『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(画像:公式サイトより引用)

数年前からSNSを中心にジワジワと大人たちの間でブームが巻き起こっているシルバニアファミリー。その人気は現在も継続している。

2019年には、シルバニアファミリー史上、最大規模の展覧会が開催され、2022年にはフル3DCGアニメ『シルバニアファミリー フレアのハッピーダイアリー』、今年は『シルバニアファミリー フレアのゴー・フォー・ドリーム!』が放送された。

そして11月23日から初の映画『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』が公開されている。決して一過性のブームではない、まさに無双状態とも言えるシルバニアファミリー。定番のお人形やポップアップショップ、アニメーションも含めて、なぜこんなにも人気が続いているのだろうか。

【2023年12月25日13時50分追記】初出時の一部表現を修正しました。

SNSでバズったシルバニアファミリー

シルバニアファミリーが大人たちを中心に注目され始めたのが、2018年頃になる。公式サイトのSNSをきっかけに、SNS上でシルバニア関連の投稿がバズっていたが、この人気に拍車をかけたのが、2019年に東京銀座で開催された「シルバニアファミリー展」だ。

シルバニアファミリー史上最大規模ともいえるこの展示会では、大型のジオラマをはじめ、国内で販売されたシルバニアファミリーの玩具が1000点以上も展示され、「懐かしい!」と話題となった。また、デザイナー・篠原ともえが衣装のデザインを監修するなど、シルバニアファミリーから生まれるクリエイティビティーも注目された。

それに伴うような形で、数々のポップアップが定期的に開催された。わざわざおもちゃ売り場に行かなくても、目当てのお人形がよりいっそう手に入れやすくなった。

手元に置いて癒されるだけではなく、シリーズごとについ集めたくなり、思わずSNSに投稿したくなってしまうのもシルバニアファミリーの人気の理由の1つだろう。

そんなシルバニアファミリーの歴史は長く、1985年に玩具メーカー・エポック社から発売開始された。

もともとは「野球盤」など男児向け玩具が有名だったエポック社だが、初の女児向け玩具として発売されたのが、シルバニアファミリーだった。

子どもたちに温かみを感じてもらうために、人形たちには手触りをよくするフロッキー加工がほどこされ、ハウスや家具、人形の衣装は1990年初頭を意識して作られた。本格的なジオラマで遊べる世界は女児の心を掴み、シルバニアファミリーは瞬く間に大ヒットした。

当初はシルバニア村のみの玩具だったが、その後はシルバニア村とは別の場所を舞台にした「アーバンライフシリーズ」も加わり、おしゃれな衣装のファミリーや、家具のデザインも増えていった。

赤い屋根の大きなお家の大ヒット

そして、1995年には第2次ブームを迎え、4方向から遊べる「赤い屋根の大きなお家」が大ヒット。累計100万個を売り上げた。また、2000年代に入ると、新しいファミリーや家具シリーズも増え、2007年からは現在のシルバニアファミリーの主人公となる「ショコラウサギファミリー」が登場する。


シルバニアファミリーの赤い屋根の大きなお家(画像:エポック社サイトより引用)

今でも世界70以上の国と地域で愛され、累計販売数2億個を超えるくらい、シルバニアファミリーは発売当時から親子3世代に支持されている。SNSで話題になる前から、安定した人気を誇っているのもシルバニアファミリーの特徴だろう。

発売当時から現在まで、人気を維持しているシルバニアファミリーだが、アニメ製作にも注目したい。

日本でのシルバニアファミリーのアニメ製作は2007年からスタートすることになるが、 3DCGで挑んだアニメーションは全3話で製作が終了。おもちゃと比べて、アニメ製作は順調とは言えない状況だった。

そのようななかで、2017年から『シルバニアファミリー ミニストーリー』が製作された。この時からショコラウサギファミリーのフレアが主役になり、今まで名前がなかったファミリーと各キャラクターにも名前が付くようになる。

メインであるショコラウサギファミリーはチョコレート一家、くるみリスファミリーはウォールナット一家など、名前が付くことによって、各キャラクターに個性が出て、シルバニア村で起こる物語に深みが増すようになった。

もともとシルバニアファミリーの個々に名前が付けられていなかったのは、子どもたちに自由な発想で好きなように遊んでほしいというエポック社からの配慮だった。しかし、アニメーション製作において、各キャラクターに名前が付けられるようになったのは大成功といえるだろう。

22年にはフル3DCGのアニメが放送

その後もアニメ製作は順調な人気を得て、2022年にはフル3DCGで描かれた『シルバニアファミリー フレアのハッピーダイアリー』が放送され、今年は『シルバニアファミリー フレアのゴー・フォー・ドリーム!』が放送された。

細部まで丁寧に作り込まれたアニメーションで、改めてシルバニア村の世界に気がつくことが多いのも人気の理由のひとつだろう。お馴染みのショコラウサギファミリーのお家も、3DCGで描かれた映像で隅々までみると、家具の作りや壁紙、部屋の配置まで今まで気がつかなかった発見が非常に多い。

そして、今回の劇場版『フレアからのおくりもの』では、初の劇場版というだけではなく、3DCGで描かれた映像とともに、村方乃々佳が声優を務めるなど早くも話題となっている。四季折々の美しいシルバニア村を3DCGで体感できるのも本作の魅力だ。


『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(画像:公式サイトより引用)

親子3世代の幼少期をともに過ごしたシルバニアファミリーは、令和でさらに世界が広がった。

シルバニアファミリーが今でも世代を超えて愛されているのは、家族を思う愛情や思いやり、シルバニア村の美しい自然や素朴な生活に尊さを感じるからだろう。それは、子供の頃に自らが描いたストーリーからだったり、アニメーションの物語からだったりもする。

ただ懐かしいといった感情だけではなく、心のなかにある大切なものをシルバニアファミリーは思い出させてくれるのだ。そして、この小さくて尊い人形たちは令和でも私たちの心を掴んで離さない。

(Tajimax : ライター・コレクター)