騒動後にロッテはHPでファンに呼びかけを行った

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「ロッテファンとしてより、人として悲しい」

 阪神が38年ぶり日本一を達成した直後、道頓堀川に“日本一ダイブ”するファンの姿がニュースなどで報じられた。そして、2023年のシーズン中にもファンの行動がクローズアップされる場面が何度となく見られた。その中から、ネットなどで顰蹙を買った残念な事件を振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

【写真】38年ぶりの日本一に沸く阪神ファン! 厳戒態勢が敷かれた道頓堀

 試合後のヒーローインタビューの最中に、心ないファンがビジタースタンドにゴミ袋を投げ入れ、女性ファンの頭部を直撃する事件が起きたのが、4月16日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ対オリックスである。

騒動後にロッテはHPでファンに呼びかけを行った

 この何ともあと味の悪い事件が起きたのは、接戦の末、2対1でオリックスが勝利し、開幕2連勝を記録した宮城大弥のヒーローインタビューが行われている最中だった。

 突然、オリックスファンが陣取るビジタースタンドにゴミ袋が投げ入れられ、女性ファンの頭部を直撃。袋の中には飲食した容器がまとめて入っており、頭部にひどい痛みを感じるほどの衝撃だったという。近くにいたファンによれば、中年男性が球場を出る通路からゴミ袋を投げつけたという目撃情報もあった。周囲から非難の怒号が飛ぶと、男性はそのまま立ち去ったという。

 幸い大きなケガには至らなかったが、女性は2度と同じことが起こらないよう、投げ込まれたゴミ袋を撮影し、SNS上で注意喚起を呼びかけた。

 この投稿は大きな反響を呼び、「あまりにも酷すぎる」「当たった人が大ケガしていたら、どうするつもりだったんだろう」などの意見が相次いだ。

 また、犯人は、ロッテファンかどうかは不明ながら、「試合に負けた腹いせにロッテファンが投げつけたのではないか」との指摘も多く、ロッテファンからも「ロッテファンとしてより、人として悲しい」などの返信が寄せられた。騒動は一夜明けても拡散されつづけ、翌17日のツイッター上で「ロッテファン」がトレンド入り。一人のファンの心ない行動が、そのチームを応援するファン全体に悪いイメージを与えかねないことを改めて痛感させられた。

SNSに投稿したことで炎上騒ぎに

 男性ファンとスタンドに入ったホームランボールを少年ファンと捕り合う行動が非難の的になったのが、5月2日に東京ドームで行われた巨人対ヤクルトだ。

 問題の場面は、1対4の6回無死、山田哲人が戸郷翔征の真ん中143キロ直球をとらえ、左翼席ギリギリに入る本塁打を放った直後だった。

 最前列にいた緑のユニホーム姿の少年とメガネをかけた白いユニホーム姿の男性がホームランボールを捕り合い、最後は男性がボールを手にした。この様子が一部始終放映され、その動画がSNSで拡散されると、「大の大人が子供から奪うなんて大人げない」「スワローズのユニホーム着る資格無し」などの非難が殺到した。

 さらに、その男性がツイッター(現X)上で「山田哲人のホームランボール 捕らせていただきました」とグラウンドをバックに撮影した記念写真とともに投稿したことが、多数のファンの反感を買い、炎上を招いたとみえ、その後、男性はアカウントを削除した。

 だが、騒ぎはそれだけでは収まらなかった。SNSやブログなどで、男性の顔写真や実名、居住地などの個人情報が拡散される事態に発展。これに対し、男性が代理人を通じて、「少年のキャッチしたボールを奪い取った事実はない」と主張すると、今度は「そもそも離席はルール違反では?」と指摘する声が高まり、論争はなかなか下火にならなかった。

 結果論になるが、男性がツイッターに投稿しなければ、ここまで騒ぎが拡大することはなかったかもしれない。ネット社会の怖さを再認識させられた。

「気合を入れろ、ライオンズ!」

 打席に入る選手に対し、スタンドのファンから異例の“働けコール”が起きたのが、6月14日に東京ドームで行われた巨人対西武だった。

 3連敗中と元気のない西武は、この日も1対1の3回裏に岡本和真の左越えソロなどで3点を勝ち越され、反撃が期待された4回表の攻撃も、先頭の平沼翔太が3球で遊ゴロに倒れて1死となった。

 そして、7番・金子侑司が打席に入り、カウント1-1となると、左翼席を埋めた西武ファンから「働け!働け!金子!」の“働けコール”が沸き起こった。

 金子は開幕から27試合で打率.160、0本塁打、1打点と極度の打撃不振に苦しんでいたが、プロ11年目、33歳の選手に対して「働け!」はいかがなものか。

 打席の金子は、特に反応することはなかったが、1-1から2球続けて戸郷翔征の変化球を空振りして三振に倒れた。次打者・古賀悠斗も初球打ちの右飛に倒れ、あっけなく攻撃が終了すると、一部のファンからブーイングまで起きた。

 さらに5回の攻撃中にも「気合を入れろ、ライオンズ!」という過激な檄が飛んだ。チームが最下位に低迷し、フラストレーションが溜まる気持ちはわからないでもないが、明らかにやってはいけない一線を踏み越えていた。

 ネット上でも、この日の異様な応援に対し、「あれは応援ではない」「レフトスタンドにいましたがあれ聞いてファンとして恥ずかしくて試合途中で帰った」などの声が相次いだ。

「西武ライオンズ応援団」も試合後にツイッターを更新し、「今日の応援のコールに関してまず謝罪したいと思います。応援団としてみなさんを引っ張っていく上で最悪でみっともないコールをしたことをお詫び申し上げます。金子選手に対しても無礼なコールだったと思います」と謝罪した。

 そして、“働けコール”から一夜明けた翌15日の巨人戦、金子は2回に長谷川信哉との連続犠飛で先制点に貢献する。攻撃終了後、レフトの守備位置に就いた金子にスタンドから「金子!金子!」のエールが贈られ、金子も帽子を取って一礼。プレーする選手と応援するファンの気持ちがようやくひとつになった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部