フリーランスで働く際に必要なことや、気をつけるべきこととは(写真:zak/PIXTA)

特定の組織に属さず、個人がその能力やスキルで仕事を請け負う「フリーランス」という働き方が、日本にも徐々に定着し始めています。

フリーランスとして活躍できる職種はますます増加していますが、そのなかでも、今注目なのがフリーランスコンサルタント(フリーコンサル)です。本稿では、コンサル業界を熟知する浴野真志氏、高倉諒一氏が上梓した新刊『フリーランスコンサルタントの教科書』より、フリーコンサルの実態について解説します。

フリーランスには、会社の看板もなければ、上司や同僚もいません。基本的に自分の裁量で仕事を進めることができますが、そのぶん、個人で負わなければいけない責任も大きくなります。

そのような状況の中で、持続的に案件を獲得できるかどうかは、あなた「個人」としての信用力にかかっています。コンサルティングファームやエンドクライアント、案件マッチングサービスの担当者などからの信用を蓄積していくことがとても重要になるのです。

期待に応える成果を出す

では、個人としての信用を増やしていくには何が必要となるのでしょうか。最も大事なことは、求められるタスクや役割を正確に理解して、クライアントやチームメンバーの期待に応えることでしょう。

至極当たり前のことと思われるでしょうが、すべてのフリーコンサルタントができているかというと、そうではありません。自分のタスクや役割への理解が足りないまま、業務を進めてしまう人が多いからです。

例えば、「1〜2日で、最近の自動車業界についてトレンド調査をしてほしい」と依頼されたときに、ただ「わかりました」と引き受けて、自分なりの理解・やり方で進めてしまうと、役に立たない成果物しか出せません。

「その目的は何か」「国内のトレンドでよいのか」「期間内にどの程度まで掘り下げればよいか」など、まずは認識のすり合わせをしなければ、相手の期待には応えられないでしょう。

上記はかなり分かりやすい例ですが、どんな仕事においても、チーム内、もしくはエンドクライアントと常にコミュニケーションをとって、その都度、合意を得ながら業務を進めていくことが求められます。

このような仕事の進め方は、フリーコンサルタントに限ったことではないでしょう。ただし、独立した途端に、言われたことを右から左へ流すような仕事の仕方をするようになる人がいるのも事実です。

フリーコンサルタントのなかには「自社の事業がメインであり、コンサルティング業はあくまでサブ」という考えの方も多くいるので、その気持ちもわからなくはありません。

しかしながら、フリーランスだろうがファームに所属していようが、クライアントがコンサルタントに期待することは変わりません。常に、期待される成果を出すことを意識して能動的に考え、動くことを意識してほしいです。

フリーランスにも「報連相」は重要

さらにチームで仕事を進めるうえで、意識して欲しいのが「情報共有」です。「報連相」と言い換えてもいいでしょう。

コンサルティング業務は基本的にチームで行うことが多いですが、フリーコンサルタントは意識していないと孤立しがちです。

担当業務を1人黙々とこなすだけでは、チームメンバーには「今、何を、どのくらい進めているのか」が伝わらず、ブラックボックス化してしまいます。すると、実際には問題なく業務を進めていたとしても、それは伝わらないばかりか、「任せていて大丈夫だろうか」と、不安や心配を増長させることになります。

初めて仕事をするクライアントであれば、あなたは「正体不明の誰か」でしかないのですから、なおさらです。

さらに、何かトラブルが発生したとき、あるいは発生しかけたときには、対処が遅れてチーム全体の業務を遅延させたり、質を低下させたりするリスクがあります。

例えば、よくあるのが「決められた納期に遅れてしまう」というケースです。ファームに所属していれば、進捗管理を行っている上司が気づいて、期限を延ばして貰えるようにクライアントと交渉してくれたり、同僚が手を貸してくれたり、すぐに対応策が施されます。

その一方でフリーコンサルタントの場合、自分から意識的にSOSを出さなければ、状況はどんどん悪くなるだけです。進捗が滞った時点ですぐに「できれば1人、お手伝いくださる方を貸していただけないでしょうか」「期限をもう少し延ばすことことは可能でしょうか」と、自ら状況を説明したうえで解決案を提示する必要があります。

小まめな「報連相」は、トラブルの予防だけでなく、質の高い仕事をするためにも必要です。

クライアントの課題に対するアウトプットを作成する場合も、上司のフィードバックを受けたり、チームメンバーとさまざまな意見をぶつけ合うことで、その内容はブラッシュアップされます。「三人寄れば文殊の知恵」といわれるように、チームだからこそ、多角的な視点から最適な課題解決策を導き出すことができます。

その点、フリーランスになると、フィードバックをもらえる機会が圧倒的に減ります。そのぶん、“3人分”の力や視点を身につけるべきともいえますが、それよりも確実にアウトプットの質を高めるには、意識的に第三者の意見やアイデアを取り入れることが重要でしょう。

「私は都心部の客数が絶対的に足りない点が最大の課題だと思っているのですが、○○さんのご意見はどうですか」「商品の品質が悪いのではなく、あくまで認知が足りていないことが最大の課題だと思っていますが、いかがでしょうか」と、自らチームメンバーやクライアントに対してフィードバックを求め、壁打ちをしていくことを心がけるのです。

「個人で責任を負う」というのは、「すべてを1人で抱え込む」ということではありません。フリーランスだからこその第三者的な視点を持ちつつも、チームプレーを意識しましょう。

結局のところ、このような密なコミュニケーションが質の高い仕事と信頼関係を作ります。

指名で案件獲得も可能に

プロフェッショナルとして、またプロジェクトチームの一員として、クライアントの期待に応える働きをすれば、信用力は確実に蓄積されていきます。結果、「ぜひあなたに、次の案件もお願いしたい」と指名で仕事を受注できる機会も増えるでしょう。

コンサルティングファーム内の横のつながりによって、直接仕事をしたことがない他の担当者が、社内での評判を耳にして別案件で追加発注してくれるケースもよく聞きます。

1〜2社、指名で案件を依頼してくれるクライアントがいる人は、途切れることなく仕事が回っている印象です。また、そういうクライアントとは、既に信頼関係ができているので、さまざまな交渉がしやすいというメリットもあります。

過去のデリバリーを評価してくれているからこそ、例えば「少し稼働率を下げたい」「単価を上げてほしい」といった要望にも耳を傾けてくれる可能性が高いでしょう。

契約書にない働き方はできない

フリーランスは、組織に所属していないぶん、自由度が高いという印象がありますが、それは半分正解で、半分は間違いです。

たしかに、仕事の分野や稼働率、働く場所など、自分が考える条件に合った案件を選べる点では、自由な働き方ができるといえるでしょう。しかしそれは、自分の思い通りに働けるということではありません。

契約を交わした後は、その内容に沿った働き方が求められるからです。

例えば、「稼働率100%」という契約であれば、基本的に、平日の日中(目安として8時間)は、すべてその案件の業務に割くことをコミットしたことになります。

それにもかかわらず、「その日は半日しか時間がとれません」「その時間は自分の事業の関係で、ミーティングに参加できません」などということは許されません。いずれも「当初に聞いていた話とは違う」となってしまいます。

土曜日・日曜日・祝日が休みの週休2日制をクライアントが採用している場合は、それ以外の日に休むことは難しいと考えたほうがよいです。契約書に記載されていない日に休暇を取ることはできないと考えましょう。


もちろん、フリーランスには有給休暇もありません。有給休暇の取得は、企業と雇用関係があって給与が支払われている人に認められた権利だからです。

フリーコンサルタントは、契約した稼働率に対して報酬が支払われているので、予定以上に休めば、報酬も減額されてしまう可能性があります。

そのため、病気などのやむを得ない事情で休んだ場合でも、その休んだ日数分の報酬を契約金額から差し引く旨を記載した「覚書」を締結する必要があります。プロフェッショナルであれば体調管理も仕事のうちと心得ましょう。

それでも、急病のときなど、やむを得ない事情で休まなければならない場合は、わかった時点でクライアントに必ず連絡をするようにしましょう。

(浴野 真志 : 株式会社Groovement 代表取締役)
(高倉 諒一 : 株式会社Groovement 取締役)