2024年は「選挙イヤー」。台湾では総統選が行われている(写真:AP/アフロ)

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2024年は世界各地で大型選挙が行われる「選挙イヤー」。その皮切りとも言えるのが1月13日に投開票される台湾の総統選だ。

最近の選挙戦では、誤情報や偽情報、いわゆる「フェイクニュース」の拡散がつきものだ。23年12月初旬、アジア太平洋地域の記者やファクトチェック団体関係者がシンガポールに集まって、地域の実情や対策を話し合うイベントが開かれた。

台湾、インドネシア、パキスタン、韓国、インド...

アジアでは台湾の総統選に続いて2月にインドネシアの大統領選、パキスタンの総選挙、4月に韓国の総選挙、4〜5月にかけてインドの総選挙が予定されている。日本でも政局によっては解散総選挙の可能性がある。アジア以外では、3月にロシアの大統領選、6月にメキシコの大統領選、11月に米大統領選が控える。

イベントは「信頼されるメディアサミット」。米グーグル社のメディア支援事業「グーグル・ニュース・イニシアティブ」が主催している。22年は各国で開催されたが、23年は地域の関係者が一堂に会した。32か国・地域の411団体から678人が参加した。イベントは、参加者の発言内容を自由に紹介できるが、発言者やその所属を特定しない「チャタムハウスルール」で行われた。

各地で拡散される誤情報はさまざまだ。パキスタンでは23年11月、「もし選挙が24年1月に行われれば、パキスタンの半分が降雪に見舞われる」という情報が拡散された。選挙の実施を遅らせる狙いから拡散されたとみられるが、ファクトチェック団体では、天気予報サイトを根拠に、この時期の降雪が予想されているのはパキスタンのごく一部だとして、拡散された情報は「誤り」だと判定した。

インドネシアでは写真が加工されたり、写真に本来の文脈とは異なるタグや説明つきで拡散されたりした。例えば、候補者がお茶を飲んでいる写真が「飲酒している」。公共の場での飲酒に厳しい目が向けられるインドネシアで、こういった投稿が信用されれば、陣営へのダメージは大きいとみられる。

AI悪用したフェイク動画の問題も

AI(人工知能)を悪用したフェイク動画の問題も顕在化している。23年10月には、ジョコ・ウィドド大統領が中国語でスピーチする動画が拡散された。反中感情くすぶるインドネシアで、大統領が「中国寄り」だとする印象を植え付ける狙いがあるとみられる。ファクトチェック団体が調べたところ、15年に英語で行ったスピーチの動画に、中国語の音声をかぶせた偽動画であることが明らかになった。

登壇者からは、(1)特定のアカウントが誤情報を集中的に流すことがあるため、プラットフォームへの通報を強める(2)ファクトチェック団体どうしの連携を強化する、といった意見が相次いだ。多くの登壇者が口にしたのが「プレバンキング」(pre-bunking)という言葉だ。拡散している情報が誤りであることを検証する「デバンキング」(de-bunking)と対になるとも言える考え方で、過去に拡散された誤情報の傾向から、今後、どんな情報が拡散されそうかを分析して広く知らせる、という試みだ。

例えば前出のジョコ大統領の動画では、口元の動きと音声がシンクロしているかどうかに着目すれば、真偽の判断は必ずしも難しくない。こういったリテラシーの普及のあり方についても、議論が交わされた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)