大みそかの「終夜運転」は過去のものになりつつある!?

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コロナ禍も明けて、今年(2023年)はマスク着用を気にしなくていい大みそかを迎える。張り切って年越しのカウントダウンイベントや、年明けの瞬間には初詣に行く人も多いことだろう。

だが、ここで気を付けなければならないのは「終電」だ。

今年の大みそかから元日早朝にかけての、終夜運転の状況はどうか。J-CASTニュースBiz編集部は、利用者の多い首都圏の状況を調査した。

コロナ前まではよくあった首都圏の終夜運転

今年、終夜運転を実施するのは、首都圏ではJR東日本、京成電鉄、京王電鉄、多摩都市モノレール、伊豆箱根鉄道。これらの鉄道会社は12月までに、大みそかから元日早朝にかけての終夜運転の実施を発表している。この沿線に住む人は、大みそかに出歩いても、電車で帰ってこれそうだ。

ところが、である。それ以外の首都圏の主要鉄道会社は、終夜運転を行わないことを発表しているところが多数見受けられる状況だ。具体的には、東京メトロ、都営地下鉄、京浜急行、小田急電鉄、東急電鉄、東武鉄道、西武鉄道は、2023年の大みそかの終夜運転を実施しないという。

なお、一部の鉄道会社は、終電の繰り下げ、臨時列車による対応がある(表参照)。

いまは終夜運転を実施しないほうが多いようなのだ。では、これらの鉄道会社が最後に終夜運転を行ったのはいつまでなのか。

これについて、J-CASTニュースBiz編集部は取材を進めた。その結果、東京メトロと都営地下鉄は2021年まで。京浜急行、小田急電鉄、東急電鉄、東武鉄道は2019年まで。西武鉄道は2007年までであることがわかった。

これらを見ると、コロナの流行が始まる2020年の前年にあたる2019年(の大みそかから元日早朝にかけて)までは、比較的多くの鉄道会社が終夜運転を実施していたことがわかる。

なお、2020年については、同年12月16日に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の各知事が大みそかの終夜運転を中止するよう要請し、首都圏の鉄道会社が終夜運転を行わなかった事情がある。

終夜運転には、人件費や動力費がかかる

このような首都圏の終夜運転の状況について、鉄道に詳しいライターの小林拓矢氏は「終夜運転自体は、コロナ禍前から運行の本数が減っており、縮小気味でした」と明かす。

そのうえで、「(一時に比べて)カウントダウンイベントが行われなくなったという理由もありそうです。また、高齢化により、真夜中に無理して寺社仏閣に行こうとする人も減っています」と指摘した。そして、こう続ける。

「沿線に寺社仏閣のある鉄道としては高尾山薬王院のある京王電鉄と、成田山新勝寺のある京成電鉄が有名です。しかし、これらの鉄道もコロナ禍以前に比べて、終夜運転は運行の本数が減っており、やはり縮小気味です。多くの人は、元日の昼間に初詣に行くようになっているのではないでしょうか」

一方で、昨今の物価高も影響しているのではないか、と小林氏はみる。「鉄道会社としても、終夜運転には人件費や動力費(電気代)がかかります」。そのため、「終夜運転は採算が合わないものになっています」というわけだ。

ちなみに、西武鉄道だけ早い時期から終夜運転を行っていない理由について、小林氏は「おそらく沿線にある大きな(集客力のある)寺社仏閣は、川越市にある喜多院くらいしかないからかもしれない」とした。

(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)