アメリカに拠点を置く家電メーカー・SharkNinjaが、自社製のこげつき防止フライパンが太陽の表面温度を越える温度で製造されていると主張し消費者を欺いたとして、集団訴訟を起こされました。

Frying pan company sued for claiming temperatures that rival the Sun - The Verge

https://www.theverge.com/2023/10/20/23925424/sharkninja-lawsuit-frying-pan-temperatures-hotter-than-sun

SharkNinjaはロボット掃除機などで知られるSharkブランドと、ブレンダーをはじめとするキッチン用品のNinjaブランドを手がける小型家電メーカーで、今回の訴訟で問題となったのは特殊な製造工程により焦げ付きにくく加工がはがれにくいとうたっている「Ninja NeverStickプレミアム調理器具セット」です。

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SharkNinjaの公式サイトによると、NeverStickシリーズの調理器具は、たった900°F(約482℃)で作られている従来のフライパンとは異なり、「3万°F(約1万6648℃)で超加熱されたプラズマセラミック粒子がフライパンの表面に融合し、超硬質で質感のある表面を作り出し、当社独自のコーティングと相互作用して優れた結合を実現します。その結果、NeverStickフライパンはくっついたり、欠けたり、剥離したりしません」とのこと。

以下は、実際に裁判資料で取り上げられているSharkNinjaの宣伝です。



しかし、消費者の代表として原告となったパトリシア・ブラウン氏は、「太陽の表面は1万340°F(約5700℃)という猛烈な高温である」というNASAの資料を引用して、その3倍近い温度で作ったとしたSharkNinjaの表現は「虚偽的であるのと同時に荒唐無稽である」と非難しました。

また、ブラウン氏は「フライパンの材質であるアルミニウムが4478°F(2470℃)で気化、つまり蒸発することを考えると、フライパンをこの温度まで加熱するのは物理的に不可能」とも主張しているほか、オーブンで使用できる温度が500°F(260℃)までしかないことも指摘しています。



しかし、SharkNinjaのフライパンが本当に太陽以上の温度で製造されている可能性もあります。例えば、The Washington PostはSharkNinjaとは無関係な2002年の記事で、テフロン加工について「焦げ付きを防ぐ最新のハイテク技術は、デンマークで開発され、Scanpan調理器具で使用されているセラミックチタンというコーティングです。このチタンとセラミックの混合物は、原子が荷電粒子の雲に分解されるほどの高温(3万°F)になり、アルミニウム鍋の表面に超音速で発射され、そこで金属に直接固定されるので、非常に硬くて傷がつかない表面を作り出します」と紹介しています。つまり、太陽の3倍近い温度になるのはフライパンに吹き付けるコーティングなので、フライパン自体はさほど高温にならないというわけです。

この訴訟を取り上げたIT系ニュースサイトのThe Vergeは、SharkNinjaに主張の真偽を問い合わせましたが、返答は得られていないとのこと。The Vergeは「ブラウン氏は『SharkNinjaの主張は派手で虚偽的なマーケティングに過ぎない』と主張しています。それは事実かもしれませんが、私はSharkNinjaの言い分も聞いてみたいです」とコメントしました。