長井秀和氏

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 創価学会の池田大作名誉会長の死去が学会によって発表されたのは2023年11月18日のことだった。享年95。

 その存在感の大きさは岸田首相がすぐさま「深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」とX上で哀悼の意を表明した点からもわかるだろう。さらに首相が弔問にも訪れたことは、かなりの物議を醸した。

 単なる巨大宗教団体のトップというだけではなく、国政にも大きな影響を与える立場にあったというのは衆目の一致するところだろう。彼らの公式発表をもとに推計すれば、日本の6〜7世帯に1世帯の割合で創価学会が信仰されていることになるのだ。また、創価学会が支持母体である公明党が連立与党となって久しいのは言うまでもない。

長井秀和氏

 ここまでの巨大宗教団体になった要因については、過去、さまざまな分析がなされている。池田名誉会長のカリスマ性、会員たちの熱心な「折伏」、そして数多くの有名人信者……。

 芸能人が「広告塔」となり、信者獲得の推進力となるのはよく見られる現象だが、国内において創価学会ほど数多くの人気者の心をつかんでいる宗教団体はそう多くない。

 そして創価学会の場合、政権与党にまで影響を与えうる存在だからこそ、こうした有名信者については長らく強い関心を集めてきた。

 彼らと池田名誉会長とはどのような関係性だったのか。そこに問題はなかったか。

 元信者であり、お笑いタレントで市議会議員の長井秀和氏が自身の経験をもとに赤裸々に語ってくれた。

(「週刊新潮」2023年11月30日号掲載記事に加筆・修正をしました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)

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「芸人としてブレイクした頃、氷川きよし君やタッキーこと滝沢秀明君と三人で、池田先生に面会しました」

 とは、「間違いないっ!」のギャグでブレイクしたお笑いタレントで、西東京市議を務める長井秀和氏(53)。両親共に学会員の家庭に生まれ、自身も学会の系列校・創価学園の小中高を経て創価大学まで通ったエリート信者だったが、2012年に学会を脱会した。

「05年1月、八王子にある東京牧口記念会館で開かれた本部幹部会で、集まった千人ほどの学会員の前で池田先生から激励を受ける機会がありました。タッキーはNHK大河ドラマ『義経』の主演に抜てきされた頃でしたから、歴史モノ好きの池田先生は壇上でうれしそうにしていました。タッキーといえば、あのジャニーさんにも気に入られて、それに池田大作でしょ。クセの強い昭和のフィクサーたちから寵愛を受けていて、すごいなと思いましたよ」

“なんでメモを取っているんですか”

 会場で隣に座った氷川からは叱られてしまった際の逸話を、長井氏が続けて話す。

「幹部会ではメモを取るのは禁止されていましたが、出席者は後日、幹部会に出られなかった人のために、池田先生がどんな話をしていたかなどを報告しないといけない決まり。それでこっそり話の内容を記録しようと紙にペンを走らせていたところ、氷川君にニラまれて“なんでメモを取っているんですか”とたしなめられたんです。とっさに私は“晩ごはんの献立を書いていた”とうそをついたんですが、氷川君からは“そんなわけないでしょ”ってすごく怒られました」

 心酔した様子の氷川は、涙ぐみながら壇上の池田氏を見つめていたそうだが、長井氏によればメモ禁止にはこんな理由があるとか。

「池田先生って結構、放言しちゃうタイプなんですよ。実際に私が聞いた話で言えば、“(第2代会長の)戸田城聖の愛人の面倒を見るのが大変だった”とか平気で皆の前で話しちゃいますし、1990年代初頭に細川内閣で公明党出身の閣僚が誕生した時も、総理が発表する前の幹部会で“ウチから今度、石田(幸四郎)と神崎(武法)と坂口(力)が大臣になるんだぞ”という具合に人事をバラしたことがあって、対外的に問題となったと聞きました」

「相当暇だったのでは……」

 学会員にとっては池田氏の貴重な肉声が聞ける場だったようだが、芸能界の流行も積極的に“放言”に取り込んでいた様子がうかがえる。

「私がテレビに出始めた頃から、池田先生が本部幹部会でやたらと『間違いないっ!』と連呼するようになったと聞きました。よく先生の口癖をまねしたのではと言われるんですが、私の方が先なんです」

 そう話す長井氏自身は、池田氏からどんな言葉を投げかけられたのだろうか。

「池田先生はテレビをよく観ている人で、当時、私が出演していたテレビ東京系の『朝は楽しく!』という視聴率が1%あるかないかの番組の内容まで把握していたのには、驚くというかあきれてしまいました。学会員なら朝の勤行で忙しい時間に放送されていたので、相当暇だったのでは……。その番組で、“私立小学校に通っていたので、地元で長井のことを知っている人はいない”と言われていたことを気にかけてくれたのか、池田先生から“長井君は地元に知り合いがいないのに、創価小で頑張ってきて、芸能界でも負けずにやっていて素晴らしい”というメッセージが、ようかんなどのお菓子付きで学会の芸術部を通して届きました」

財務の励みに

 芸術部とは、学会員である芸能人や文化人が所属する組織で、信者勧誘や「F票」といわれる公明党候補の選挙応援を依頼した知人の獲得で、抜群の威力を発揮することで知られている。

「学会で“3モト”と呼ばれる芸能人が、久“本”雅美、岸“本”加世子、山“本”リンダの三人で、選挙応援の際によく動いていた印象です。日頃から芸術部に所属するメンバーは『折伏(しゃくぶく)セミナー』という会員獲得の活動にも駆り出されますが、外の人を勧誘する常套句として“あの人も学会なんだよ”と話題づくりに使えますからね」(同)

 さらに芸術部のメンバーは、学会内で「集金マシーン」として機能していた一面もある、と長井氏は話す。

「たとえば“久本さんが何千万円”とか、どれだけ芸能人が財務(献金)でカネを出したかという話がよく流布されるんです。芸能人なら3ケタ、要は何百万円は当たり前で、中には4ケタの人もいる。額が多いほど信仰の証とされますが、それだけ献金したから功徳、御利益がある。だからテレビで活躍できているんだという話にされて、一般の学会員たちにとっても財務の励みになっているわけです」

「3千円のお小遣い」

 広告塔として散々利用された挙句、献金まで求められる芸能人たちにも、当然ながらメリットは大きい。

 再び長井氏に聞くと、

「学会は全国にネットワークのある互助組織という側面があります。リサイタルを催す際、学会内で“長井というタレントは信心がしっかりしている”と知られていればチケットも買ってもらえますし、裏方、制作陣にも学会員は大勢いますから、舞台やドラマのキャスティングで露骨に主役級は割り振ってもらえずとも、4、5番手くらいならネジ込んでもらいやすくなると思います」

 まさに「現世利益」を会員が相互に享受できる仕組みだが、それを構築した池田氏について忘れられない逸話があると言う。

「私は東京の小平市にある創価学園の小学校を卒業しましたが、在学中に40〜50回は池田先生に会っていました。運動会や芋ほりなどの学校行事のみならず、下校時にフラッと池田先生がやってくることもあって、校内放送のアナウンスが流れるので分かる。職員室に行くと池田先生がいて、“お母さんによろしくね”“『走れメロス』とか読んで勉強するんだよ”とか言いながら、3千円のお小遣いをくれるんです」

 さすがに全校生徒への大盤振る舞いはなかったようだが、勝手知ったる子供たちが池田氏の来校を聞きつけ10人、15人くらいの単位で集まってきたという。

「子供たちの間でも、“今日は来るんじゃないか”という予感があると、すぐに下校しないで待っている生徒もいましたが、執行部が子供に現金を配るのはまずいとなったみたいで、私が高学年に上がる時にはもらえなくなりましたね」

人脈自慢

 カネが配れなくなっても、池田氏は人脈自慢を繰り広げて虚勢を張っていた。

「池田先生は小学生を前に“日中友好のため要人を日本に連れてきた”とよく話していて、教師たちが“池田先生は世界で認められた人だから、海外からも偉い人が来る”と補足していました。それが誰だったか覚えていないレベルですけど、私が学校に通っていた80年代は世間の池田批判が激しくて、学会内では“世界のイケダ”を学会員たちに刷り込ませようと必死になっていました。昔は三船敏郎などの大物俳優もいましたが、私が物心ついた頃の池田先生は、人脈自慢で世界の要人をダシに使ったり、どこそこの国から勲章をもらった類の話をすることが多かった印象です」

 生前ノーベル平和賞を狙っていたとされる池田氏が、広報活動の謳い文句に〈キング(牧師)、ガンジー、イケダ〉と、世界的な偉人と自らを並べて盛んに連呼していた時期と重なる。

 最後に長井氏はこう話す。

「現世で池田先生は煩悩にまつわることはいろいろやり尽くしたんじゃないかという気がします。私個人としては学会のことで苦しむ被害者をたくさん知っているので、素直には肯定できない気分ですね」

 確かに学会でも無理な献金などで家庭が崩壊したケースは少なくないとされる。池田氏の死を契機に、広告塔となった芸能人らも自らを省みる必要があろう。

 奇しくも、というべきか、池田名誉会長が亡くなった11月の末から12月下旬にかけて創価学会は「財務」の季節を迎えることになっている。要は教団への寄付をつのるタイミングだということだ。金額の詳細は明かされていないが、一説には最盛期で数千億円、現在でも1千億円ほどは集まるとか。

 カリスマの死去がどのように影響するか。この点にも今後注目が集まっていくことになりそうだ。

デイリー新潮編集部