RISC-Vはオープンソースの命令セットアーキテクチャで、ライセンス料を支払わずに利用できることから大きな注目を集めています。ところが、RISC-Vを用いたチップの開発で有名な半導体企業「SiFive」が従業員の20%を解雇してチップ設計事業を縮小したことが明らかになりました。

The Risk of RISC-V: What's Going on at SiFive?

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記事作成時点で市場に流通しているCPUのほとんどはx86やArmといった命令セットアーキテクチャをベースに開発されています。このうちx86はIntelやAMDなどの極少数の企業にのみ利用されており、比較的多くの企業に利用されているArmも利用時に巨額のライセンス使用料が発生します。このためCPU業界への新規参入は困難な状態が続いていました。

RISC-Vはカリフォルニア大学バークレー校で開発された命令セットアーキテクチャで、x86やArmとは異なりオープンソースで公開されています。このためRISC-VはCPU開発の門戸を広げる存在として注目されており、多くの企業がRISC-Vを用いたCPUの開発に取り組んでいます。著名な企業の中ではQualcommが2023年10月17日にRISC-Vを採用したスマートウォッチ向けCPUの開発を発表しており、近い内にRISC-Vを採用したチップが量産開始されることが期待されています。

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SiFiveはRISC-VベースのCPU開発を中心に活動している半導体企業で、データセンター向けCPUや自動車向けCPUなどを開発しています。2022年9月にはNASAがSiFiveのRISC-VベースCPU「SiFive Intelligence X280」を次世代高性能宇宙飛行コンピューティング(HPSC)のコアCPUとして採用したことで話題を呼んでいたほか、2023年10月11日には「SiFive Performance P870」と「SiFive Intelligence X390」を発表して研究開発の活発さを示していました。

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しかし、テクノロジー関連の情報を扱うジャーナリストのイアン・カトレス氏によると、SiFiveが2023年10月に物理設計エンジニアリング部門、営業部門、製品部門、経営陣を含む100人〜300人以上の従業員を一時解雇したという情報が複数の情報筋から提供されたとのこと。また、SiFiveの広報担当者は従業員の20%を一時解雇したことを認めており、一時解雇の理由について「SiFiveは半導体市場の急速な変化に対応するために、すべてのチームで再調整を進めています。その結果、一部の従業員が一時解雇されました」と述べています。

SiFiveは「ゼロからCPUを独自設計する」という業務のほかに「顧客から要件を受け取り、カスタムコアを作成する」という業務も行っています。カトレス氏は情報筋から「SiFiveのポートフォリオには独自設計CPUはもう残っておらず、今後はカスタムコア事業を主力事業とする」という情報も得たとのこと。ただし、カトレス氏はカスタムコア事業へ移行するという情報は一時解雇情報と比べて不確かな情報であると説明しています。