない。彼女によって僕は男として初めて大きな快感を得ました」

 彼は彼女に夢中になった。彼女のほうはひとり息子が成人して独立しているし、夫とはもう互いに好きなように生きようと話し合っているという。彼女を止めるものはなかった。

「彼女自身も仕事をしているから、僕に経済的な負担はかけたくないと。彼女が食事代を出してくれることが多かったですね。そういうのもありがたかった。若い恋人同士みたいに会いたい気持ちが募って、週に5回くらい会ったこともあります」

疑う妻の一言

 夜中に電話で話していて急に会いたくなって家を出て落ち合ったり、彼女の家の近くまで車で迎えに行って深夜のドライブを楽しんだこともある。まるで学生のように自分を解放した恋に、ふたりとも身を任せていた。

「そんなことをしていたら、さすがの妻も疑いますよね。今回は疑うというよりは『誰かいるんでしょう』といきなり言われました。料理教室のころから実は怪しいと思っていた、と。もちろん『そんなことがあるわけない』と否定しましたが、妻は『若いころのほうが言い訳がうまかった』と言いました。妻があんな切って捨てるような言い方をするとは思わなかったのでちょっと驚きました」

 そんな妻になぜか刺激され、彼は夜中に妻の寝室へ赴いた。年に数回、そういうことがあったから拒絶はされないと思っていたのに拒絶された。あげく「あなたは汚らわしいわ」とまで言われた。

「変ないい方ですが、妻が初めて本音を出してくれたような気がしました。拒絶されたので自室に戻りましたが、なんだか汚らわしいと言われても悪い気がしなかった。ヘンなこと言ってますよね、僕」

 いいえと私は首を横に振る。わからなくはないのだ、こういう心境が。好悪関係なく、相手の本音がふいっと見えたとき、人は少し心が弾む。そんなことはあると思う。

「智香子さんとは少し会う頻度は減りましたが、変わらず続いています。妻も変わらず疑っているとは思うけど、それ以上、踏み込んではきませんね。上の子が今度中学生、下の子は9歳ですからまだまだ手がかかる。子どもたちの前では、以前と同じようにごく普通の親でいますよ。ただ、妻が僕に直接話しかけることはほぼなくなっている。僕は変わりなく話しかけています。妻は返事はするけど、すぐ子どもたちに話しかけて僕との会話は打ち切る。そんなことが続いているのが現状です」

 彼に罪悪感はない。智香子さんとの関係を続けながら、自分なりに家庭を大事にしていると断言する。

「智香子さんとは、気持ちもそうだけどもう体が離れられない。そんな気がするんです」

 行けるところまで行くしかない。覚悟はしている。そう言って少し笑った表情は、確かにある種の年上女性を惹きつけるものに見えた。

前編【母は「チビ太」とからかわれていたボクを救ってくれた…年上女性と何度も不倫を繰り返す45歳「マザコン夫」の原体験】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部