FIREを目指す人はもう知っている、iDeCoの活用法(写真:78create/PIXTA)

FIREを目指す人にも「複雑でめんどうくさい」と思われがちな制度、iDeCo(個人型確定拠出年金)。

しかし、2020年にサイドFIREを達成した森口亮氏は、「iDeCoのすごいメリットを考えれば、利用しないなんてもったいないですよ。見方によっては、いま話題の新NISAよりも優先度は高いかもしれません」と語る。

そんな森口氏が、会社に縛られず、かつお金の不安もない自由な人生をわずか5年で手に入れるための「投資&資産形成戦略」を徹底解説した著書、『ガチ速FIRE』を上梓した。その中から、今回はiDeCoを最大限活用して一気にFIREに近づく方法を紹介する。

FIREを目指すなら、iDeCoを使わないのはもったいない

今回はiDeCoについてお話しします。iDeCoは老後の公的年金に上乗せする私的年金制度です。簡単に言うと、国や会社の年金だけでは心配な人が、自分で自分のためだけに用意する自分年金のような制度です。


加入者は毎月自分で決めた掛け金を積み立て(拠出)、自分で選んだ金融商品(定期預金、保険、投資信託)を運用し資産を形成できます。そして、60歳になった時点で、形成した資産を一時金や年金として受け取ります。ただし、原則として60歳になるまで引き出すことはできません。

少しわかりにくい制度ですが、見て見ぬふりをしているのであればもったいないですよ!

FIREを目指すのであれば、iDeCoは絶対に活用したほうがいい制度です。iDeCoを活用するいちばんのメリットは、iDeCo の掛け金が全額所得控除として認められており、住民税や所得税が安くなることです。

「控除」とは掛け金のぶん所得が少ないものとみなされるということであり、それだけ税金が少なくなるのです。

また、会社員の方は年に一度送られてくる「小規模企業共済等掛け金払込証明書」を会社に提出すれば、確定申告も不要です。

「平均年収1年分」に匹敵する節税効果も!

iDeCo は加入している年金区分によって拠出できる金額に違いがあり、節税メリットには違いが出ます。一般的なビジネスパーソンは第2号被保険者に該当し、最大で月額2.3万円の拠出が可能です。詳細はiDeCo公式サイトをご覧ください。

年収461万円の会社員(第2号被保険者)が40歳で加入し、満額(月2.3万円)運用した場合でシミュレーションしてみます。

この場合、1年あたりのiDeCo での税制優遇額(所得税+住民税)は、4万9131円で、仮に65歳までの25年間運用した場合の税制優遇額の合計は1228275となります。

なんと年間5万円近くのお金が浮く計算になります。浮いた分のお金はNISAの運用に回すこともできるので、iDeCoを活用した場合と活用しなかった場合の差はかなり大きくなることはいうまでもないでしょう

また、サイドFIREを達成し、個人事業主として開業した場合、加入する年金区分が変わる(第1号被保険者)ため、iDeCoの上限が月額6.8万円まで引き上がります。

年収600万円の個人事業主が満額運用した場合のシミュレーションも行ってみると、年間の税制優遇額が16万3200円、65歳まで運用した場合の税制優遇額の合計は408万円となります。

ここまでくると、ビジネスパーソンの平均年収1年分にも匹敵するほどの金額が浮くことになります。

40歳スタートでこの結果なので、始めるのが早いほど優遇額は上がっていきます。ここまでの税制優遇を受けつつ、運用先は全世界株式やS&P500の超低コストファンドを対象にでき、運用益も非課税になるのですから、もう使わない手はないでしょう。

さらに、iDeCoによる節税で浮いた分のお金は再投資に回すことができます

年収461 万円の会社員が月2.3万円で25年間運用すると、年額4万9131円(約月4000円)をiDeCo の節税効果によって残せる、というシミュレーションの結果でした。そのお金を全額年利3%で再投資すると、なんとプラスで178万円もの資産形成になります。

この結果はあくまでもシミュレーションではありますので、必ずそうなることを保証するものではありませんが、かかる手間に対して支出削減と資産増のインパクトを合計すると、決して無視できない金額です。

iDeCoの公式サイトには、「かんたん税制優遇シミュレーション」というページもありますので、ぜひご自身でどの程度の節税メリットがあるのかも確認してみてください。

iDeCoと新NISA、どちらを優先すべき?

今回ご説明したiDeCoと新NISAはどちらも非常に魅力的な制度なのですが、結局どっちを優先すべきなのか、という問題があります。

結論からいうと、私はiDeCoを優先することをおすすめします

「iDeCo は難しそうだし、毎月1万〜2万円程度じゃなかなか増えないし、受け取れるのは早くても60歳になってからだからいまはいいかな?」と思いがちですが、iDeCoには「節税」という、手元に残るお金を増やす効果があります。これはNISAにはない効果です。

所得がゼロという人はほぼいないため、「節税」という観点では、このメリットを享受できない人はほぼいないはずです。一方でNISA については利益を確定しない限り、非課税の恩恵を受けようもないのです。

まずはiDeCo を使ったインデックス投資を月額上限まで行いましょう。投資資金に余裕ができてそれ以上の積み立てが可能となれば、つみたてNISA を併用しましょう。

「iDeCoの上限+つみたて投資枠の上限」まで投資をしても、さらに投資ができるほど投資資金が用意できるのであれば、成長投資枠も併用するのがいいでしょう。

このように、つみたて投資にも優先順位をつけると、運用の効率性をさらに高めることができます

繰り返しになりますが、iDeCo は聞きなれないし、難しく感じるかもしれません。手続きもややこしいです。それでも、たとえ少額だとしてもやる価値が十分にある優遇制度なのです。

(森口 亮 : 個人投資家、投資系YouTuber)