日本株は2023年後半伸び悩んだ。だが2024年は再び上昇しそうだ(写真:Getty Images)

2023年に入ってからの日経平均株価は順調であった。大発会こそ2万5716円86銭で始まったが、7月3日には3万3753円33銭となり、実に8036円高、率にして31.25%もの上昇となった。

同じ期間の欧米市場はどうだったか。アメリカのニューヨーク(NY)ダウ30種平均株価は3万3136.37ドル(1月3日)が3万4288.64ドル(7月5日)。差し引きで1152.27ドル高(3.48%)になったにすぎない。

欧州株を代表するドイツDAX指数を見ても大差ない。1万4181.67ポイント(1月3日)が1万5937.58ポイント(7月5日)になっただけだ。やはり1755.91ポイント高(12.39%)であり、日経平均に大きく負けた。

なぜ日経平均は2023年後半伸び悩んだのか

しかし、その後NYダウは12月19日に史上最高値3万7557.92ドル、ドイツDAX指数もやはり12月11日に16794.43ポイントの史上最高値をつけた。そんな中で、日経平均は年後半、予想外の苦戦を強いられている。

NYダウとDAX指数の、今年前半と後半の違いの理由ははっきりしている。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)の両方とも、年後半は政策効果が大きかった。10年債の利回りで見ると、アメリカのそれは3.75%(1月3日)が7月に4%になり、その後一時は5%になった。だが現在は3.8%台に戻った。

同じくドイツの10年債利回りも2.38%が7月に2.6%台になり、その後一時2.96%になった。だが現在は2%を割れている。

対して日本はどうか。2023年の前半高は異次元緩和に守られながらデフレ経済からの脱却の兆しが見えたことによるものだったが、それがゆえに「異次元緩和の解除」の可能性も出てきたことで後半は苦戦したのである。

しかし、日本は世界、とくにアメリカに比べれば1周遅れの経済だということを忘れてはならない。しかも、日本経済は約30年間のデフレ経済から脱却する可能性のある、大きな経済波動のスタート段階だ。2023年の前半は「勝ち」、そして後半は「負け」の順になっている欧米とのシーソーゲームは、今度は日本が勝つ番だ。

干支に関する相場格言はいつ始まったのか

もうすぐ2024年になる。ここであらためて、有名な干支(えと)に関する相場格言をかみしめてみたい。

「子(ねずみ)繁盛、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる。辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる」である。

筆者が証券界に入ったのは1970年だが、その頃の兜町では、どんな理論派であっても、新年の相場予想ではこの干支の見方を必ずひとこと付け加えていたものだ。各証券会社も同様で、とくに兜町の主(ぬし)だった歩合外務員(コミッションセールスマン)たちは、新年相場を予測する重要な営業トークにしていた。

こうした「営業トーク」はいつから始まったのだろうか。戦後の取引が始まった1950年にはすでにあったという説もあるが、定かではない。

干支(えと)は平安時代のころの行事を支配していた陰陽五行説と結びついた。調べてみたのだが、戦国時代に入っても勝負事と干支を結びつけた明確な記録はない。

また、江戸時代に入って、先物取引などが活発になったコメ相場には当然干支に関する格言が出てくるかと思ったのだが、季節や天候の格言はあっても、干支による相場格言は見当たらない。

日本で1878(明治11)年に証券取引所ができてから、2024年で146年が経つ。それゆえ「明治の相場格言にはあったはずだ」という説もあるが、ネットなどでいくら探しても「これだ」というものは見当たらない。

結局、検索などをあれこれしているうちに、その過程で、筆者が東洋経済のこの欄にほぼ1年前に書いた記事「2023年から日本株は『黄金の3年間』になる可能性」が見つかった。

はたして、干支による相場予測は当たっただろうか。確かに2023年の「卯(う)跳ねる」は前述のごとく、年の前半は見事に当った。だが、童話のように、ウサギは年後半寝てしまったようだ。

「甲辰」は株式市場にとって「これ以上ない組み合わせ」

さて、少々振り返りが長くなってしまったが、肝心の2024年の干支は甲辰(きのえ・たつ)だ。

干支とは文字でわかるように、10年周期の十干(じっかん)と12年周期の十二支の組み合わせで表される。甲(きのえ)は十干の1番目で「殻を破り、木の芽が吹く」を意味する。また、辰は十二支で唯一の架空の動物で「雄々しく天に上る趨勢」を意味する。

この2つが組み合わさった甲辰年は「巨大な力を持つ龍が天に上り、地上では殻を破って木の芽が吹く」という、株式市場にとってはこの上ない縁起数詞(すうし)だ。

「辰巳天井」という言葉を聞いて嫌がる相場関係者も多いようだが、「天井」とは「高い」という意味で、「辰の2024年・巳の2025年は高い」とも解される。もし午(うま)の2026年が尻下がりになったとしても、その前に2年間も楽しめることになる。

ここまで書いてきてお叱りを受けそうだが、筆者の相場観の基本は干支とは関係なく、日本株の予想は、日本が約30年間のデフレ経済の眠りから覚めたことに起因する。だから「この相場は2023年の1年では終わるわけがない。この強気相場は2024年、場合によっては2025年まで続く」と以前から唱えてきた。だが不思議なことに、結局はこの辰巳天井という、干支の相場観と一致する。

2023年の相場はまだ5日残っているが、今年日経平均が3万3000円以上だったのは、6月13〜22日、6月28日〜7月5日、7月31日〜8月1日、9月5〜6日、9月14〜20日、11月15〜12月4日、12月6日、12月19日〜22日だ。

実に8回も「割れては戻り」を繰り返し、戻った日数は40日にのぼる。6月13日に初めて3万3000円以上になってからの立ち合い日数は132日間だが、そのうち30%も滞在していたことになる。

つまり、これは危険な高値圏というよりは、現在の市場が納得するフェアバリューゾーンではないか。しかも、12月21日に開かれた内閣府の経済財政諮問会議では、2024年度の所得増加率が前年度比3.8%となるとの推計が示された。これは同年度の物価上昇率2.5%を上回る。

もしこの試算どおりなら、フェアバリューゾーンは間違いなく上がってくる。ならば、古い言い回しだが、「株を枕に年を越し」でよいのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)