クリスマスは「厚切りポークチャップ」家で作る技
クリスマスにもおすすめ「ポークチャップ」を作ります
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「ポークチャップ」です。
「カツ ソテー用」の豚肉を使う
洋食の定番、ポークチャップ。ケチャップベースのソースを絡めたポークソテーの一種で、懐かしい味わいが人気です。薄切り肉でも作れますが、厚切り肉がおすすめです。
ポークチャップには通常、スーパーに行くと「カツ ソテー用」という名前で売られている豚のロース肉が使われます。
今回はロース肉を使いますが肩ロースでも同様につくれます。脂の量が違うので好みで選ぶといいでしょう。
■ポークチョップ(材料 2人分)
豚ロースソテー用 2枚(330〜350g)
酒 大さじ1
塩 小さじ1/4
小麦粉 適量
たまねぎ 1/2個
マッシュルーム 50g
赤ワイン 50ml
ケチャップ 100g
水 100ml
グリーンピース(缶詰) 好みで
●付け合わせ
スパゲッティ 40g
サラダ油 小さじ1
赤ワインにはなで肩といかり肩のボトルがありますが、酸味が少ない後者を使ってください
ぜいたくに生のマッシュルームを使いますが、しいたけなどの他のキノコでも代用できます。キノコのうま味が加わることでソースがリッチになります。
付け合わせにはゆでたジャガイモなどでもいいのですが、今回はスパゲッティを使いました。スパゲッティと言ってもイタリア料理的な使い方ではなく、洋食屋さん風にゆで置きしたものを使うので落ち着いて料理できるでしょう。
付け合わせからつくりはじめます。スパゲッティは袋の表示時間を目安に1%塩分濃度の熱湯でゆでます。
スパゲッティは芯を残さずしっかりゆでましょう
ザルで水気を切り、サラダ油を絡めておきます。ゆでる湯に加えた塩で下味はついていますが好みで塩ひとつまみを加えてもいいでしょう。
ラップをして置いておきます
豚ロース肉の下処理です。豚肉は焼くと反ってしまうので筋切りという工程が必要です。包丁の先かハサミで豚の脂身と肉の部分の境目に3〜4カ所程度切り込みを入れます。
肉の形が崩れないように最小限に抑えるのがベターです
ときどき、筋切りをすると肉汁がそこから出ていくのでしないほうがいい、という意見がありますが、肉汁はタンパク質が凝固するに従って、肉の水分が絞り出される現象なので、切込みの有無とはあまり関係がないようです。とはいえ必要以上に筋切りすると肉の形が崩れるので、最小限に抑えるのがベターではあります。
肉に下味の塩を振ります。ポークチャップはソースで煮込む料理なので塩は控えめに。
今回は1.5gの塩を振りました
酒大さじ1を振って、なじませましょう。酒を振ることで肉がやわらかくなり、加熱によって失われる水分を補うことができます。そのあいだにたまねぎとマッシュルームを切っていきましょう。
食塩が入っている料理酒を使う場合は下味の塩を1.2gに抑えます
たまねぎはまず頭とお尻を1cmほど繊維を断ち切るように薄切りにします。
皮を剥いて、根と軸を落としたたまねぎ1/2個を使用しています
残りは繊維を残すように3〜4mmの幅に切っていきます。はじめに切ったたまねぎはソースに溶け込み、こちらはシャキシャキした食感が残ります。
たまねぎは切り方で食感が変わります
マッシュルームには培地(ピートモス)が付着している場合があるので、水でさっと洗ってから3〜4mm厚に切りましょう。
キノコは水で洗わないといいますが、洗っても問題はありません
たまねぎやマッシュルームを切っているあいだに豚肉が水分を吸収しているはずです。バットに酒が残っていれば手でなじませてから、両面に小麦粉を薄くつけます。小麦粉が水分を吸うのでしっとりしますし、ソースもよく絡みます。
小麦粉は強力粉のほうがサラサラして扱いやすいですが、薄力粉でも味は変わりません
フッ素樹脂加工のフライパンに脂身を下にした豚肉を置き、中火にかけます。鉄のフライパンであれば十分に予熱をし、少量のサラダ油をなじませてから火を止め、同じように豚肉を置いてから弱火で加熱していきます。目安は2〜3分。
倒れるようであればトングなどで支えてください
パチパチと音がして、脂身に焦げ目がついたら表になる面から焼きはじめます。
豚肉自身の脂で豚肉を焼く感覚です
焦げ目がついたら裏返し、反対側はさっと焼きます。このあと、ソースのなかで煮込むので火が入っていなくても心配する必要はありません。小麦粉を振っているのできれいな焦げ目がついています。
反対側はさっと焼きます
豚肉を一度、取り出し、たまねぎを加えます。
脂が気になるようであれば少し拭き取ってもいいですが今回はそのまま使いました
マッシュルームも加え、さらに炒めます。
フライパンの脂が多く感じてもキノコが吸うので問題ありません
ときどき裏返しながら香ばしい焼き色がつくまで加熱します。
あまり混ぜないのがコツです
フライパンの片側にたまねぎとマッシュルームを寄せ、空いた場所にケチャップを加えます。たまねぎの甘み、マッシュルームのうま味、トマトケチャップの酸味とうま味がこのソースのベースになります。中火にして、ケチャップをよく炒めて味を凝縮させます。
中火にしてよく炒めます
そのまま炒め続けるとたまねぎとマッシュルームが焦げてしまうので、赤ワインを加えてさらに加熱します。フライパンの片側でケチャップを炒め、反対側では赤ワインが沸騰し、アルコールが蒸発するはずです。
赤ワインの渋みが入ることで味が複雑になります
赤ワインのアルコールが飛んだら全体を混ぜ合わせて煮詰めていきます。ゴムベラでなぞるとフライパンの底が見えるくらいが目安です。
火を弱火に落としたら、水100mlで伸ばしましょう。
水を加えたらゴムベラでフライパンの縁をなぞり、焦げ付きを防ぎましょう
豚肉を戻し、好みでグリーンピースを加えます。グリーンピースは味にはあまり関係がないので省略することも可能です。
缶詰のグリーンピースが入るとレトロな味わいが出ます
ふたをして弱火で3分加熱します。豚肉にはすでにある程度火が通っていますが、ダメ押しの加熱です。
ソースが沸いていることを確認したら火を弱火に落とします
出来上がり。ソースが濃いようであれば水で伸ばし、逆に薄すぎるようであれば煮詰めるなど調整してください。
蒸し煮にすることで肉にソフトに火が入ります
皿の奥には付け合わせのスパゲッティ、手前に肉を盛り、ソースをたっぷりとかければ完成です。好みですがスパゲッティに粉チーズを振るのがおすすめです。フォークとナイフで食べる料理はご馳走という感じが出るもの。
スパゲッティにもグリーンピースを混ぜました
今回はソースを最低限の材料で構成しています。仕上げにバターを落としたり、ケチャップの一部(15g)を中濃ソース(15g)に変えるともっとコクが出ますし、水に顆粒のガラスープを加えてもいいでしょう。甘みと酸味のバランスをとり、それをうま味で支えるという基本的な構成が理解できればアレンジは自由自在です。
クリスマス、そして年末年始にぜひ挑戦してみてください。
(写真はすべて筆者撮影)
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(樋口 直哉 : 作家・料理家)