取引や営業で活用できる、相手が「〜したくなる」コツをご紹介します(写真:shimi/PIXTA)

取引先、上司、同僚、部下等が、自発的・主体的・能動的に行動できるようになるにはどうしたらいいのでしょうか。その秘訣は、相手が「〜したくなる」ように関わること。つまり、「相手を“ムズムズ”させることです」と、『相手に「やりたい!」「欲しい!」「挑戦したい!」と思わせるムズムズ仕事術』の著者で、両想いビジネスコンサルタントの市川浩子さんは言います。

取引先を“ムズムズ”させると、スムーズに提案を受け入れ、部下を“ムズムズ”させると、積極的に仕事をし、上司、経営陣を“ムズムズ”させると、企画が通りやすくなるそうです。著書の中で紹介している会議・プレゼンテーションの場で相手をムズムズさせるコツの中から、誰でも簡単にできる「ムズムズテク」を市川さんが紹介します。

「ムズムズ」したら最後、やらずにはいられない

コンビニのレジ横に置いてある「ひと口羊羹」にふと目がいき、つい買ってしまったこと、ありませんか? ひと口羊羹でなくとも、いちご大福、チーズ入りかまぼこ、チョコレート、肉まん、おでん……でも構いません。そして、つい買ってしまったひと口羊羹は、いつにも増しておいしく感じませんか?

目に入ったとたん、感情が揺れ動き、潜在的ニーズが引き出され、買わずにいられなくなる。この「〜したくなる」が、「ムズムズ」です。

相手を「ムズムズ」させられたら、相手の「叶えたい」「欲しい」という想いを引き出し、説得ではなく納得で、自発的に行動させてあげられます。そのため、お互いストレスフリーで理想の結果を手に入れられるのです。

さて、レジ前で「ひと口羊羹」を見て「ムズムズ」し、購入に至ったのは、一見、本人の心のままの行動と思われるかもしれません。しかし実は、お店の人が、レジ横に手軽なお菓子を置いて、利用客が手に取りやすい環境を作っています。

さらに、定番のお菓子を並べることで、そのお菓子を食べた時のことが容易に想像できる状態にしているのです。「そういえば、甘いものが食べたいな」という潜在的ニーズが引き出され、しかも、次の人が並んでいるという限定的な場だからこそ「今買っておこう」という行動につながっていくのです。

「食べたい」となった時点で、自分の感情、意思になるので、他人にそう思わされたという感覚なく、そのムズムズを叶えようと、「これもお願いします」となります。

「欲しいものを、欲しいタイミングで、目の前にポン!」と置く。

こんなちょっとした仕掛けや対応をすることで、他人を「ムズムズ」させることができ、「ムズムズ」した本人は自発的に動き出すのです。

相手をムズムズさせるために知っておくべき5つの心理

人の基本的な心理を理解できると、相手にとってどうしたら信頼できる自分になれるのか、どう行動すればよいかがわかってきます。

ムズムズさせるために知っておくべき人間の心理の特徴は、大きく次の5つです。

1 人は鏡であり、相手の反応は自分の言動のフィードバックである
2 人には認められたい、褒められたいという欲求がある
3 人は大切に扱われたいと思っている
4 人は自分の可能性を信じてくれる人が好き
5 人は自分をわかってくれる人を求めている

男女の心理の違いや、タイプによって違う部分もありますが、まずは基本となるこの5つの心理を理解しておけばいいでしょう。

相手の反応に一喜一憂するのではなく、「自分がどう思われているのか」以上に「相手はどうしてほしいのか」「今の自分には何ができるのか」を考え、行動することで、相手から信頼され、ポジティブな思いを持ってもらいやすくなります。

相手がムズムズするポイントを探り、くすぐりましょう。

「マーケティング界のドラッカー」と称されるアメリカの学者セオドア・レビット博士の「ドリルを買いにきた人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」という有名なお話があります。

何ミリの穴を何回転であけられるかという商品説明より、ドリルを買いにきた人の目的と欲求(ニーズ)を把握し、小さな穴であればキリを勧めればいいという話です。

相手が動き出したくなる「ホットボタン」の探し方

ただ、キリを勧めるだけでは、ドリルの代替品を提供したに過ぎないので、お客さまをムズムズさせたことにはなりません。ムズムズを引き出すには、相手が思わず動き出したくなる「ホットボタン」を探し、押してあげること。そのためには、「目的」以上に、その目的を持った「理由(真の動機)」にフォーカスすることです。

ドリルを買いに来た人の例で見てみましょう。

・「目的」にフォーカス
ドリル購入の「目的」は? → 穴をあけたい → 穴をあける「目的」は? → 帽子を掛けるハンガーを壁に取り付けたい → キリで対応可能 → キリのご購入 満足

・「理由(真の動機)」にフォーカス
ドリル購入の「目的」は? → 穴をあけたい → 穴をあける「目的」は? → 帽子を掛けるハンガーを壁に取り付けたい → その「理由」は? → 大好きな帽子に囲まれたい → ピンフックなら可能 → 欲しい! 使いたい! 大満足!!

相手の真の動機がわかると、枠に縛られずに、よりよい方法を提案することができます。


お客さまに限らず、上司や部下、パートナーやお子さんに対しても一緒で、まずはヒアリングです。相手をムズムズさせるためにも、相手が心から望んでいることを、理解しようとする姿勢を持つところから始めましょう。

相手が「〜したくなる」ようにすることで、「ムズムズ」を引き出すことができます。

こちらが先に、相手の理想の未来と、そこに行くためのルートをありありと描き、エスコートしてあげましょう。

そのためにも、人間心理をよく理解し、相手へのヒアリングを欠かさないことです。

真の動機を引き出してあげることで、ムズムズさせてあげましょう。

(市川 浩子 : 一般社団法人ジャパングッドリレーションアカデミー代表理事)