高速バスが乗り入れるバスタ新宿

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バスの運転手不足が深刻になるにつれて、全国の高速バス路線で廃止が相次いでいる。2023年11月5日に岩手県交通が「水沢・金ヶ崎・北上―仙台線」を、ジェイアール四国バスは11月30日に四国と北陸を結ぶ「北陸ドリーム四国号」を廃止した。

近い未来、バスドライバー不足の影響は、旅行や帰省で人気のある「大阪―東京間」や「博多―東京間」といった大都市を結ぶ路線の運行にも及ぶのだろうか。

「ドル箱」中距離路線でも運休

バス運転手は、大型二種免許が必要だ。警察庁が2023年4月6日に発表した「令和4年度版 運転免許統計」によると、教習所で同免許講習を卒業した人は、2013年が1万1747人だったのに対し、22年は5705人。10年ほどでおよそ半減している。

2024年は自動車運転業務について、残業時間の上限規制が行われる。この影響で生じる、いわゆる「2024年問題」も、バスドライバー減に拍車をかけそうだ。労働規制によってバス運転手の年間労働時間が3300時間に引き下げられ、業界団体では現行のダイヤでは、残業規制に対応可能な人繰りが不可能になる可能性が示されている。

高速バスマーケティング研究所の成定竜一氏に取材した。まず、長距離路線は「おおむね東京〜名古屋以西の区間」とし、「交替運転手を必要とすることから、人件費が高くなり、『ドル箱』ではなく『もうからない路線』」と指摘する。またこれらには、規制緩和後に誕生した小規模で歴史の浅い事業者が参入してきているという。「特に東京〜大阪間は競争が激しく、値下げしないと集客できない『レッド・オーシャン』となっています」。

成定氏によると、「ドル箱路線」と呼ばれるのは片道2〜4時間程度の中距離路線だ。具体的には東京と山梨県・長野県、大阪と徳島県・香川県、福岡と九州各県を結ぶ路線だという。高速バス業界全体でこれらの短・中距離路線が8割以上のボリュームを占める。

「中距離の昼行路線でも、乗務員不足の影響を結構受けています。一部の路線で運休(ダイヤの間引き)、同時にほとんどの路線で、続行便(2号車、3号車)設定不足は深刻です。週末などでは「満席でお断り」が多発しています」

「バタバタ倒産」はないが利用者に影響は出そう

2024年以降、ドライバー不足により運行会社が倒産するケースは増えるのか。成定氏は「2025年、26年にいきなりバタバタと倒産が始まることはないかと思います」と答えた。

ただし、「東京への高速バスと地元の路線バスを運行する会社が、地域路線の運行に人材を割き、高速バス事業が手薄になって減便やダイヤの間引きを行う可能性は十分にあります」

前述の通り、東京―大阪便のような路線は、低価格で勝負してきた小規模バス会社が参入している。こうした企業は運転手の待遇を上げられず、乗客が多くても「2号車、3号車の続行便の運行が厳しくなることはあるでしょう」と成定氏。

このため運転手不足の影響として、利用者が繁忙期にバスチケットが取れない、バス運賃が高くなる、といった形で影響が出ると指摘する。実際にコロナ前と現在を比べても、東京―大阪間は1割以上値上がりしていると成定氏は話した。