ファーウェイは自社ブランドのEVを生産せず、自動車メーカーに技術や部品を販売するビジネスモデルを採る。写真は長安汽車傘下の阿維塔科技のスマートEV(同社ウェブサイトより)

中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は11月26日、スマートカー向けのシステム開発や部品のソリューションを専門に手がける新会社を設立すると発表した。同社が持つ技術資産や人材を移管すると同時に、提携先の自動車メーカーなどの出資を広く受け入れる計画だ。

新会社の母体となるのは、ファーウェイの事業部門の1つである「スマートカー・ソリューション・ビジネスユニット(スマートカーBU)」。同社のプレスリリースによれば、新会社は「自動車のスマート・ドライビング・システムおよびコンポーネントの分野で世界的なリーダーになる」ことを目指している。

協業先にとっては「踏み絵」

中国の国有自動車大手の長安汽車は、ファーウェイの新会社への資本参加をいち早く表明。設立時の資本金の最大40%を出資すると発表した。

ファーウェイの説明によれば、新会社の資本構成は、当初は長安汽車の持ち分を除くすべてをファーウェイが保有する。その後、増資や株式譲渡を通じて戦略的パートナーの出資受け入れを進めるに伴い、ファーウェイと長安汽車の持ち株比率は徐々に希釈されるという。

この発表は、中国の自動車業界に動揺を与えた。自動車メーカーの立場で見れば、ファーウェイの新会社に出資するか否かは、同社の自動運転技術を採用するかどうかの決断を迫るものに等しいからだ。

中国の中堅自動車メーカーの賽力斯集団(セレス)は、スマートEV(電気自動車)の新ブランド「問界(AITO)」を共同で立ち上げるなど、現時点でファーウェイとの関係が最も深いとされる企業だ。

同社は新会社の設立発表と同じ日に声明を出し、ファーウェイから出資を打診されていることを明かしたうえで、「前向きに検討している」と述べた。国有自動車大手の北京汽車集団の関係者は、財新記者の取材に対して「わが社も出資を検討する可能性が高い」と語った。

ファーウェイによる新会社設立の裏には、同社の自動運転技術を採用する自動車メーカーのブランドを超えた連帯を促すと同時に、外部資本の導入で開発負担を軽減する狙いもあると見られている。

自動運転技術は“金食い虫”

「中国の自動車業界では、自動運転技術の開発が想定を上回る“金食い虫”であるとの認識が広がっている。ファーウェイが(新会社設立による)スマートカーBUの分離を決めたのも、先行投資の大きさに対してリターンが低すぎることが一因だ」。財新記者の取材に応じたある自動運転技術の専門家は、そう分析する。


ファーウェイはスマートEV関連の技術開発に巨費を投じているが、損益は大幅な赤字だ。写真は2023年の4月の上海モーターショーの展示ブース(同社ウェブサイトより)

2019年に発足したスマートカーBUは、ファーウェイの主要事業のなかで唯一の赤字部門だ。年間10億ドル(約1489億円)を超える開発費を投入しているが、2023年上半期(1〜6月期)の決算報告書によれば、スマートカーBUの売上高は(半年間で)わずか10億元(約209億円)だった。


本記事は「財新」の提供記事です

ファーウェイの自動運転技術そのものは、自動車業界内で高く評価されている。今回の新会社設立と外部資本の受け入れ、そして、それに対して自動車メーカー各社がどのような決断を下すかは、中国における自動運転技術の開発競争の行方に大きな影響を与えそうだ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月28日

(財新 Biz&Tech)