男性も女性もPC持ち運びが一般化、リュック姿はさらに増えた(写真提供:吉田カバン)

大都市での電車通勤客は、ほぼコロナ前の状況に戻り、駅構内や車中では男女ともにリュック姿が目立つ。筆者が「スーツ姿にリュックを背負って電車通勤する人が増えた」と初めて記事に書いたのは2016年の冬だった。最近はどんな状況なのか。

青山商事の「ザ・スーツカンパニー」が2022年7月に10代〜50代男性(1444人)に実施したアンケート調査で、通勤時にメインで使用しているバッグが「リュック」と答えた人は43.9%、次いで「ブリーフケース」(32.3%)、「トートバッグ」(21.5%)の順だった。

会社員なら冬のボーナスが支給される12月は、もともとバッグを新調する人が多い。

そこで今回、「仕事用バッグの選び方」を第一線で働く社会人に聞くとともに、選ぶ際のポイントを「ポーター」(PORTER)ブランドで知られる吉田カバン(※)に聞いた。

(※)正式社名は株式会社吉田。名称は「吉」の「士」の部分が「土」

バッグ選びは様式美から実用性重視に

まずは現在使っている仕事用バッグについて、20代から40代の会社員に聞いた。

「以前からリュック派ですが、コロナ明けで外出機会が増えました。ビジネスシーンで恥ずかしくない、黒の落ち着いたタイプのリュックを選んでいます」(30代の男性)

「入社2年目から現在まで同じ大きめの肩掛けバッグです。周りを見渡すと、最近は大きなバッグに変えた人が増え、PC(パソコン)の持ち運びもあると思います」(20代の女性)

こうした傾向について、吉田カバンの担当者はこう話す。

「コロナ以前からの傾向でしたが、近年はバッグの選び方が様式美から実用性重視になったのを感じます。その象徴がリュック人気で、年齢や役職も問わなくなりました」(マーケティング部の名倉楓也氏)

コロナ禍の間、筆者は取引先の担当者から「当社の代表取締役会長が最初にリュック姿で出勤してきた時は、ちょっと驚きました」という話を聞いたことがある。

「年配の役員でもリュックに変えると、機能的で手放せないようです。常にフォーマルスーツで出勤していた当社の古参役員(現在は退任)も手提げバッグからレザーのリュックになりました。役職上位者がリュックにすると社員もバッグ選択の自由度が高まるようです」(名倉氏)

15インチのPCを入れる人も増えた

消費者への取材では、「コロナ以降の在宅ワーク⇔時々出勤でPCの持ち運びが増え、リュックに変えました」(40代の女性ほか複数)という声を聞いてきた。

女性に目立つのが、手提げバッグ派からリュック派に変わったこと。中には、自分の通勤ファッションにはリュックが似合わず、できれば選びたくない人もいただろう。

男性でも「スーツやジャケット姿にリュックは合わない」と考える人は一定数いる。3way(手提げ・肩掛け・背負いの3用途)バッグでも、バッグのショルダーが肩に食い込むのが嫌で、手提げを好む人もいた。それでも実用性重視で手提げバッグ派は減ってきた。

「総じて男性は小物ポケットが多いバッグを好まれますが、時代とともにサイズ感も変わります。コロナ前は13インチのPCを入れるお客さまが多かったですが、最近は15インチのPCが増えています。ガラケーからスマホに代わってからは携帯電話も大きくなりました」(名倉氏)

中に入れる荷物は重量化した。PCだけでなく、折りたたみ傘やペットボトル飲料を常に携帯する人も増えた。キャッシュレス化で財布は小型化したが総重量には大きく影響しない。

コロナ禍で興味深かったのが、バッグに化粧ポーチを入れない女性が増えたこと。今回も「今でも入れていません。夏は化粧直しの品も増えるのでポーチを使いますが、冬は化粧崩れしないので、そこまで化粧品がいらなくなりました」(20代の女性)という声を聞いた。

「取引先へのプレゼンや発表会」に向くバッグは?

バッグ選びは服装との関連性も大きい。コロナ禍以降、さらにカジュアル化が進み、会社にお客さんが来ないような内勤日は、カジュアルな服装で働く人も多い。

「そういう日はバッグの形状を気にしない方もおられます。一方で、『あらたまった場で使いたい』という理由で上質なバッグを選ばれる方もいます」(名倉氏)

例えば取引先への重要なプレゼン日や発表会を主催する側として出席する日だ。ふだんカジュアル姿の同僚や社外関係者がスーツ姿になることも多い。

「そうした日に向くバッグとして人気なのが『ポーター クラーク』のブリーフケース(税込み5万9400円、以下同)です。牛ステアを使った革製の手提げバッグで、クラシックな見た目ですがマチ幅もあり、手に持つと思ったよりも軽いです。また内装にはポケットを配し、スマホはもちろん、折りたたみ傘やペットボトルも入れられます」(名倉氏)


手提げタイプ「ポーター クラーク」のブリーフケース(左写真提供:吉田カバン)、マチ幅も意外に広い(右写真は筆者撮影)

近年は責任ある立場に就く女性が増え、メンズ向け商品を選ぶ人もいるという。

「よく聞くのが、『レディース用はかわいいタイプが多いので、落ち着いた雰囲気のメンズ用がいい』という声で、その視点からバッグを選ぶ女性もおられます」(名倉氏)

男性用で圧倒的人気の色はブラックだが、最近は鮮やかな色合いも増えてきた。ダイバーシティの時代を反映して、メンズ用・レディース用の垣根も低くなっているようだ。

「展示会」の視察時は、カタログやサンプル品などをもらう機会が多い。国内出張も同様だ。お土産を買ったり、名産品をもらったりするなど、行きよりも帰りの荷物が重くなる。

これまでの取材では「2バッグ制」にする人が複数いた。

「1泊の出張の場合、いつもの通勤リュックにPCなどを入れるスタイルに加えて、宿泊用の荷物をサブバッグに入れて行きます。折りたためる大きめの布バッグも入れて、臨機応変にバッグを増減させています」(30代の女性)

「荷物が増えそうな日」に向くバッグは?

こうした需要に対応するバッグが、吉田カバンの商品にもある。

「『ポーター フレックス』の2wayダッフルバッグ(3万0800円)が人気です。折りたたんで持ち運びしやすいパッカブル仕様です。メイン素材はパラシュートクロスとも呼ばれるもので軽くて丈夫。もし穴が開いても破れが広がりにくい裂け止め効果もあります。非常に軽いのでメインのバッグの中に入れる方が多いです」(名倉氏)


広げるとダッフルになる「ポーター フレックス」(写真提供:吉田カバン)

在宅勤務+出勤を使い分ける人もいるが、通勤日は荷物が重くなりがちだ。

「オン・オフ兼用にもなる『ポーター シングス』のバックパック(6万6000円)が支持されています。丸みのあるラウンド型でPCや小物収納にも対応。背負った時に目を引く底部のストレッチコード(黒と蛍光グリーンの2色)は伸縮性があり、寒暖対策で、もう1枚の衣類を入れたりする用途にも使えます。ビジネス用は黒のストレッチコード、休日用は蛍光グリーンにして付け替えを楽しむこともできます」(名倉氏)


「ポーター シングス」の外見(左)と背負い部分。背面の使用素材はバッグと身体接触部分の圧迫を抑え、長時間の背負いによる疲労感や不快感を軽減する素材が採用された(筆者撮影)

最後に、実店舗で選ぶ場合とネットで選ぶ場合のポイントを聞いてみた。

「店舗で接客する場合は、好みのバッグ、中に入れる荷物、入れ方、ご予算などをお聞きしながら商品をご案内しています。今回はリュックを中心に話しましたが、開口部が大きく、パッと開けて荷物を入れられるトートバッグが好きな方もいます。できれば店舗に足を運んで、お好みのバッグを探していただきたいと思います。

また、お客さまと店舗スタッフとのやりとりで多いのが『A4サイズ』への認識。思った以上に大きく思われている方も多く、バッグの現物をお見せしながら『A4が入るジャストサイズはこれですよ』とご説明したりします」(名倉氏)

店員とのやりとりは気が重いと思う人もいるだろうが、店で選べば、持ってみると意外に軽いと感じたり、バッグを持つとどう見えるかを鏡に映すこともできる。

ネットで選ぶ場合は荷物のサイズ感も考えたい

ネットでの選び方については、どうだろう。

「例えば、『リュック、パソコン、価格』などのキーワードから検索して、バッグのタイプやサイズ、色などを探されると思います。ただ先ほども話しましたが、入れる荷物のサイズ感を考えていただきたい。店舗のように内部ポケットに手持ちの機器を合わせることもできませんので、PCやスマホを買い替えた場合は、気をつけたほうがいいでしょう。

吉田カバンの公式サイトでは、検索ワードにできるだけ沿うようにしています。また、ブランドの背景を知っていただくため、各商品のストーリー性もご案内しています」(名倉氏)

ダイバーシティが浸透し、ビジネスシーンでのバッグ選びも多様化してきた。カジュアル姿が進んだとはいえ、当日の業務内容や会う相手によって変わるはず。新年に向けて使い勝手の視点から、仕事用バッグを考えてみてはいかがだろう。

(高井 尚之 : 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント)