国軒高科はタイで生産した電池パックを、中国のEVメーカーの現地生産車向けに供給する。写真は12月7日に稼働したタイ工場の組み立てライン(同社ウェブサイトより)

中国の車載電池大手の国軒高科(ゴーション・ハイテク)は12月7日、タイの合弁会社の工場で電池パックの生産を開始したと発表した。工場の第1期プロジェクトの設計生産能力は年間2GWh(ギガワット時)。将来的には8GWhまで拡張する計画で、タイを含む東南アジア市場の需要に応えるとしている。

国軒高科は2022年12月、EV(電気自動車)向け車載電池や関連産業への投資を手がけるタイ企業の「ヌオボ・プラス」と提携し、合弁会社を設立。ヌオボ・プラスはタイの国営エネルギー・石油化学大手、PTTグループの傘下企業だ。

哪吒汽車の現地生産車に搭載

今回生産を始めたのは、リン酸鉄系リチウムイオン電池の電池セルを(冷却機構や制御システムなどとともに)組み上げた電池パックだ。容量は38KWh(キロワット時)で、EVを約400キロメートル走行させることができる。国軒高科によれば、タイにおけるEV向け電池パックの生産はこれが初だという。

電池パックの最初の供給先は、中国の新興EVメーカー、哪吒汽車(ネタ)のタイ工場となる。哪吒汽車は11月30日、タイで組み立てた小型EV「ネタV」の第1号車がラインオフしたと発表。2024年初めから量産を始める計画だ。

タイの市場調査会社の予想によれば、タイ自動車市場の2023年のEV販売台数は前年の5倍を超える6万8000台に達する見込みだ。2024年はさらに8万5000〜10万台に拡大し、自動車の総販売台数の10〜12%を占める可能性がある。


タイは中国のEVメーカーと電池メーカーの集積地になりつつある。写真は上海汽車集団の現地合弁会社の電池工場稼働式典(現地合弁会社のウェブサイトより)

そんななか、中国のEVメーカーはタイに車両の組み立て工場を続々と建設している。それが呼び水になり、EVの中核部品である車載電池に関しても、中国の電池メーカーがタイへの投資拡大を競っている。

上海汽車の電池工場も稼働

例えば蜂巢能源科技(エスボルト)は2023年7月、タイに現地法人を設立し、EV向け電池パックの工場を建設すると発表した。生産能力は年間6万セット、生産開始は2023年末を予定している。

同じく7月、億緯鋰能(EVEエナジー)はタイ企業と合弁会社を設立し、年間生産能力6GWh以上の生産拠点を建設する計画を明らかにした。


本記事は「財新」の提供記事です

電池メーカーだけではない。中国の国有自動車最大手の上海汽車集団は10月31日、タイの合弁会社が建設した初の電池工場が稼働したと発表。同社がタイで現地生産するEV向けに、電池を供給することになっている。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は12月8日

(財新 Biz&Tech)