守備職人・中谷が語る“バイタルエリア”とは。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」。ゴールや失点に直結する“勝負の肝”となるスペースをいかに攻略するか、死守するかは、多くのチームにとって普遍のテーマだろう。

 そんな「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第36回は、ガンバ大阪のDF中谷進之介だ。

 柏レイソルの下部組織出身で2014年にトップチームに昇格。センターバックとして徐々に出場機会を掴むと、2016年にはJリーグ優秀選手賞を受賞した。2018年の夏に移籍した名古屋グランパスでは、2019年から2シーズン連続で全試合フル出場を果たすなど、欠かすことのできない守備の要としてチームを支えた。

 今季は5年半在籍した名古屋を離れ、G大阪に完全移籍。対人の強さや統率力、鋭い危険察知能力など、ディフェンダーに必要な能力をバランスよく持つ守備職人が語る「バイタルエリア」とは――。

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 バイタルエリアはマンチェスター・シティが攻撃で狙って使うイメージ。守備者として使わせないためには、そのスペースを取られると失点に直結してしまうので、なるべくボールを入れられないように考えながらプレーしています。

 最初はまず、そこに近づかせないのが大前提にあって、そのうえでラインを高くしてコンパクトに戦う。入られた場合でも、ゴール前をしっかり固めて正確な立ち位置をとれば、守り切れる。入られたからといって慌てないで対応することがすごく大事です。

 名古屋時代からそうですが、守備の時は相手のボールの持ち方によって細かくポジションを変えている。相手の身体の向きやその選手のクセを把握して、本当に細かく細かく準備をしています。

 自分の強みは予測力。戦況を見ながら、「ここにボールが出てくるだろう」と素早く判断することを心掛けていて、1対1になった時も慌てずに対応できていると思う。そこは今後も続けていきます。
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 長年、最終ラインを牽引し、副キャプテンも務めた愛着のあるクラブを離れ、27歳で新たな挑戦へ。

 新天地では、もちろんスタメンが確約されているわけではなく、熾烈なポジション争いも待っている。中谷はなぜ、厳しい環境に身を置く決断をしたのか。そこには並々ならぬ覚悟があった。

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 やっぱり名古屋に5年半もいて、自分だけじゃなく、家族も現状に満足している状態にあった。グランパスはすごく居心地が良い場所だったんです。でも逆に居心地が良いまま、ここに居続けていいのか、という気持ちもあった。

 あとは新しい環境に身を置くことで、自分自身のステップアップにもなるかなと思ったし、自分のレベルを上げるきっかけになると考えて移籍を決めました。とくに名古屋時代のチームメイトや家族から何かアドバイスがあったからではなく、こういう決断に関しては、常に自分自身でしっかり考えて決断しています。
 
 加入前のガンバの印象は、ビッグクラブだということ。ただ、この5、6年は思うように結果が出ていなくて、いつも苦しんでいるイメージだった。去年も本当に失点数が多かったので、そこを変えたいと思ったのも飛び込んできたひとつの理由としてありますし、自分がここに来て、それをどれだけ減らせるかというのは、やってみたいと思っていました。

 実際に移籍してみて、チームの雰囲気は素晴らしかった。みんなすごく意欲的に練習に取り組んでいますし、インテンシティもとても高いし、チーム全体でしっかりまとまりながらやっているので、とても良い雰囲気でできている。そのなかで、自分もみんなともなるべくコミュニケーションをとるようにしています。

 ポジション争いも一からにはなりますが、それはどこのチームに行っても同じ。しっかりライバルとも戦っていかないといけないし、毎日毎日、自分自身のベストを出していきたい。それで監督に選ばれて試合に出られれば、結果を出してアピールする、という強い気持ちは持ち続けたいと思っています。

※後編に続く。次回は1月31日に公開予定です。

取材・構成●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)