2023年9月末に発表されたRaspberry Pi 5はArm製CPU「Cortex-A76」や独自開発のI/Oコントローラー「RP1」を搭載しており、CPUやGPUの性能がRaspberry Pi 4から2〜3倍に向上したといわれています。Raspberry Piを開発するRaspberry Pi財団が公式ブログで、前世代のRaspberri Pi 4とベンチマークスコアを比較した結果を公開しています。

Benchmarking Raspberry Pi 5 - Raspberry Pi

https://www.raspberrypi.com/news/benchmarking-raspberry-pi-5/

Raspberry Pi 5のスペックは以下の通り。

モデル名Raspberry Pi 5Raspberry Pi 4 Model BSoCBroadcom BCM2712Broadcom BCM2711CPU2.4GHz 4コア Arm Cortex-A761.5GHz 4コア Arm Cortex-A72GPUVideoCore VII 800MHzデュアルコア VideoCore VI 500MHz無線LANIEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz デュアルバンドIEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz デュアルバンド (Cypress CYW43455)BluetoothBluetooth 5.0
Bluetooth Low Energy (BLE)Bluetooth 5.0 (4.2 ready)
Bluetooth Low Energy (BLE)USBUSB 3.0 2ポート
USB 2.0 2ポートUSB 3.0 2ポート
USB 2.0 2ポートPCIeシングルレーン PCI Express 2.0なしGPIO40ピン 2.54mmピンヘッダー40ピン 2.54mmピンヘッダーカードスロットmicro SD
M.2 NVMe SSD(別売の M.2 HAT が必要)micro SD

まず、Raspberry Pi財団はGeekbench 6を使ってベンチマークスコアを計測しています。Geekbenchは、単に無意味な数値を計算するのではなく、ウェブサイトをロードしたり、PDFをレンダリングしたり、画像にフィルタを追加したりといった、コンピューターの一般的な使用方法に基づいたテストを実行するように設計されています。

GeekbenchのCPUベンチマークでは、シングルコアとマルチコアという2種類のパフォーマンスが測定されます。ただし、ベンチマークの性質上、Geekbenchのスコアは実行ごとに大きく異なることもあります。設定ファイルでforce_turbo=1を設定すると多少マシになるものの、それでもやはり正しい測定結果を知るには、何度も実行して結果を平均化する必要があるとRaspberry Pi財団は述べています。

また、Raspberry Pi OSの64ビット版を実行している場合、16KBのページサイズが有効になっているため、ARMv7 32ビットバイナリとの互換性を犠牲にしつつも、パフォーマンスはわずかに向上するとのこと。そこで、Raspberry Pi 5でも16KBと4KBの両方のページサイズを使ってテストを行っているそうです。

以下がシングルコアパフォーマンスの成績。パフォーマンス測定は100回以上実行し、その平均を取っています。



マルチコアパフォーマンスの成績はこんな感じ。シングルコア・マルチコアの両方で、Raspberry Pi 5はRaspberry Pi 4の2倍以上のスコアをたたき出しています。



また、Raspbeery Pi財団はRaspberry Pi 5をオーバークロックした結果も公表しています。CPUを2.4GHzから3.0GHzに、GPUを800MHzから1GHzにオーバークロックした結果、シングルコアスコアのスコアは1.2倍に向上したとのこと。ただし、マルチコアテストではパフォーマンスの向上がほとんど見られませんでした。この原因について、Raspberry Pi財団は「おそらくメモリ帯域幅の制約によるもの」とみています。

また、Raspberry Pi財団は有志によるベンチマーク検証の結果を共有しています。エンジニアのジェフ・ギアリング氏は、ベンチマーク結果を以下のGitHubで公開しており、Raspbeery Pi財団はその中でも「Raspberry Pi 5の暗号化性能はRaspbeery Pi 4のおよそ45倍高速である」という結果を取り上げています。

Raspberry Pi 5 model B · Issue #21 · geerlingguy/sbc-reviews · GitHub

https://github.com/geerlingguy/sbc-reviews/issues/21

さらに、オーストラリアの電子部品通販サイトであるCore Electronicsも以下のようなベンチマーク検証の結果を公開しています。全体的にRaspberry Pi 5がRaspberry Pi 4を上回る結果を出していることがわかります。



そして、Raspberry Pi財団は「最も興味深いと感じたベンチマーク」として、テクノロジー系ブログのSeeedStudioによるベンチマークを紹介しています。

SeeedStudioはモバイル向けのディープラーニング推論フレームワークであるncnnを使っているのが特徴。Vulkan APIを介してGPUアクセラレーションを提供しているとのことで、Raspberry Pi 5とRaspberry Pi 4で検証した結果をグラフにまとめたものが以下。棒グラフが短いほどパフォーマンスが優れていることを示しており、いずれにおいてもRaspberry Pi 5のスコアがRaspberry Pi 4のスコアを上回っていることがわかります。



Raspberry Pi財団は「2019年に発売したRaspberry Pi 4は1.5GHzのクアッドコアArm Cortex-A72プロセッサーを搭載し、2012年の初代Raspberry Piモデルと比べて約40倍高速でした。しかし、2.4GHzのクアッドコアArm Cortex-A76プロセッサーを搭載したRaspberry Pi 5では、CPUとGPUの性能が2倍から3倍、メモリとI/O帯域幅が約2倍に向上し、初めてRaspberry PiのフラッグシップデバイスにRaspberry Pi独自開発のチップを搭載しました。私たちは、この性能向上を誇りに思っています。しかし、何よりも素晴らしいのは、私たちがこの数年間でどれだけの進歩を遂げたかを、実際に使っている人たちが実感してくれることです」とコメントしました。