能登地方で震度7の大地震 石川県輪島市(写真:AP/アフロ)

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甚大な被害を出した能登半島地震。まだ多くの人々が救出を待っているさなか、被災者の不幸を食い物にする悪徳業者たちの暗躍が始まっている。

消費者庁は2024年1月3、4日、ウェブサイト上に「災害に便乗した悪質商法に注意!」「震災に関する義援金詐欺に御注意ください」という注意喚起のリポートを発表した。

「火事場泥棒」はいったい、どんな手口を使うのか。調査担当者に聞いた。

保険が使えるとだまされ、さらに高額の保険代行料まで

消費者庁によると、まず義援金の詐欺とは――。過去の震災時の手口をみると、こんなケースが代表的だ。

●「○○市役所からです。義援金を募っています。あとから市の職員が訪問します」と電話があった。
●「災害救済のために名産品を代引配達で送るので協力してほしい」と電話があった。
●災害復興支援団体を名乗り「震災で苦しんでいる人に義援金をお願いします」とのメールが届いた。
●災害募金のため、投資のツールを提供するという募金に応募したが全く儲からない。

などといったケースが多い。

消費者庁では、こうアドバイスしている。

「公的機関が、各家庭に電話などで義援金を求めることは考えられない。当該公的機関に確認しよう」「募っている団体の活動状況や使途をよく確認し、納得したうえで義援金を寄付しよう」「口座に振り込む場合は、振込先の名義をよく確認する」

もう1つ多いのが、被災地を業者が訪問し、不必要な住宅修理を強引に契約させたり、住宅修繕のために高額の保険金請求代行のコンサルタント料を取ったりするケースだ。代表的な事例は――。

●実際には壊れていないのに「屋根の瓦がずれている。保険で修理できる」と契約させられた。しかし、保険金がおりないうえ、途中で解約しようとすると、高額の解約料を請求された。
●「壊れた家屋の修繕は、火災保険が使えるので負担はない」「無料で保険の申請の代行をする」と勧誘されて契約。高額のコンサルタント料を取られたうえ、火災保険が利かなかった。

といった悪質なケースが多い。

消費者庁では、こうアドバイスする。

「保険の請求は、加入者自身で行うことが基本ルール。代行すると言われたら、詐欺を疑おう」「屋根などが壊れていると言われたら、他の業者にも見てもらい、見積もりをとる」

もうすでに周辺の被災地に入り込んでいる

J‐CASTニュースBiz編集部は、消費者庁消費者政策課の担当者の話を聞いた。

――今回、能登半島地震発生直後に、すばやく「災害に便乗した悪徳商法」と「震災に関する義援金詐欺」の2つの注意勧告を消費者庁のウェブサイトに載せましたが、もう被害相談が寄せられているのですか。

担当者 地震発生から4日たった2024年1月4日現在、まだ具体的には聞いておりません。しかし、過去の例では大阪府北部地震と北海道胆振東部地震などがあった2018年には、合計で約7500件もの相談が寄せられるなど、地震直後には必ず悪徳業者が暗躍しますから、先手を打って事前の防止策を講じました。

――義援金詐欺では、市役所などをかたる電話詐欺や、災害復興支援団体をかたるメール詐欺の例などを注意喚起の対象にしていますが、よく震災直後には街頭募金も盛んに行われています。街頭募金は心配ないのでしょうか。

担当者 どういう団体が行っているのか、不安はあります。しかし、電話詐欺やメール詐欺と違って、どんな人物が活動を行っているのか、相手の顔が見えます。寄付する時に、お金がどんな使われ方をするのか、しっかり相手に聞くことができますから、消費者が納得して自分の責任で寄付することができます。

――住宅の修繕をめぐる悪徳商法ですが、被災地でよく聞くのは、被害の実態調査のために現地入りする役所の職員よりも先に、悪徳業者がやって来るという話です。今回の地震でも暗躍が予想されますが、どう対応しますか。

担当者 過去の例から、悪徳業者が大挙して被災地に乗り込んでくるという話は、私たちもよく耳にします。ただ、私たちが今、特に注意喚起したいのは震度7で甚大な被害を受けた石川県よりも、震度6弱や5くらいだった周辺の新潟県や富山県などの人々です。

住宅の被害が比較的軽くすみ、悪徳業者の修繕作業の対象になりそうな家屋が多い地域には、すでに多くの業者が入り込んでいる可能性があります。彼らの手口は、実際には保険金がおりないのに、「保険金で直すことができる、その保険金請求代行をするからコンサルタント料を寄こせ」というものが代表的です。

今後、日本損害保険協会と連携をとって、対策を進めていきます。被災地周辺の人々は、くれぐれも業者の口車に惑わされずに、納得したうえで契約を結んでください。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)