コンサルティング市場は拡大傾向にあり、「フリーコンサルタント」という働き方にも注目が集まっています(写真:takeuchi masato/PIXTA)

特定の組織に属さず、個人がその能力やスキルで仕事を請け負う「フリーランス」という働き方が、日本にも徐々に定着し始めています。

フリーランスとして活躍できる職種はますます増加していますが、そのなかでも、今注目なのがフリーランスコンサルタント(フリーコンサル)です。本稿では、コンサル業界を熟知する浴野真志氏、高倉諒一氏が上梓した新刊『フリーランスコンサルタントの教科書』より、フリーコンサルの実態について解説します。

フリーコンサルタントという働き方に興味を持った人にとって、非常に気がかりなのが「本当に仕事が得られるのか?」という点でしょう。

当然ながら、独立後、案件を獲得できるかどうかは、その方のコンサルタントとしての経験やスキルに寄るところもあり、一概にどうとはいえません。しかし、1ついえるのは、近年、フリーコンサルタントの需要は確実に伸びているということです。

コンサルティング市場は拡大傾向

コンサルタントとして働いている方であればご存じでしょうが、2010年代より、コンサルティング業界は急激な拡大を続けており、2021年度の国内市場規模は1兆5761億円にのぼります。

市場環境の急激な変化やDXの推進などの影響もあって、2021〜2027年の年間平均成長率は39%と見込まれ、2027年には2.2兆円に達すると予想されています(コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社推定)。

コンサルティング業界は、「日本で唯一の成長産業」ともいわれているのです。

コンサルタントを活用したい企業がこれだけ増えていれば、比例するようにフリーコンサルタントの需要が増えることは想像に難くないでしょう。コンサルティングファームだけでは優秀な人材をまかなうことが難しくなるからです。

そのニーズの高まりは、フリーコンサルタント向けの案件マッチングサービスが増加していることからもよくわかります。

その数は正確には把握されていませんが、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が作成した「フリーランス・副業人材サービスカオスマップ2023」を見ると、そこに紹介されているコンサル系のマッチングサービスだけでも、サービスを提供する企業が20社以上にものぼることがわかります。

コンサルタントを雇う時代へ

現在、フリーコンサルタントが請け負う仕事の多くは、事業会社から発注された案件ではなく、さらにその先のコンサルティングファームから発注された案件となっています。

コンサルティングファームにおけるコンサルティング業務は、一般的にチームで取り組むことが多いので、ファームだけで必要なスキルセットを持った人員を確保できない場合、即戦力となるフリーコンサルタントが必要とされるのです。

事業会社が直接、フリーコンサルタントに仕事を依頼するケースもありますが、現在、その案件数は少なく、全体の2〜3割程度です。組織に属さないフリーランス個人との直接契約を不安視する企業は、まだまだ多いのです。

しかしながら、今後は事業会社がファームを通さずにコンサルタントを雇うケースが少しずつ増えていくことが予想されます。というのも、少子高齢化が急速に進み労働人口が減少していく日本では、さまざまな企業が人手不足に陥り、その分フリーランスを活用することが当たり前の時代が来ると思われるからです。

もちろん、「社内システムを新しいものに総入れ替えしたい」「M&Aを進めたい」といった大規模な案件の場合、1人のコンサルタントでは到底、対応しきれません。コンサルティングファームが主導してチームを組織し、プロジェクトを推進していく必要があるでしょう。

しかし、「新事業立ち上げに向けたアイデアを一緒に考えてほしい」「社内の新事業検討チームの中に加わってほしい」といった参謀やチームリーダーのような役割が期待される場合はどうでしょうか。

専門的な知識を持ったフリーコンサルタントなら、1人でも十分にその役割を果たせるはずです。そうすれば、ファームに依頼するよりも費用を抑えることもできます。

今後、しっかりとした案件マッチングサービスを使えば、フリーコンサルタントの実績やスキルがある程度保証されることがわかり、事業会社が直接、フリーコンサルタントを雇う機会も多くなっていくのではないでしょうか。今まで費用面などで、コンサルタントの活用を見送っていた企業からの依頼も増えていくと考えられます。

企業の人手不足が進めば、特に優秀な人材を社員として採用するのは難しくなっていきます。一方、成長著しいコンサルティング業界には、将来有望な人材が集中する傾向があります。

ここ数年、就職先としてコンサルティングファームに人気が集中しており、例えば、東大・京大の2025年卒業生の就活人気ランキングでは、TOP10のうち半分以上の7社がコンサルティングファームでした。

今後、社内だけでは解決が難しい課題に対して、外部の専門家の力を借りたいと考える場面はますます増え、フリーコンサルタントが活躍できる場が広がるのではないでしょうか。


『フリーランスコンサルタントの教科書』より

フリーコンサルタントのキャリアパス

フリーコンサルタントになった目的によって、そのキャリアパスは異なります。

起業の資金や時間を作るために独立したのであれば、自分の事業が軌道に乗っていけば、徐々にコンサルティング案件の稼働率を減らしていく人が多い傾向にあります。その後は、そのまま辞めてしまう人もいれば、副業として続ける人もいます。

ワークライフバランスを重視したい人も、あくまでフリーコンサルタントを生活のための手段と考えている人が多いので、そのまま続ける場合もあれば、事業会社に就職するなど、別の仕事につくケースもあるでしょう。

フリーコンサルタントとしてバリバリ働きたいという人は、コンサルティングのプロとして仕事を続ける事が目的なので、キャリアパスという考えは当てはまらないかもしれません。

ただ中には、ある程度フリーランスとして実績を積み、蓄えもできたところで、仲間を集めてコンサルティングファームを創業する人もいます。

「ファームに戻る」という道も


もう1つ、フリーコンサルタントのキャリアとして考えられるのが、コンサルティングファームに再就職するという道です。独立後、しばらくフリーランスとして働いてから、ファームに戻る人もいます。

その理由はさまざまで、「起業したけれどうまくいかなかったから」「独立してみたけれど、やっぱりフリーランスより会社員のほうが収入が安定しているので」という人もいれば、「発注元のファームから誘われて」「会社員時代の先輩がファームを創業したので」という人もいます。

フリーランスとしてコンサルタントをしていた経験は、個人の責任のもとプロジェクトを回すことができ、収益に対する感度も高いと評価されます。また、コンサルタントとしてブランクがないことも再就職にプラスに働くでしょう。


『フリーランスコンサルタントの教科書』より

(浴野 真志 : 株式会社Groovement 代表取締役)
(高倉 諒一 : 株式会社Groovement 取締役)