節約・蓄財にためには「節約メンタル」を育てることが大切だ(画像はふゆこさんYouTubeのスクショ)

今回は、以前本連載で登場いただいた節約・投資系YouTuberふゆこさんへのインタビュー企画第2弾をお届けする。

元々浪費家だったというふゆこさん。節約貯金に目覚めてからは、奨学金477万円を返済しながら1カ月約10万円で生活し、20代で1200万円の貯蓄を達成。その経験を生かし、「節約オタクふゆこ」というYouTubeチャンネルで節約・貯金・投資情報を日々発信している。

そんなふゆこさんがこの度、著書『貯金はこれでつくれます』を出し、Amazonや楽天市場でジャンル別ランキング1位を獲得している。本の中で、ふゆこさんは「貯金はメンタルが9割」と節約貯金におけるメンタルの持ち方の重要性を強調している。

そこで、今回は節約貯金をする中でどうメンタルを保つべきなのか、ふゆこさんが考える“節約貯金の本質”を掘り下げたい。

貯金はメンタルが9割

節約貯金をする上で本質的に大切なのは、何よりもメンタルの持ち方だとふゆこさんは著書でも強調している。


節約系ユーチューバーのくらまがインタビューします!(編集部撮影)

「就職したばかりの頃は、給料が少ないし、奨学金の返済もあるし、家賃もある。だからお金が貯まらないのだと思っていました。もちろんこれらは原因の1つではあるのですが、考え方としてはおそらく変えなくてはいけなかったのだと思います」

貯金ができない理由は決して収入の問題だけではないという。実際、年収が1000万円以上あっても、貯金がゼロのいわゆる「高所得貧乏」になっている人が約1割という調査結果もある。(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 総世帯 令和4年調査結果」)。

ふゆこさんは当時手取り年収が約300万だったが、節約ができるようになってから気づいたのは、自分は年間150万円で十分楽しく暮らせた、だとすれば年間150万円は貯金できたはずだということだ。


何かを選ぶことは、何かを捨てること。それに気づいてからは、コンビニは基本的に使わなくなった(画像はふゆこさんYouTubeのスクショ)/配信先サイトでは画像をすべて見られない可能性があります。その場合は、本サイト(東洋経済オンライン)でご覧ください

「昔の私は、何かを選ぶことは、同時に何かを捨てていると気づけていませんでした。仕事帰りのコンビニのお菓子や欲しい服やコスメを買うなら、貯金はできないですよね。お金を自由に使うことを優先するなら、将来のための備えや金銭的な安心はとりあえず捨てなければいけません。当たり前のことですが、有り余る富を持っているような人以外は、使えるお金には限りがあります」

浪費メンタルに注意

そんな気づきがあって以来、限られたお金を適切に使い、貯めていくために、自分はどんな時に浪費してしまうのか、本当は何が欲しいのかを見つめなおすことに。

「お金の使い方は、その人のメンタルと連動しています。何かを欲しいと思い、買う、一連の意志決定をするときは、自身の性格や精神状態が反映されます。私自身、浪費や無駄遣いをする傾向にあるときは感情に流されていました。仕事のストレスや『アラサー女性はみんな美容にこれくらい使っているから』と自分の浪費を正当化する『浪費メンタル』になってしまっていました」


世間が思う"20代女性"がやりそうなことをなぞった時期も。今は化粧品ではなく、ワセリンを使っている(画像はふゆこさんYouTubeのスクショ)

この「浪費メンタル時代」を振り返ってみると、世間体というか、自分で思い込んだ見栄のようなものに囚われていたという。世間の思う“20代女性”がやりそうなことをなぞるようにお金を使っていた。憧れとされているデパコスや、トレンドを意識した服やバッグを買ってみる。

でもこれらは自分の本当の意思で選んでいなかったから、結局は買っただけで活用できず、長く心を満たしてくれるものでもなかったという。

「『○○すべき』や『普通は○○』といった“世間の声”を装った企業や広告が、巧みに消費者にお金を使わせようとしています。広告やマーケティングはとても巧妙で『これが普通』『これを買うべき』という固定観念は、知らず知らずのうちに、私たちの思考のなかに深く刷り込まれているのではないかと思います」

そういった世の中の価値観から離れて、改めて自分の心に向き合ってみたふゆこさん。思い出したのはすごく幸せだった小学校時代だ。

「50円のお菓子・ねるねるねるねで大喜びしていたんですよね。もちろん子ども時代と単純に比較はできませんが、本質的に変わっていないところもあるはずです。友達と遊んだり、健康的に体を動かしたり、おいしい食事があれば、私はそれでいいと思ったんですよ。それが私にとっての本当の自分軸でした」

浪費メンタルをリセットして、メンタルの重要性を実感

軸を見つけることで、お金とのつきあい方が変わり、浪費メンタルをリセットする時間を持つことができた。だからこそ、20代で1200万円貯金ができたのだとふゆこさんは振り返る。この実体験から、節約貯金のために根本で必要なことはメンタルの持ち方だと強く思うようになったそうだ。


会社員時代、毎日持参していたというお弁当。写真のメニューはサバ缶と冷凍野菜。時間や手間がかからず、ネットでまとめ買いできるおかずをセレクトしている(写真:ふゆこさん提供)

一方で、浪費にはストレスを解消してくれる役割もある。ふゆこさんがストレスのある会社員時代を生き抜いてこられたのは、浪費のおかげでもあるという。仕事にストレスを感じている人でも、辞めたり、休んだり、転職できない人も多いだろう。浪費に救いを見出しているとするならば、それが取り上げられてしまうのも危険なことだ。

そんな中で備えられることがあるとすれば、メンタルに大きくかかわる脳内ホルモンの仕組みを知ることだという。

「メンタルを保つのは技術だと思うんですよ。根性論ではなく、脳の仕組みを知ることで対処できることもあります。例えば、幸せの三大ホルモンと言われるドーパミンとセロトニン、オキシトシンにはそれぞれの特性があるので、知ることで自分なりの対処法を見つけられるかもしれません」

ドーパミンはやる気ホルモンと言われ、快感、喜び、やる気、達成感を生み出し、ポジティブな気持ちにさせてくれる。買い物をした時に気持ちいい刺激があるのは、このドーパミンが分泌されるからだ。ストレス解消になる一方で、刺激を求め続けて買い物やギャンブルをやめられなくなるといった依存性もある。

このドーパミンを抑制するのはセロトニン。幸せホルモンと言われ、不安をやわらげ、安心感をもたらし、メンタルを安定させる働きがある。さらに、セロトニンにはドーパミンの過剰分泌をコントロールする役割があるといわれている。規則正しい生活をして朝日を浴びたり、毎日30分程度の運動をしたりすることで分泌が促される。

「私は知ったことで意識して生活を改善できました。あとは、なにか爽快感や解放感、一時的にでもストレスの原因を忘れられるような趣味や習慣を、節約と一緒にはじめるのがおすすめです。私は今、趣味でボルダリングをやっているんですけど、壁登りのスリルとか達成感はストレス解消につながっているように思います」

継続には習慣化の技術が重要

節約は継続しないと貯金につながらない。ある1週間はできても、その次の1週間で浪費したら当然ながらお金は貯まらない。そしてこの継続にもメンタルが関わっているとふゆこさんは言う。

「継続するための科学というか、習慣化の技術はいろんな本で紹介されています。そういったものを参考に取り組むといいかと思います。そういった本でよく言われているのが、人間は変化したときにストレスを受けるということです。それは良い変化でも悪い変化でも受けるようなので、それを踏まえて自分にあった節約貯金法を模索する必要があります」

例えば食費の節約をすると決意して、外食は月1回と決めたとする。頻繁に外食していた人は当然ながらその変化によるストレスを受ける。ただし、最初はそれが大好きな外食をやめたストレスなのか、外食の習慣がなくなった変化のストレスなのか、2つのどちらなのか見分けがつかないのだという。

「週に3回以上、3カ月以上続けると、習慣は定着するらしいんですよ。だから、定着した頃に本当にその節約術を続けたほうがいいのかどうか判断するといいんですよね」

外食費の節約が単純に変化のストレスだった場合は、習慣化が定着すれば、さほど気にならなくなり無理なく続けられるだろう。一方で、大好きな外食をやめたストレスだった場合は続けることで大きなストレスになってしまう。

「そういう場合は、自分にとってお金を使うところだと判断した方がいいと思います。私も一度食費を限界まで節約してみたんですけど、自分にとって食事は大切だったんだなと再認識したので、食費はそれなりにかけています」


(画像はふゆこさんYouTubeのスクショ)

もちろん、これは食費だけでなく、被服費や交際費、娯楽費など、いろんなケースに当てはまるだろう。自分の心地いい節約の基準を知り、自分なりのポイントを見極めていくことが継続の秘訣ということだ。

もう一つ継続のコツがある。それは家計簿だ。

「ちゃんと記録していると、貯金額が増えるなど、自分の推移というか成長が見られるので、それが嬉しくて私は続けられました。感情的な部分でも、小さいご褒美を自分に与え続けるっていうのがすごい大事だと思うんですね」

ライフシミュレーションでお金の危機感を視覚化

さらに、節約貯金の継続を強固なものにしたのが、ライフシミュレーション だという。自分の年齢、収入、ライフスタイルなどの情報を入れたら、生涯の収入や貯蓄額を予想してくれるサービスだ。ふゆこさんは26歳の時にやって、お金への危機感を明確に持ったという。


「ネットで無料でできるので、皆さん検索してやってみたらいいと思います。それまで、ただぼんやりと将来への不安があって、貯金しておいた方がいいんだろうなと思っていたのが、明確に数値やデータで視覚化されました」

もし将来子どもを持つ場合の養育費、老後に必要な資産、家や車の費用……、今後の人生で起こることへの具体的な予算感をつかめて、現実に直面することができた。

「わたしがぼんやり思い描いていた理想の生活って、このままでは実現しないんだ……と気づきました。そこか『このままではダメだ。できることはなんでもやって未来を変えよう!』と自分で責任を持って、自分の人生を変えていこうというスイッチが入ったのです」

現実を知ること、それは自分の人生を変えるのだという揺るぎない決意へとつながった。(構成:横田ちえ)

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(くらま : 倹者の流儀/節約系ユーチューバー)