ペルシャ絨毯店で起こった「まるで奇跡」のような出来事とは?

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 1979年のイラン革命以前に製作されたものを中心に取り揃えているペルシャ絨毯店「ラグ&カーペット ティーズ」(神戸市東灘区)。ペルシャ絨毯愛が溢れるオーナーの玉木康雄さんは、なかなか巡り合えない“奇妙な出来事”に最近遭遇したという。

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 玉木さんがいつも通りペルシャ絨毯を仕入れたところ、何やら見覚えのある模様の絨毯が目に入った。そこにあったのは、5年以上前に入荷して店で保管している絨毯と同じ模様の絨毯。玉木さんは、「この2つの絨毯は100年以上前に作られたものですが、同じ時期に同じ工房で平行して製作されたと考えて間違いない」と話す。

 2つの絨毯を比較してみると、同じような位置に経年による色むらが出ている。そもそも絨毯を製作する際には必要な羊毛を一度に染めて全量用意するわけではないそうだ。途中で材料を足していきながら製作を進めるため、完成当初は同じブルーに見えていた模様が、糸を変えた部分が経年で色むらが発生して縞状に色の差が出てきているのだそう。

「同じ時期に同じ工房で製作されない限り、これだけ同じように色むらが出ることはない。何年もの時間差で、100年前の絨毯が同じところで再会するって、すごくないですか?」と玉木さんは目を輝かせていた。

100年以上前に作られた絨毯 
同じような位置に経年による色むらが出ている

 片方には部屋に敷かれ自然光に当たっていた形跡が見てとれた……と玉木さん。もう一方は巻かれて大事に保管されていたようで、光に晒されていない様子だという。

「このようなことから全く同じ素材と染料で同時期に製作された絨毯を比較して、その差異を確認できるというすごく貴重な代物です」(玉木さん)

 見比べてみると、使用されていた方は艶が出て美しく経年変化でほんのりフェードがかった色味はこなれた感じ育っている。未使用のものは100年の時を感じさせないほど美しく、時間による熟成だけが加わったカラーはまるでタイムマシーンでやって来たかのような雰囲気を醸し出す。

100年以上の時を超え再会した2つのペルシャ絨毯

 同店を訪れる客は“絨毯ファースト”の考えの人も多いという。

「一点ものの絨毯の色柄に合わせてソファーの色をオーダーされたお客様がいました。また、絨毯に合わせてオリジナルのダイニングテーブルも製作依頼したこともあります」(玉木さん)

店内には多くのペルシャ絨毯が並ぶ

 玉木さんが仕入れた絨毯は同店以外に、明治5年創業の日本で一番古い洋家具店である永田良介商店(神戸市中央区)でも取り扱われている。30年間3代に渡って付き合いがあるそうで、顧客からの相談を受けてこれまでに家具に合う絨毯を多く提案してきたという。

 最後に、大切な絨毯を長くきれいに使っていくためにはどうすればいいのかを聞いてみた。特別なことは特に必要ないそうだが、フリンジ(房飾り)部分や、エッジ部分(房飾りと90度違う辺の部分)にできるだけ負荷をかけないのがポイントだという。「この部分に雑に掃除機をかけないように注意してほしい」と玉木さん。続けて、「一番は絨毯に愛とリスペクトを持つことが大事かもしれません」と笑顔をみせた。

(取材・文=バンク北川 / 放送作家)
ラグ&カーペット ティーズ