目薬をさしたときについやってしまいがちなあの動作は、実は間違っている?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

目薬をさして「目をパチパチ」させるのは、多くの人が行っている動作でしょう。しかし、やればやるほど、眼精疲労を改善する効果が低下してしまうのは意外と知られていません。

眼精疲労は、視力の低下や頭痛などの原因にもなるやっかいな症状です。眼精疲労を低減し、視力を回復する正しい方法を『眼科医が考案 1日1分読むだけで目がよくなるマジカルフレーズ』より、一部抜粋、再構成のうえお届けします。

間違いだらけの「目薬のさし方」

あなたは、普段から「目のケア」を実践しているでしょうか。

一般的に広く行われて、かつ多くの人が間違っているのが「目薬のさし方」です。

目薬をさした後、薬を目になじませようと、まぶたをパチパチしていませんか? 実は、これは逆効果なのです。まばたきによって目から鼻に薬が流れてしまうので、目に薬が留まらず、薬の効果が薄れてしまいます。目頭には、眼点とよばれる涙の排出口があり、鼻へ涙が流れてしまうのです。その後、鼻から口へと目薬が移るので、人によっては目薬をさした後に、苦みを感じる人もいます。

目をパチパチさせてはいけない理由はもう一つあります。目をパチパチさせると自然に涙が分泌されるので、涙で目薬が薄まってしまい効果も出にくくなるのです。

目薬をさした後は、まばたきをせずに、1分間ほど軽く目頭を押さえるとよいでしょう。目頭を押さえることで、目から鼻へ目薬が流れることを防げます。

他にも、誤った方法として以下のようなものが挙げられます。いずれも、意識せずにやってしまいがちなやり方なので、注意が必要です。

●指定の量より多めにさす
 たくさんさしても、効果は変わりません。1滴たらせば問題ありません。

●目尻に容器の先を当てて点眼する
 容器の中に雑菌が入る原因になります

●点眼後に上を向いて、目のまわりの液を目に入れようとする
 目のまわりの汚れや花粉、雑菌が目に入る

防腐剤が入っている目薬は1日5回以上ささない

目が疲れたと感じたときに、メントール配合の目薬をさす人がいます。メントールのスッとした清涼感が気持ちよく、クセになっている人もいるでしょう。しかし、メントールには眼精疲労を癒す効果は期待できません。

眼精疲労が気になったら、末梢神経の機能を高め、目の組織の新陳代謝を促す「ビタミンB6」か、内眼筋や末梢神経に作用してピント調節機能を整える「ビタミンB」が配合された目薬がおすすめです。

目の乾燥が気になるときには、涙の成分に近い「ドライアイ用」の目薬をさすといいでしょう。

ただし、市販の目薬には防腐剤が入っているため、あまり頻繁に使うと目がかぶれてしまう人もいます。

目薬は、「使えば使うほど、目にいい」ものではないので、市販の目薬の使用頻度は1日に3〜4回程度にしましょう。

処方薬の中には防腐剤が入っていないものがあり、医師の指示で1日に4回以上でも問題ありません。防腐剤を使っていないぶん、使用期限が短かったり、保存方法が特別だったりするので、処方薬の使い方は医師の指示に従ってください。

目薬などで眼精疲労を改善させることは、単に目の疲れが取れてスッキリするといった事だけにとどまりません。眼精疲労は視力低下の大きな要因でもあるのです。

2023年に文部科学省が発表したデータによると、小学校6年生の約半分が視力1.0以下というから驚きです。中学生だとその割合は6割、高校生だと7割にのぼることが判明しています。その主な要因と考えられているのが「スマートフォンの見すぎ」です。

眼精疲労の改善が急務である本当の理由

現代社会は、パソコンやスマホ、タブレット端末を使わなければ生活できなくなっています。大人も子どもも事情は同じです。仕事や勉強、学校に提出する宿題だけでなく、買い物をしたり、レストランで注文する際にもタブレットを使います。人類の歴史のなかで、こんなに近くばかり見て暮らすライフスタイルはかつてありませんでした。

その結果、子どもだけではなく、幅広い年齢層で視力の悪化が懸念されています。

長時間、近くを見続けると具体的にどんな負荷がかかるのでしょうか。ものを「見る」ためには、ピントを調節する「内眼筋」と、眼球を見るものの方向に向ける「外眼筋」という筋肉を使っています。

スマホやパソコンなど、近くのものばかりを見ていると内眼筋の緊張が続き、血流が悪化。筋肉は固くなり近くを見た状態で固定され、遠くを見るときにピント調節ができなくなります。また、ずっと同じ画面を見続けるので外眼筋も固定されます。

その結果、「眼の筋肉」に起きるのが眼精疲労、すなわち「目のコリ」です。放置していると、近視や老眼を招いてしまいます。

人はものを見るときに水晶体(目のレンズ)だけでなく眼球を動かして焦点を合わせています。そのため、外眼筋の動きが悪ければ、ピントは合いづらくなります。また、外眼筋のコリが続くと、眼球への血流も滞るため、目の働きが衰えます。外眼筋のコリや疲れを解消しなければ、「目がよく」ならないのです。

「低下した視力は戻らない」と思い込んでいる人もいるかもしれません。しかし回復が可能なケースも多いのです。目が過労状態でヘロヘロになり、ピント調節がうまくできなくなっているだけだからです。「目が悪くなった」原因である「目のコリ」をほぐせばいいのです。

肩がこったり、腕の筋肉が疲れたら、どうしますか? ストレッチやマッサージでコリやこわばりをほぐしますよね。同じことを目の筋肉に行うのが、私が開発した「マジカルフレーズ」です。

マジカルフレーズとは、読むだけで目がよくなるように設計された特別な文章です。リラックスして意識的にゆっくりと目を動かしながら読むことで、眼筋をほぐし、血流をよくして、酸素の循環を改善し、目のコンディションを整えます。

世の中に数ある「目のトレーニング」のほとんどは、眼筋を鍛える方法をうたっています。対して、マジカルフレーズでは「目のコリをほぐす」「疲れを癒す」方法をご提案しています。前者が「目の筋トレ」であれば、後者は「目のヨガ」にあたるイメージです。


(画像:『眼科医が考案 1日1分読むだけで目がよくなるマジカルフレーズ』より)

眼球を動かす「目のヨガ」で眼精疲労が改善する

マジカルフレーズは、具体的には、文章を普段と違う方向に読みます。

通常は、縦組みの文章では上から下、横組みの文章であれば左から右に読みます。私たちの目は、その読み方に慣れています。

それをあえて、下から上に読んだり、右から左に読んだり、斜めに読んだり、さまざまな方向に読むことで、普段とは違う力が眼筋に加わり、内眼筋、外眼筋ともにストレッチされ、眼筋の疲労が解きほぐされていくのです。時間も取らず、寝る前の1分間、用意された文章を読むだけで十分に効果があります。


眼精疲労が原因で視力が悪化したのであれば、眼精疲労が改善すれば視力は回復へと向かいます。事実、マジカルフレーズの効果を確認するため、20〜50代のモニターにマジカルフレーズメソッドを実践してもらったところ、早い人だと、モニター開始2週間で、0.5→1.0へ回復しました。近視、老眼どちらにも効果があります。

また、読む文章も坂本龍馬やエジソンなど、歴史上の偉人の名言です。飽きずに続けられるという意味もありますが、心に響く名言は副交感神経を優位にするので、目にもいい影響があるのです。

これから先の日本は、目にとってますます過酷な環境になることが予想されます。放置しておくと、若くして近視が進むだけでなく、いわゆる「スマホ老眼」も併発し、視力がますます悪化してしまいます。そうなるまえに、できるだけ目のケアをおすすめします。

目薬に気を配るだけでなく、マジカルフレーズも併せて実践していただけたら幸いです。

(松岡 俊行 : 医学博士、眼科専門医)