皇宮警察には不信感?

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つかず離れず「側衛」の難しさ

「あなた方の誰かが話を漏らしたに決まってます」

 秋篠宮妃紀子さまは居並ぶ警官を前に、怒気のこもった声でこう叱責されたという。2008年、まだ1歳だった秋篠宮家の長男・悠仁さまが秋篠宮邸の庭で遊んでいて転び、顔に数針縫うけがを負ったときの逸話だ。

「宮内庁が公表したわけではないのに、けがのことが地上波テレビのニュースで流れたのが原因です。特ダネ扱いでした」

 と警察OBは振り返る。内輪話を暴露されたことが、よほど腹に据えかねたのだろう。皇室と、お護(まも)りする立場の警察の関係は必ずしも良好とは言えない。その理由や経緯を解説したい。

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 皇室警備専門の皇宮警察(皇警)は因果な仕事である。就職が決まると祖父母や曽祖父母、高齢の親戚からは「一族の誇り」と持て囃される名誉な職種。一方で皇室関係者からは昼夜問わないマンマークの護衛がストーカーのように扱われかねない。

皇宮警察には不信感?

 そもそも警察と皇室は距離感が難しく、警官は煩わしい存在だと感じられてしまうケースも多い。個々に強固な信頼関係が築けているのでなければ、嫌悪感や不信感をもたれることもある。紀子さまのエピソードはその一例だ。

 三笠宮家の彬子さまは成年を迎えて01年に臨んだ記者会見で、

「あちら(留学先の英国)では側衛のいない生活をしておりまして、一人歩きがこんなものなのかと最初に感じました」

 と話された。側衛は皇警内で、公私の別なくボディーガードをするSP(セキュリティーポリス)のような存在。ご発言からは四六時中一緒にいることがよく分かる。16年に『週刊女性』は東急東横線の車内で小室圭氏が「マーちゃんの携帯も見せてよ」と秋篠宮家の長女・眞子さんに話しかけるデートシーンを報じたが、この記事にはイヤホンを耳に2人を遠巻きに見守る私服の男女の側衛も登場する。

護衛中に“撒かれた”例も

「彬子さまも眞子さまも、側衛と信頼関係ができた上でのエピソードという印象です。ですが、高円宮家の長女・承子さまは高校時代、六本木周辺で側衛を置いてきぼりにしたそうです。担当が『承子さまに撒かれた』と言っていました。こちらは信頼されてなかったのでしょう」

 と、皇警元幹部は苦笑する。

 1992年、ご結婚前の天皇陛下は後ろの窓が黒い目隠しフィルムで覆われた車の後部座席に布をかぶって潜み、千葉県市川市の宮内庁新浜鴨場で皇后陛下と密会をされた。有名な鴨場デートだ。この時は皇警だけでなく警視庁や千葉県警にも内緒の隠密行動だった。側衛との関係は構築できていたのかもしれないが、お妃選びの取材が加熱していたことから、警察組織のどこからか情報が漏洩する可能性が疑われたと言われている。

 故三笠宮さまも警視庁の警察官に「付きまとうな」と一喝したことがあると伝えられており、「警察は皇族方からどうしても疎まれる運命にあるのです」(前出の警察OB)。

 皇警本部は警察法で設置が規定されている警察庁の附属機関だが、47都道府県警に対し「48番目の警察本部」とも称される。各自治体の警察官は地方公務員の一般司法警察職員。しかし皇警は警察官とは呼ばれず皇宮護衛官で、業務が限定された国家公務員の特別司法警察職員だ。

 定員は47位の鳥取県警を少し下回る1000人程で、制服の見た目は一般警察官とほぼ同じ。大臣ら要人の護衛は警護と言われる一方、皇室の護衛だけは“警衛”と呼ぶ。皇警は天皇陛下と上皇陛下、皇族方のご訪問先で都道府県警とタッグを組む。次年度予算案で皇警の予算は2年連続の減からプラスに転じたが、理由はローンオフェンダー(単独テロ犯)が2022年に安倍晋三元首相を殺害した事件を教訓に警察庁が警衛と警護の強化方針を打ち出したからだ。

 警衛と警護は護衛対象が異なるだけのため、「警衛警護」とワンセットにされる。例えば京都府警には警衛警護課という課がある。元首相殺害事件後、警察庁も警衛と警護に専従する課を警備局内に新設した。同局は皇宮護衛官の人材育成にも着目。これに伴い国土交通省関東地方整備局は老朽化した皇宮警察学校校舎と生徒寮兼体育館を新築し、皇居内で移転させる予定だ。工事は24年度中にも発注される。

 皇警関係者は「反天連(反天皇制運動連絡会)などの左翼は弱体化したが、代わりにローンオフェンダーという新たな脅威が現れた以上、警衛強化は急務」としている。

佳子さまの身辺警備も課題に

「一目、愛子さまのお姿を拝見したかったけど…」

 1月2日に天皇家の長女・愛子さまは新年一般参賀で多くの国民の前に姿をおみせになる予定だったが、元日の能登半島地震の被害を考慮して中止となり、皇居前広場を訪れた多くの人たちは残念がっていた。愛子さまは前日の新年祝賀の儀で美しいティアラ姿を披露されたことで注目を集めていたからなお更だった。

 その愛子さまが立たれるはずだった宮殿のベランダ下で、儀仗服を着て直立不動のまま警戒警備にあたる「お立ち台儀仗」は、皇宮護衛官にとって最も誇り高い任務だ。交代の際は優雅に複数人が規律正しく同じ動きをする。

「国家的行事の“警備の顔”なのです」(前出の皇警関係者)。

 一方、15年5月にネット掲示板「2ちゃんねる」へ秋篠宮家の次女・佳子さまに危害を加える内容の文面を投稿して皇警に不要な警備強化をさせたとして、無職男が偽計業務妨害の疑いで逮捕された。佳子さまは前月に国際基督教大(ICU)へ入学したばかりで、皇警は護衛の人数を通常の2〜3倍に増やしていた。同8月にも佳子さまに危害を加えると予告する封書を学校に送ったとして、威力業務妨害の疑いで会社役員の男が逮捕されている。佳子さまは皇室の中でも目立つ存在だが、

「好意的な声が多かったのが、学習院女子大を中退してICUに入学された頃から様々な声が上がるようになりました」(同)

 19年に卒業する際には、眞子さんの結婚騒動が長期化していたことについて「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」と記した文書を公表。「公より私を優先する考えは皇族として違う気がする」といった声がSNSなどで広がった。

 秋篠宮さまは昨年の誕生日会見で、佳子さまの部屋が宮邸にないことを、

「いずれはこの家から出ていく(中略)部屋をそこに用意すること自体がある意味無駄になるという考えから」

 と理由を述べられた。これも佳子さまが「宮邸があるのにわざわざ同じ赤坂御用地内で一人暮らしをしているのはおかしいのではないか」などと指摘されたため、弁明をされたものだ。

 秋篠宮さまは市民生活に支障を与えたくないとして、車での移動中に警戒警備のため信号を止めることを嫌い、流れに任せて通行させるよう警察側に指示されていることはよく知られる。警察サイドが警備の強化を理由にご指示の撤回を希望した際には「警察の主張は矛盾している。信号を止めれば誰か警備の対象者がこれから通行すると周囲に伝えているのと同じだ」と語られており、お考えの根底には警察不信があるとみられる。

 皇警OBは「眞子さまのご結婚騒動以降、秋篠宮家には“逆風”が吹いています。将来即位される悠仁さまは言うまでもなく、ご結婚を認めた秋篠宮ご夫妻、そして目立つ佳子さまの警衛は重要課題です」とした上で「側衛をはじめ警察は警備が円滑に行えるよう一層の信頼を獲得する努力が必要です」と話している。

朝霞保人(あさか・やすひと)
皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。

デイリー新潮編集部