「人生とは経営そのもの」だと、肉乃小路氏はいいます(写真:Xeno/PIXTA)

慶応義塾大学在学中から女装をスタート。大学卒業後は証券会社、銀行、保険会社など金融業界を渡り歩き、夜は新宿2丁目の夜の社交場で、人間観察力を磨いてきた異色の経歴を持つ経済愛好家の肉乃小路ニクヨさん。

自らを経済愛好家というだけあって「お金が大好き」という肉乃小路氏ですが、幸せになるための最強の道具「お金」を「どう使うか」は、お金を貯めることよりも大切と力説します。

そんな肉乃小路氏が「お金が集まってきて、生きるのがさらに楽しくなる」ために、今シェアしたいことをすべて書ききった『元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方』(KADOKAWA)を上梓。その中から今回は、「自分を不幸にしないためのお金の使い方」を抜粋してお届けします。

「人生は経営」が一番しっくりくる

人生は「長い旅」とか「マラソン」など、色々な「たとえ」があります。どれもそうだなと思ったりするのですが、私が一番しっくりきたたとえは「人生は経営だ」ということです。自分という資源を与えられて、それを開発していき、利益を出すように運営して、社会に還元しながら生きていく。まさに経営そのものです。

だから色々な判断をする際も「自分株式会社」の社長として判断をすると良いと思います。商品は「自分自身」です。経営者としてはどう開発して、どう売っていくべきか、そのためにはどういう生活や経験をさせていくべきかを考えていきます。

人によって様々な経営戦略があるでしょう。「薄利多売」の戦略もあれば「高付加価値」の戦略もあります。同時に大切な資源である「自分自身」は放っておくと「日に日に劣化していく」のも事実です。あまりに「薄利多売」で働かせ過ぎると劣化が早くなり、割と早く寿命を迎えてしまいます。

だから、そこそこ良いものを食べさせて、しっかり休養も取らせて、劣化を抑えながら長く働いてもらう。そして経験を積ませて付加価値を上げていく。それが一番社会に還元できて、自分自身も幸せな生き方なのではないかと私は思います。そのための経営判断を日々していくのが人生ではないでしょうか?

そういう視点に立つと、お金の使い方もおのずと「自分(家族)」という資源を開発し、長く働くために「お金を使う」という考えになってきます。つまり「お金を使うこと(支出)」は自分(家族)を開発し、維持し続けるための「費用(経費)」という概念に変わります。どこに費用と時間をかけて、どう使うか。そこに経営者の腕の見せどころがあります。

経費として説明できるように使う

自分を会社にたとえるからには経営目標が大切になってきます。私の場合は家族もいないので「好奇心を大切にして、社会の仕組みや人間社会の実情を可能な限り理解し、咀嚼して、若い人や同世代の人が生きやすくなるような発信をする」という目標に従って生きています。

えらく抽象的だねって思われるかもしれませんが、こんなもんで良いのです。でも決めるのと決めないのでは大違いです。

目標を決めたら、その目標のためにお金を使っていきます。自分を会社として考えるので、支出をする際に一番考えることは「説明責任(アカウンタビリティ)」です。たとえば何か買うにしてもそれは経営目標に沿っているのか? 適切な福利厚生費用なのか? 資産になるのか? 将来役に立つのか? そういったことを考えて、後でちゃんと説明できるようにお金を使う意識を持つと良いと思います。

ただそうは言っても、ギチギチに説明するということまでは必要としません。大まかで良いのです。私の場合は自分に甘いところもあり、酒場にふらっと飲みに行くということも、よくしていました。ただその時も出会いや新しい気づきをもらって、自分の価値を上げるため、という目的を常に意識していました。

目的意識を持つことで、酒場や社交場での文化的なことを吸収する力が大きく変わります。大切なのは、目的を考えながらお金を使う習慣をつけることです。

会社という組織の運営は大きく2つの部門に分けて考えることが多いです。それは「プロフィットセンター」と「コストセンター」です。プロフィット(profit)という言葉は、「利益」や「収益」という意味を持ち、コスト(cost)というのは「費用」という意味を持ちます。

プロフィットセンターとは会社にとって「利益を生み出す部門」を指します。つまり営業部門や営業企画部門、経営戦略部門などを指します。それに対してコストセンターとは会社にとって利益を生まず「コストとなる部門」を指します。具体的には、総務部や人事部、経理部などの間接部門などです。

自分株式会社の大事な2部門

自分株式会社の中にも同じような部門があると思うのです。プロフィットセンターはお給料を稼いでくれる仕事に関連した部門、スキルアップして将来的にお給料を上げるような攻めの学習部門、人とのつながりを作りながら自分のアピールをして転職や新たな道を見つける力を養う社交的部門です。


コストセンターはお金を獲得することには直接つながらないけれど、一般的に固定費と呼ばれている食事だとか住居だとか通信・交通費などを指します。体を休めたり自分を労わったりするための福利厚生部門もコストセンターです。

一般的にはプロフィットセンターにお金を集中させた方が、より多くのお金を獲得できるチャンスが増えます。

ただ、あまりにコストセンターにお金をかけないと、従業員満足度が下がってプロフィットセンターが頑張ったり活躍できなくなったりするかもしれません。様々なことが起こる可能性のある中で、無尽蔵にお金が入ってくるわけではありません。だから知恵を働かせながら自分という会社をまとめ上げ運営していくのです。

(肉乃小路 ニクヨ : 経済愛好家、ニューレディー、コラムニスト)