碧桂園は2023年春以降の住宅販売収入が激減し、債務返済が困難になっている。写真は広東省仏山市にある本社ビル(同社ウェブサイトより)

中国の不動産大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン)の経営危機が一段と深まっている。

同社は12月8日、董事会主席(会長に相当)を務める楊恵妍氏のグループ経営会議での発言を、SNSの公式アカウントを通じて公表。それによれば楊氏は、「創業家は私財を投げうってでも会社を支援する。正常な経営に可能な限り速やかに復帰できるよう、有効な方策を見つけ出したい」と発言したという。

楊恵妍氏は碧桂園の創業者である楊国強氏の娘だ。国強氏は2023年3月に経営から身を引き、41歳の恵妍氏が後を引き継いだ。上述の発言は、支配株主である楊氏一族が、会社に対して資金供出を行う(と表明しなければ、債権者などの協力が得られない)という意味にほかならない。

相対的に財務健全のはずが……

中国の不動産業界では、2021年後半から大手デベロッパーの財務危機が次々に表面化している。住宅市況の低迷が長引き、民営デベロッパーを中心に(銀行融資や社債などの)債務の借り換えが困難になったためだ。

碧桂園は2022年末時点で約1兆4400億元(約29兆円)もの負債を抱えていたが、財務状況は民営大手のなかでは相対的に健全と見られていた。ところが2023年8月初旬、同社が一部の社債の利払いを期日までに支払えなかったことが表面化し、市場に衝撃が走った。

急速な財務悪化の背景には、住宅販売収入の激減がある。碧桂園の8月単月の権益販売額(訳注:未完成物件の予約販売収入)はわずか79億8000万元(約1612億円)と、前年同月比72%も減少。同社は2022年には月平均298億元(約6019億円)の販売収入があったが、2023年春以降はそれが一気に落ち込んだ。

碧桂園の説明によれば、同社は2023年1月から11月末までの間に約50万戸の住宅を(予約購入した顧客に)引き渡したという。

だが2023年初めの時点では、碧桂園は年末までに70万戸を(予約購入者に)引き渡すとの目標を掲げていた。現状を鑑みれば、同社が目標を達成するのは極めて難しいだろう。


碧桂園の創業家が「私財を投げ打つ」と宣言したのは、政府や金融機関の支援を得るための方策との見方もある。写真の右から2番目が創業者の娘の楊恵妍氏(同社ウェブサイトより)

不動産業界の債務危機を重く見た中国政府は、不動産市場を金融面から支える政策を相次いで打ち出している。10月末に開催された中央金融工作会議では、「金融と不動産の好循環の促進」や「異なる所有制(訳注:国有および民営)の不動産会社による合理的な資金調達ニーズへの対応」などの方針が打ち出された。

金融機関の支援を得られるか

市場関係者の間には、中国政府の監督当局が(金融危機を予防するために救済する)大手不動産会社のホワイトリストを作成中であり、国有および民営の50社が対象になるとの情報が流れている。


本記事は「財新」の提供記事です

そんななか、4大国有銀行の1つである中国工商銀行と広東省に本拠を置く広発銀行が、それぞれ「不動産会社の合理的な資金ニーズの支援」に関する(大口融資先との)座談会を開催し、そこに碧桂園も招かれたことが注目を集めた。

同社は果たして、金融機関の支援を獲得して経営危機を乗り越えられるのか。中国の市場関係者は固唾を吞んで見守っている。

(財新記者:王婧)
※原文の配信は12月9日

(財新 Biz&Tech)