中国メーカーがEVのスマート化を競うなか、VWは苦況に立たされている。写真は中国の展示会に出展したソフトウェア開発子会社カリアドのブース(VWグループのウェブサイトより)

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループが、中国市場向けEV(電気自動車)のスマート化を急いでいる。

VWグループのソフトウェア開発を一体的に手がける子会社のカリアド(CARIAD)は12月8日、中国のAI(人工知能)スタートアップ企業の地平線機器人技術研発(ホライゾン・ロボティクス)と共同で、両社の合弁会社「酷睿程(カリゾン)」を中国の北京に設立したと発表した。

2015年に創業した地平線機器人は、自社設計のAI半導体や自動運転アルゴリズムなどの開発企業だ。合弁会社ではVWが中国市場で販売するEV向けに、地平線機器人のAI半導体を採用した自動運転システムを開発する。

中国でのEV販売低迷に危機感

実は、VWと地平線機器人は合弁会社の設立計画を2022年10月に発表済みだった。それから1年余りを経て、ようやく実現にこぎ着けた格好だ。中国の企業登記情報によれば、カリゾンの登録資本金は67億5700万元(約1364億6640万円)、出資比率はカリアドが60%、地平線機器人が40%となっている。

中国の自動車市場で急速なEVシフトが進むなか、(エンジン車で市場シェア首位だった)VWは苦況に立たされている。VWグループが2023年1月から9月までの間に中国市場で販売したEVは11万7000台にとどまり、前年同期比の増加率は3.9%と業界平均(24.9%)を大幅に下回った。

エンジン車の販売減少にEVの低迷が重なり、VWグループの中国市場での総販売台数は減少し続けている。ピークの2019年には423万台を販売したが、2022年は318万台と3年で100万台以上も落ち込んでしまった。

世界の自動車大手のなかで、VWはEVシフトに最も積極的なメーカーの1つだ。同社は本拠地のヨーロッパ市場で、2023年1〜9月に34万1000台のEVを販売した。

にもかかわらず中国での販売が振るわないのは、(EVとしての基本性能の問題ではなく)クルマのスマート化の面で中国メーカーに後れを取り、消費者に目新しさを訴求できなかったためとみられている。

複数のアプローチを同時進行

危機感を強めたVWは、中国市場向けEVのスマート化を一気に加速するため、複数のアプローチを同時に進めようとしている。カリゾンの設立を通じた地平線機器人との提携は、その1つにほかならない。


VWは中国企業の技術を取り込み、EVのスマート化を加速しようともくろむ。写真は2023年4月の上海モーターショーに出展した地平線機器人のブース(同社ウェブサイトより)

これに先立つ2023年7月、VWグループは中国の新興EVメーカーの小鵬汽車(シャオペン)への出資および両社の技術提携を発表。小鵬汽車の既存車種をベースにした2車種のEVを共同開発し、VWブランドで中国市場に投入する計画を明らかにした。これらのEVには、小鵬汽車が開発したAI自動運転システムが搭載される。


本記事は「財新」の提供記事です

財新記者の取材によれば、VWグループの上級ブランドのアウディは、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と共同でスマート自動運転システムの開発を進めている。その最初の成果となる新型車は、2025年に中国市場で発売される見込みだ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は12月9日

(財新 Biz&Tech)