暗号資産で儲けように注意(写真はイメージ)

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「暗号資産に投資すれば、絶対にもうかっちゃうよ」

SNSなどで知り合った見知らぬ相手からの、こんな甘〜い誘いにのって数百万円もだましとられる人が急増しているため、国民生活センターは2024年1月23日、「【20代要注意!】暗号資産のもうけ話」という警告リポートを発表した。

知人や友人からもだまされる人も続出している。いったい、どんな手口なのか。身を守る方法を担当者に聞いた。

自動売買ソフトを使えば、確実にもうかる

国民生活センターによると、代表的な事例は次のとおりだ。

【事例1】SNSで知り合った外国人男性から勧められた投資サイトで、暗号資産を取引した。出金を希望したら、高額な費用を請求された

画像投稿のSNSで外国人男性と知り合い、メッセージアプリで連絡を取り合うようになった。暗号資産の投資を勧められると、最初の投資として、指示に従って国内の暗号資産取引所のアプリで2万円相当の暗号資産を購入し、指定された投資サイトへ送付した。

数日後、利益が3万円相当になり、暗号資産取引所のアプリ内に開設した自身の口座へ出金できたので、信用した。再度、40万円相当の暗号資産を投資サイトへ送付し、利益が出たので、出金しようと投資サイトへ連絡。すると、出金には12%の税金がかかり、約5800ドル(約86万円)を支払わなければ出金できないと言われた。どうしたらよいか。(2023年10月・20歳代男性)

【事例2】知人に暗号資産の自動売買でもうかると誘われ、自動売買ソフトを購入した。もうからず、信用できないので返金してほしい

知人に誘われ、知人が参加している副業グループの話を聞きに行くことにした。「グループが販売している暗号資産の自動売買ソフトを使えばもうかる。グループで投資の勉強ができる」と言われ、グループへの参加とソフトの購入を申し込むことにした。

50万円相当の暗号資産を購入し、指定された海外の送金先に送付した。その後、ソフトを利用して暗号資産の売買をしたがもうからず、信用できない。誰かを勧誘すると紹介料がもらえるという話は聞いていたが、自分は誰も勧誘していない。返金してほしい。(2023年5月・20歳代男性)

儲かっているように画像で見せているだけ?

このような、詐欺的なもうけ話。どれくらいの相談が寄せられているか。身を守るにはどうしたらいいか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった国民生活センター相談情報部の渡辺優一さん(金融担当)に話を聞いた。

――どのくらいの相談がきているのですか。

渡辺優一さん 2021年度に6381件、2022年度に5623件、2023年度(2024年1月24日現在)に5614件と、コンスタントに5000〜6000件あります。

――けっこう多い印象ですね。手口の1つとして、SNSなどで知り合った相手から暗号資産の取引を勧められるパターンがありますが、見知らぬ相手をすぐに信用してだまされることが理解できません。

渡辺優一さん まず1つには、SNS上で「インフルエンサー」と呼ばれる人たちが紹介しているのを見て、簡単に信じ込んでしまうことが多いようです。たとえ著名人が勧めていても、安易に信じてはいけません。

もう1つ多いのは、相手と頻繁にやりとりするうちに親近感を抱いて信じ込むケースです。日常のたわいもない話や、「仕事きつくて。もう少しお金があったらなあ」などと仕事の悩みを打ち明けたりすると、「それなら、いい儲け話がある」と暗号資産を勧めてきます。お金がほしくない人はいませんから、つい話にのってしまうのです。

――「待ってました!」とばかりに、罠を仕掛けてくるわけですね。

渡辺優一さん はい。相手もお金の話に誘導することを狙っています。たとえば2021年に、画像投稿のSNSで知り合った「外国人女性」から、合計約500万円をだましとられた50代男性のケースが典型的です。

無料通話アプリのIDを交換、頻繁に連絡し合っていました。ただし、相手が本当に女性かどうかはわかりません。画像なんかいくらでも細工ができますから。

――たしかに、そうですね。

渡辺優一さん この50代男性のケースは、暗号資産への投資で儲けられると勧められ、指示に従って、国内の暗号資産交換業者に自身の口座を開設、330万円を入金しました。すると、どんどん利益が出ました。
ところが、です。これだってアプリ内の画像の数字を見ているだけで、本当に利益が出ているのか、そもそも本当に取引が行われているのかどうか、わかったものではありません。

利益が出たので引き出したいと「女性」に伝えると、税金や保証金を立て続けに請求され、さらに170万円を支払いました。それでも出金してもらえない。最後に、手数料として50万円を要求された段階で「おかしい」と思い、消費生活センターに相談に来ました。「女性」とはその後、連絡が取れなくなりました。

税金・保証金・手数料...お金を取り尽くすと行方不明に

――ひどい話ですね。画像が「外国人女性」だということで、男性にも下心があり、脇が甘くなったのでしょうか。

渡辺優一さん それはわかりませんが、マッチングアプリで知り合った異性の相手から暗号資産でだまされる人は、一定数存在します。再びこの男性のケースでお話しすれば、税金は国や地方自治体に自分が支払うべきものであって、個人に支払うことは意味がなく、あり得ません。「女性」から税金を請求された時点で、詐欺だと気づくべきでした。脇が甘かったのは確かです。

いずれにしても、まず投資資金として数百万円を入金。その後、利益が出たことをアプリで確認、出金しようとしたら、税金・保証金・手数料の名目でさらに支払わされたあげく、連絡が絶えるというのが共通のパターンです。

――あくどいですね。しかし、見知らぬ相手ならともかく、もう1つの手口である知人・友人からだまされるパターンも理解できません。なぜ、知っている人をだますのでしょうか。

渡辺優一さん これは昔から健康食品などでよくあるマルチ商法、ネズミ講と全く同じ手口です。会員を増やせば増やすほど紹介料が入ってくる仕組みです。知っている人から勧誘されると、しがらみがあって断りづらいものですから。マルチ商法がからむ昔の健康食品でも健康セミナーがありました。それと同様、暗号資産でも投資セミナーがある。健康食品が現在では、暗号資産に代わっただけということです。

ただ、暗号資産の場合、AI(人工知能)のソフトを買うと、AIが自動的に売買を判断して確実に利益を生み出すという触れ込みですから、「なんかスゴイ!」と思わせるところが現代的な詐欺の手法といえるでしょう。

簡単に儲かるなら、世の中お金持ちだらけ

――こうした悪質な詐欺から身を守るにはどうしたらよいでしょうか。

渡辺優一さん 「簡単に儲かる話など絶対にない。詐欺だ」を思ってください。軽いノリで儲け話を信じないことです。AIを使って暗号資産や株式投資で必ず儲かることができるのなら、世の中、お金持ちだらけになっているはずです。

また、暗号資産で投資するなら、しっかり自分で勉強や研究を重ねることです。たとえば、さきほどの「外国人女性」に税金まで取られた男性のケースですが、株式取引なら証券会社が開設する源泉徴収ありの特定口座を使えば、証券会社がまとめて納税してくれますが、暗号資産の場合は自分で確定申告をして納税しなくてはなりません。

そういった知識は、インターネットでちょっと調べればすぐわかります。そんな基本的なこともしないで、暗号資産で儲けようという考え方は甘すぎます。

――ほかにアドバイスはありますか。

渡辺優一さん 暗号資産交換業者は、金融庁への登録が必要です。暗号資産を扱う業者のサイトやアプリで取引を行う場合には、その業者が暗号資産交換業の登録業者かどうかを金融庁のウェブサイトで事前に必ず確認してください。サイトには、無登録業者として警告がなされた業者の掲載もあります。無登録業者とは絶対に取引しないでください。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)