「最大の魅力はタワマンがないこと」学芸大学駅をなぜ不動産専門家が激推し? リセールバリューが高い理由
東大卒不動産評論家・牧野知弘氏がさまざまな街の魅力を語るこのシリーズ。最新作は、学芸大学駅周辺について語っていただいた。
大学がなくても、「学芸大学」駅
東京の東急東横線には名前のおかしな駅が2つあります。「学芸大学」駅と「都立大学」駅です。東横線で都心から横浜方面に向かう下り線に乗車すると、渋谷から代官山、中目黒、祐天寺をすぎると4つ目の駅が学芸大学。次の駅が都立大学です。
何やら学園街が続くイメージを持たれるかもしれませんが、2つの駅周辺には現在、学芸大学(正式名称:東京学芸大学)も都立大学(正式名称:東京都立大学)も存在しません。受験生から見たらなんとも間違えそうな迷惑な名称ですが、地元住民の方たちには愛着があるようです。
2000年に東横線は複々線化され、東急目蒲線の一部区間が目黒線となって東京メトロ南北線と都営地下鉄三田線が乗り入れるようになった際に、駅名変更が検討されたのですが、反対多数で否決されているからです。大学がなくても駅名には「学芸大学」でいいんだと多くの住民が考えた愛された駅名、これが「学芸大学」駅です。
名門・東京学芸大学附属高校は徒歩圏内
さて今回の住んでみるとよい街は東横線「学芸大学」近辺をご紹介しましょう。
もちろん「学芸大学」駅という名がつけられたのは、現在の東京学芸大学がこの地に存在していたからです。東京学芸大学は1949年5月の学制改革によって都内にあった4つの師範学校(東京第一、第二、第三、青年)を母体に設立されました。もともとの駅名は碑文谷駅であり、その後青山師範駅、第一師範駅と名称が変わっていきますが、1952年に学芸大学駅に改称され現在に至っています。
現在駅周辺で「学芸大学」に関係のある学校は駅から西へ徒歩15分、駒沢通りを渡り、下馬通り沿いにある東京学芸大学附属高校くらいです。この学校は東京大学など有名大学に多く進学する有名校で、ちなみに学芸大学の附属小学校、中学校は世田谷、文京区の竹早、小金井、練馬区の大泉などにありますがこれらはいずれも前身の師範学校があった場所です。
駅周辺は目黒区鷹番といいます。この鷹番を中心に駅西側に世田谷区下馬、南側が目黒区碑文谷、東側に目黒本町、中央町、北側に五本木となります。
最大の魅力は渋谷駅まで8分の好アクセス。タワマンがなく小規模店舗が混在している雑多で便利な街
この近辺の住みやすさのポイントは、交通利便性です。渋谷駅までは急行に乗車すればわずか8分。隣の都立大学も便利ですが、都立大学駅には急行電車は停車しません。買い物も便利です。渋谷の一つ手前はお洒落スポット代官山。ブティックを眺めながらのお散歩が楽しめます。南にはハイソサエティな街、自由が丘。この街もブティックやカフェが立ち並び、ちょっとおしゃれをして歩きたい街です。どちらの駅も学芸大学からわずか2駅です。
それでいて、学芸大学駅周辺は意外と庶民的な商店街があって、日常の食料品や衣料品を安く手に入れることができます。駅は東口にも西口にもロータリーらしきものはなく、駅から直接商店街となります。大型のバスは入れず、不便といえばそれまでですが、庶民的な商店が軒を連ね、生活していくにはとても便利な街です。
また駅前の商業地域も容積率は最大で400%しかなく、小規模な商業店舗が混在していることから再開発によるタワマンなどの建設が進んでいないことも特徴です。商店街の中にはチェーン店以外の地元のお店が多く、学生や若い方が好みそうな中華料理店、焼肉店、ラーメン屋、蕎麦屋、居酒屋など豊富なラインナップです。
公園や野球場、テニスコートなどもある
車の便も良い街です。駒沢通り、目黒通りという主要幹線道路に挟まれているため、都心に出るのは快適そのものです。また北西から南東へ環状7号線が走りますので、都内をほぼ自由自在に動き回れるのも特徴です。
緑はどうでしょうか。駅の南西部の碑文谷には目黒区立碑文谷公園があります。敷地面積は広く4万3533㎡もあります。公園の中心部にある碑文谷池は、古来より周辺住民の水田灌漑用の貯水池として大切にされてきた池です。1932年に周辺土地とともに当時の東京市に寄贈され、公園として整備して1933年に碑文谷公園に、1950年には目黒区に管轄が移され現在に至ります。
公園内を歩くと意外と庶民的な公園です。池にはボートが浮かび、ポニーやうさぎなどの小動物と遊べるこども動物広場があります。また2001年に公園に隣接していた第一勧業銀行(現みずほ銀行)碑文谷グラウンドを取得、体育館や野球場、テニスコートとして整備され、近所の住民に愛されています。ちなみにこの第一勧業銀行の碑文谷グラウンドは、私が大学を卒業して同行に就職した際に、クラブハウスでみっちり研修を受けた記憶があります。グラウンド敷地内にはクラブハウスのほか旧日本勧業銀行本店の別棟がありました。銀行の不良債権の埋め草として売却されたそうですが、今は公園となり住民の方の憩いの場となっているのであれば、それもよしでしょう。
中古20坪のマンションなら7000万円台で手に入るお得なエリア。資産性も十分に保てる
さて学芸大学駅周辺に住むためにはどのくらいのコストがかかるのでしょうか。前述したように、駅周辺は小規模な店舗が入り組んでいるために新築マンションの供給は非常に少ないエリアです。また古くから街が形成されてきていることもあって、比較的築年の古い物件が多いのも特徴です。
この原稿を書いている時点でも新築マンション情報はありませんが隣の祐天寺駅徒歩圏の新築マンションで51㎡(15.4坪)9280万円です。坪当たり600万円です。代官山駅周辺で坪当たり700万円から800万円台ですから、お買い得のエリアともいえるでしょう。
中古相場は築年が40年を超えるようなものであれば、坪300万円台後半から400万円半ば程度です。20坪(66㎡)くらいでしたら7000万円台くらいで手に入れることができます。利便性の高さと周辺の住環境の良さを考えると、多少築年の古い物件でも、しっかりと手を入れた管理内容の良いマンションであれば、中古流通性は確保でき、資産性は十分に保てると思われます。
生活の余裕を感じさせる街
賃貸相場もワンルーム(8坪)で12万円から13万円。坪単価で15,000円から16,000円、ファミリー向け(20坪)で25万円、坪当たり12,000円から13,000円あたりが相場です。私は以前鷹番で中古マンションを投資家に斡旋したことがありますが、若干築年は古かったものの、賃料は当初予測よりもかなり上がり、稼働率も常時満室でとても感謝されています。
いかがですか。東横線沿線というと代官山や自由が丘、武蔵小杉など超有名駅がひしめきますが、学芸大学や祐天寺、都立大学などのひっそりと佇む駅に意外に魅力があることに気づかれたでしょうか。圧倒的な交通利便性を誇りながら、日々の生活ではどこか安心できる庶民的な商店街もあり、テレワークの気休めや気分転換ができるような公園やグラウンドがある学芸大学。生活の余裕を感じさせる街です。
