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家事や育児、介護などの分担をめぐって、家族間で言い争いが増えて、いつのまにか一緒にいて心地よい存在だったはずの家族が「つかれる存在」になってしまった……そんな話を聞くことがよくあります。

どうして自分の不満が家族に伝わらないの? どうしたら「つかれない家族」になれるの? そんなふうに「つかれる家族」と「つかれない家族」を考察するこの連載。

今回のテーマは「子どもとサードプレイス」。家庭でも職場でも学校でもない「第3の場所」の大事さはよく聞く話ですが、子どもや親子関係にとってはどうなのでしょう?東京・高円寺のシェアスペース「小杉湯となり」での2年半の親子体験談です。

子どもにとっての「サードプレイス」


息子が学童卒業となり…


大人が集うシェアスペースに、息子も通うことに


いろんな人に出会い、世界が広がった


大人の友達ができた


勉強の気分転換になる


親もあらためて気づかされることがある


息子も気に入っているようです



この「小杉湯となり」には有志による部活もあり、私たち家族は「旅部」という旅行体験をシェアする部活に参加していました。当時、小4の息子は、そのプレゼンのために、学校で習うより前にパワーポイントを覚えました。夫も一時期は会員で一緒に部活参加もしていたため、その後も旅部メンバーとは家族ぐるみのつきあいが続いています(写真:筆者撮影)

安心して過ごせる「サードプレイス」があれば

さて、ここまで読んで「サードプレイスはいいとは思うけど、こんな珍しい施設の話をされても……」と思った人も多いのではないしょうか。確かに「小杉湯となり」はある意味、独特で珍しいシェアスペースです。

でも、実は「子連れで通えるシェアスペース」は全国に増えつつありますし、子どものサードプレイスは、シェアスペースに限定もされるものでもありません。家庭でも学校でもない第三の場所であれば、習い事でも塾でも趣味の集まりでもお店でもどこでもいいのです。私が思う大事なことは、子どもが安心して居心地よく過ごせるということと、そこに集う大人が人間的に信頼できるということです。

私は、息子が小さいときから、息子にとっての居場所や関わる人は多ければ多いほうがいい、という方針だったので、ずっとこういった場所を意識して探してきました。小杉湯となりに親子で通うようになったのは予想外の展開でしたが、親子共に銭湯好きという私たちにとっては、いまはこの「銭湯つきシェアスペース」はベストなサードプレイスとなっています。

さらに、いま中学受験に差し掛かっている私たちにとっては、私と息子の中間世代の子たちに、自身の「中学受験体験」を聞ける場所にもなっています。私は地方出身で中学受験にかなり抵抗があったので、ここで聞いた話は「過酷になりがちな中学受験をどう健康的に乗り越えるか」の参考にとてもなりました。息子にとっても「塾以外で聞く大人のリアルな中学受験体験」は価値があったのではないかなと思っています。

さらに、マンガに登場する「翻訳の仕事をする会社員男性」は、その後、お仕事として、息子の英語の先生にもなってもらっています。本当に、どれだけシェアスペースのお世話になっているんだ、というかんじです(笑)。

ところで、最近たまたま読んだ「わが子にイライラする親は根本「3原則」を知らない」という記事の中に、「上から目線よりも“水平”目線」という言葉があり、ハッとしました。私と息子は、休日に一緒にシェアスペースに行くくらいには親子関係はいいと思うのですが、これは、このサードプレイスの効果も大きいのかもしれない、と思ったのです。

銭湯という共通の趣味においては、私と息子は“水平”目線でいられる関係で、その共通の趣味をつなぐ場所やコミュニティーも持っていることから、同じ趣味の共通の友人知人もたくさんいます。そういったことを話すときは、私たちの間に上下関係はまったくなく、それは親子関係が荒れがちな受験時期にはとてもよかったのかも、と再確認できたのです。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。

(ハラユキ : イラストレーター、コミックエッセイスト)