3点目につながる上田綺世のシュート(撮影・六川則夫)

写真拡大

 インドネシアの基本システムは3−5−2で、守備時は両サイドのSB(ウイングバック)が下がって5バックになる。しかし日本戦では日本のキックオフと同時に5−4−1の超守備的な布陣でスタートした。

 ***

【写真6枚】インドネシア戦のハイライト

 インドネシアは19日、東南アジアのライバルであるベトナムに1−0の勝利を収めたことで、決勝トーナメント進出の可能性が出てきた。

 同国サッカー協会の会長は日本に勝利したら特別ボーナスという「ニンジン作戦」に出た。だが韓国人のシン・テヨン監督をはじめ選手たちは、2007年に自国で開催して以来となるアジアカップで初のベスト16に進出することを、単に日本戦に勝つことより優先したのは当然のことだった。

3点目につながる上田綺世のシュート(撮影・六川則夫)

 このため日本が先制点を奪っても、前半はひたすら守備を固めた。というのも今大会は各グループの2位に加え、成績上位の3位4チームが決勝トーナメントに進出できるからだ。すでにグループBのシリアとグループCのパレスチナが勝点4でベスト16を決めている。そしてグループAの中国は勝点2止まりで脱落していた。

 残るイスは2つあるが、グループFの3位オマーンは勝点1とはいえ最終戦の相手は2連敗のキルギスのため、勝点を4に伸ばす可能性がある。一方グループEは混戦で、グループDのインドネシアと同じ勝点3の3位マレーシアは、勝点4の2位韓国と激突する。試合前の両チームの得失点差はインドネシアが−1、マレーシアが−3。インドネシアとしては、負けてもできるだけ大量失点を防ぎたいという狙いが日本戦にはあった。

ゴールラッシュへの期待

 一方の日本は、前日の記者会見で森保一監督が「26人の選手が揃っているのでいろんな起用を考えたい」と話していたように、イラク戦のスタメンから8人を代えてきた。とはいえ、どの選手も過去に何度もプレーしたポジションのため、それぞれの役割も決まっていて意思の疎通もスムーズだ。試合開始2分にはFW上田綺世への反則がVARとOFR(オンフィールドレビュー)で確認され、日本はPKから上田が先制ゴールを決めた。

 日本はその後も高いエリアからプレスをかけてはボールを奪い攻勢を仕掛けた。35分には右SB毎熊晟矢のクロスから左MF中村敬斗が右足を強振したが、シュートは左ポストに弾き返され、1−0のリードで前半が終了した。

 後半もインドネシアのシステムが5−4−1で変わらないのは、0−1ならオーケーというスタンスだったからだろう。これに対し日本は7分にCB冨安健洋のフィードからカウンターを仕掛け、最後は上田がこの日2点目となるゴールでリードを広げた。待望の追加点を後半早々に奪っただけに、日本のゴールラッシュが始まるのではないかと期待も高まった。

 実際、10分と17分には右MF堂安律がGKと1対1から狙いすましたグラウンダーのシュートとループを見舞ったが、いずれもゴール枠を外してしまう。そして19分のヘディングシュートもゴールカバーに入った選手にクリアされてしまった。

3試合連続の失点

 森保監督はその後、次々と選手を交代させ、MF佐野海舟とCB渡辺剛をアジアカップで初めて起用。これでGKの前川黛也と野澤大志ブランドン、ケガでリハビリ中のMF三笘薫以外の23人をピッチに送り込んだ。今大会は「7試合を戦えるタフな力を培ってほしい」という言葉通りの起用法でもある。

 その後、日本は5枚目のカードとして41分に送り込まれたMF伊東純也が2分後に右クロスから上田のシュートを引き出し、CBのオウンゴールで3点目を日本にもたらす。しかし後半アディショナルタイム、この大会の直前まで東京Vに所属していた左SBアルハンのロングスローから、右SBサンディ・ウォルシュがボレーでニアサイドを破って1点を返した。

 前日の会見で冨安は「2試合続けてクリーンシートに抑えられていないので、そこはクリーンシートで終わりたいと思っている」と抱負を語っていたが、3試合連続の失点に森保監督も「守備で最後のところ、パワープレーで失点した。無失点で抑えられなかったことで、次に向かっていきたいと思う」と気を引き締めていた。

貴重な1週間

 3試合連続しての失点は確かに気になるところである。ウォルシュをフリーにしての失点だけにGK鈴木彩艶を責めることはできない。終盤のパワープレーだったため全員がゴール前に戻っていて、かえってマークが混乱したのか。こちらはVTRなどで確認して再整備する必要があるだろう。

 とりあえず、日本はグループリーグ突破という最低限のノルマは果たした。ラウンド16の相手は韓国かヨルダンか現時点ではわからないが、どこが相手でもここから先は勝ち続けるしか優勝できないことに変わりはない。幸い1週間のインターバルがあるため、三笘の復活も期待できる。あとはチームのコンディションが上昇曲線を描くことを待つのみだ。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部