CATLはスケボー型シャシーの開発を通じて、電池メーカーからEVメーカーに近づきつつある。写真は福建省寧徳市の本社ビル(同社ウェブサイトより)

中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は、EV(電気自動車)のシャシー(車台)、車載電池、モーターなどの駆動システムを一体化した「スケートボード型シャシー」の実用化にめどをつけ、2024年7〜9月期にも量産を開始する計画だ。

同社が開発したスケボー型シャシーは、中型乗用車に応用した場合の航続距離が1000キロメートルを超え、わずか5分間の充電で航続距離を300キロメートル延長できる性能を備えるという。CATLのチーフサイエンティストを務める呉凱氏が、11月30日に開催されたEV業界のフォーラムで明らかにした。

クルマの車体を上下に分割

スケボー型シャシーは、もともとはアメリカ自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)が2002年に提唱したEV開発手法のコンセプトだ。クルマの車体を上下に分割し、下側のシャシーを標準化して電池や駆動システムなどの機能を集約する。

EV向けの車載電池は薄く平らな形に成形できるため、スケボー型シャシーとの相性がいい。その上に異なるデザインのボディを載せることで、多種類のモデルを短期間かつ低コストで開発することが期待でき、EVの開発手法に革新をもたらす可能性がある。

スケボー型シャシーの開発では、標準化された(決まった大きさの)シャシー内に、いかに大容量の電池を組み込むかが課題だった。現在主流の車載電池は、多数の電池セルをひとまとめにした電池モジュールを基本とし、複数の電池モジュールと冷却機構、制御システムなどを組み合わせた電池パックに仕立ててシャシーに搭載している。

この方式はスペース効率が低く、スケボー型シャシーではEVの航続距離を伸ばすのが難しい。そこでCATLは、「セル・トゥ・シャシー(CTC)」と呼ばれる最新技術を採用することで問題を克服した。CTCは電池モジュールと電池パックを廃止し、電池セルをシャシーに直接組み込む方式のことで、限られたスペースにより多くの電池セルを詰め込める。

第1号モデルは哪吒汽車から

CATLの呉氏によれば、2024年7〜9月期に量産を始めるスケボー型シャシーを最初に採用するのは、中国の新興EVメーカーの哪吒汽車(ネタ)になる可能性が高い。CATLと哪吒汽車は2023年1月、スケボー型シャシー(の応用)に関する提携に合意済みで、第1号モデルは2024年末に発売される見込みだ。


CATL製のスケボー型シャシーを採用した第1号モデルは、新興EVメーカーの哪吒汽車から発売される見込みだ。写真は2023年1月の両社の提携調印式(CATLのウェブサイトより)

とはいえ、中国の自動車業界内にはスケボー型シャシーに対して否定的な見方も少なくない。財新記者の取材に応じた乗用車メーカーの技術責任者からは、次のような懸念の声が聞かれた。


本記事は「財新」の提供記事です

「車体の上部と下部を分離した設計では、クルマの衝突安全性の確保が構造的に難しくなる。また、電池をシャシー内部に集中配置すると、電池の(交換や修理などの)メンテナンスの難度が上がってしまう」

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月30日

(財新 Biz&Tech)