新NISAが始まる前に有望銘柄を発掘しよう(写真:bee / PIXTA)

2023年に3万円台を回復した日経平均株価はその後も堅調だ。2024年初には新NISAも始動し、個人投資家の流入が活発化するだろう。

『週刊東洋経済』12月16日号の第1特集は「株の道場 新NISA時代に勝てる株」。本特集では『会社四季報』2024年新春号のエッセンスを完全に先取りした。いち早く「お宝銘柄」を見つけるヒントになるはずだ。


12月18日に発売される『会社四季報』2024年新春号では、3月期決算企業は中間決算を経ており、12月期企業は今期を4分の3周し、カレンダー上で今期はほぼ終わっている。業績の着地点はある程度判明し、お宝銘柄を探しにくい面もあるが、注目は来期の言及部分だ。

3月期企業では業績記事欄で初めて来期について1行程度触れられ、12月期企業では過半を占めている。来期情報を先取りすれば、有望銘柄の発掘も十分可能だろう。

まず、1つの見方として挙げたいのは、12月期企業の直近3カ月の業績だ。

例えば、今期減益予想だとしても、四半期ごとの業績を見ると減益幅が徐々に縮小し、直近3カ月が増益に転じていれば、今期通期業績は減益でも来期は増益に転じる可能性がある。直近3カ月の業績を「会社四季報オンライン」や決算短信でチェックしておきたい。

投資家は累計の数字を気にするが、12月期企業は来期が焦点になるからこそ、足元の3カ月を重視すべきだ。それを踏まえ、来期について強気の予想や記事コメントがあるなら有望銘柄に据えてよいかもしれない。

チャートや指標が重要

3月期企業は半周が過ぎて、好業績ならば会社側が増額を発表。増額が未発表でも進捗率がかなり鮮明であり、そうした銘柄はすでに買われている。

ただ、今回はいつも以上にチャートや指標を見てほしい。

年初来高値をうかがう日経平均株価上昇の要因は、市場の攪乱要因だった米国の長期金利が急に低下し始めたこともあるが、10月末からの決算発表によって企業業績の好調さが確認されたことも大きい。

PERの計算式を変形すると「株価=PER×1株利益」となるが、東証プライム市場全銘柄の今期予想PERは10月が15.2倍、11月が16倍だから、そう大きく上昇したわけではないし、日経平均の予想PERも14倍台でほぼ安定している。株価を押し上げた要因はやはり1株当たり利益(EPS)の上昇といっていいだろう。

今後、景気が安定し利下げが視野に入ってくると、中期的な株価上昇の期待値が上昇し、PERの水準が切り上がる株価上昇が始まるだろう。

そうなるとPERが低水準の銘柄が物色される。一方、指標やチャートから見て割高な銘柄は避ける必要がある。

四季報ではチャートの隣の株価指標欄に実績PERの過去3期の高値平均・安値平均を掲載している。この高値と安値の間は、魚に例えるなら「生息域」。業績は好調なのにPER安値付近〜以下の銘柄は、注目される可能性が高い。

また実績PERの高値平均が20倍、安値平均が10倍の銘柄を保有し、仮に20倍を超える局面が到来したら、いったん利益確定するのも一法だ。


株価指標欄の予想PERは今期に加え来期にも注目したい。

今期に比べ来期が大きく低下しているなら要注目だ。現状の株価は来期業績の好調を織り込んでいないと考えられ、お宝銘柄発掘の契機になるだろう。

有望株を割安なタイミングで買う

PERは割安・割高だけではなく、市場の人気を測る指標でもある。

売り上げ規模が同程度の機械メーカーを並べて、片方はグローバル展開でもう片方は国内一本足打法だと、世界的な好景気で一気に売り上げを伸ばす前者のほうが人気となりPERに開きが生じる。同業でもマーケットが違えばPERの生息域も異なる。その点には注意したい。

PERも一定ではなく、新規事業がヒットし営業利益率が改善すると15倍が20倍になることもある。ただ、大抵は高値・安値の間で推移するため、変化を見逃さないようにしたい。

注意点は、つねにPERが低い万年割安銘柄を買うのではなく、有望株を株価が低いタイミングで買うということ。先ほど述べた生息域を意識し、ポテンシャルを確かめたうえで低いときに買うのがポイントだ。

四季報誌面に落とし込むと、記事の右側の業績欄、左側の材料欄に分かれるが、PERは人気や将来的な期待値の表れだ。そこで材料欄に注目したい。PERが上がる材料を見極めるのが、お宝銘柄発掘への近道でもある。


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株式分割銘柄に注目

足元で市場の関心が高いのは、半導体セクターだ。

東京エレクトロンは上方修正を発表し、減益幅が縮小したことで一時上場来高値を更新し、SCREENホールディングスも高値を更新中だ。AIの本格的な普及が予想され、次の半導体サイクルのピーク時需要は過去最高になるといわれ、多くの投資家が興味を持っている。製造装置を手がけるディスコを筆頭に関連銘柄は幅広くあるので、綿密に調べていくことだ。

新春号が発売され年が明けると新NISA(少額投資非課税制度)が始まるので、今から最低購入額にも注目したい。

50万円以上の銘柄は、個人投資家を意識し株式分割するかもしれない。東証は5万円から50万円の間に収めるよう指導しており、NTTは6月末に25分割した。今では2万円弱で単元株を購入でき、株価も悪くない。

とくに消費者向けの企業は個人投資家を意識せざるをえない。ローソンやしまむらなど、値ガサ株はたくさんある。投資家層の拡大を目的に、株式分割をする企業は今後も増えるだろう。

配当も新NISAの開始に伴い個人投資家から注目されやすい。

4%の高利回りの銘柄はもちろん、長期にわたり減配せず配当を維持・増配している「累進配当株」や、毎期増配を続ける「連続増配株」が狙い目。山陰合同銀行は24年3月期から累進配当を導入すると発表しているが、こうした銘柄は、株価が下がったところで拾いたい。

新NISAは、若年層や女性を呼び込む新たな契機になる。食品、外食など生活に身近だったり、知名度の高い銘柄が買われやすくなるはずだ。オービックなど業績が下がらない高収益企業も、安心感から人気を博すだろう。

一方、値上げ効果で今期好調な企業には要注意。インフレが落ち着き資源価格が下がり値下げに転じると業績も下降する。うかつに飛びついてはいけない。

(構成:大正谷成晴)


(山本 隆行 : 『会社四季報』元編集長)