焼きそばは店で食べるにかぎる。小石原はるかの選ぶ名軒4

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どこで何を食べるか、毎食本気で考え抜くライターの小石原はるかさんがホストとなって食の対談を行う本企画。今回は狆討そば仲間瓩離屮蹈ー、塩崎省吾さんと共に、お店で食べる焼きそばの魅力を考える。

小石原はるか

こいしはら・はるか/うどん、焼きそば、肉と、好きなものにはとことんハマる“偏愛系”ライター。『東京最高のレストラン』(ぴあ)には毎年寄稿。最新刊は『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)。

論客 塩崎省吾 焼きそばブロガー

しおざき・しょうご/ブログ「焼きそば名店探訪録」の管理人で、国内外1,000軒以上を食べ歩く。本業は口コミグルメサービス「Retty」のエンジニア。近著に、『ソース焼きそばの謎』(ハヤカワ新書)がある。

本連載「小石原はるかの“食事放談”」の記事一覧はこちら

“お店の焼きそばのおいしさを知ってほしい”(小石原はるか)

小石原はるか(以下、小石原) 大好物の焼きそばを取り上げる日がようやく来ました。私や塩崎さんはお店にあれば必ず頼むほどですが、一般的にはそうではないですかね。もっと広めていきたいのですが。

塩崎省吾(以下、塩崎) 僕もそうだったのですが、〈東洋水産〉の「マルちゃん焼そば」の完成度が高すぎて、外で食べるという考えに至らないのかもしれません。「お店でソース焼きそばを頼んでも、自分で作っても、同じくらいの味なのでは?」と思わせてしまう名品で。

小石原 焼きそば自体の基準値が高くなってしまったんですね。それにしても、塩崎さんのご本を読むと、ソース焼きそばにこんな歴史があったとは。改めてブームのおさらいをしたいです!

塩崎 これまでに四度のブームがありました。最初は戦後の闇市の時代。第二次は1970年代、家庭向け商品の普及ですね。そして第三次は「B-1グランプリ」が始まった2006年頃からで、ご当地ものが人気になりました。それまで焼きそばはどこでも同じだと思われていたのですが、地域差があるのが分かったんですね。

小石原 そして今が第四次の名残ですかね。

塩崎 そうですね。2017年頃に焼きそば専門店が増えたのが第四次で、今もじわじわと広がっています。

小石原 〈神保町 やきそば みかさ〉〈焼きそばのまるしょう〉など、影響力のあるお店ができた頃ですね。焼きそばはなじみがある割に、まだまだ深掘りの余地を残している印象です。

塩崎 まさにフロンティア。今、注目しているのは深蒸し麺なのですが……。

小石原 ああ、タフな食感が素晴らしいですね。

塩崎 やはり分かっていただけますか。普通の蒸し麺は麺に入っているかん水と蒸気が化学反応を起こして黄色くなるのですが、二度蒸しした深蒸し麺は茶色くなります。まるでソースで味付けしたように。表面の水分が飛んで歯応えが良くなったり、炒めやすくなったり。時間が経ってもおいしいのも特徴です。

小石原 最近は深蒸し麺を作る製麺所が減少傾向なんですよね。

塩崎 手間賃を価格に乗せづらいようで。だからこそ深蒸し麺のおいしさを伝え続けたいんです。食べに行くなら、〈福ちゃん〉ですね。

小石原 浅草の地下街にあるお店ですね。オープンスペースなのも風情があって。こちらの麺はソース味の中にも粉の風味が強く感じられます。

塩崎 麺自体がおいしくて。

小石原 なんなら、具なしでもいいんじゃないか、という。〈梅林〉はいかがです?

塩崎 ああ、外せない名店ですね。こちらは深蒸し麺ではないけれど、お店で蒸した麺を使っています。

小石原 焼きそばの種類が尋常じゃない。中でも「肉ソース焼きそば」が……

塩崎&小石原 スペシャリテ!(笑)

塩崎 麺がカリッと焼かれていて、ドライな感じがいいです。

小石原 それは中国料理店ならではの強い火力だからでしょうか。

浅草〈福ちゃん〉

浅草で愛されたのはソースに負けない麺の味。太さ、硬さ、食感を追求して探し出したという長時間蒸した麺(深蒸し麺)は、小麦の風味がしっかりと濃い。それを豚骨や鶏ガラでとったラーメンスープでほぐすのがミソだ。ラードで焼いて香りを出した桜エビと相乗効果をなし、うまみが多重に広がる。

Pick up

さっぱりとしたソース味をうまみ食材が膨らませる。ウスターソースと濃いめの焼きそばソースをブレンド。お酒のアテにもなるのは食材の組み合わせでうまみが増しているから。

シンプルだが充分に考え抜かれた具材。野菜はキャベツのみ。そこに、桜エビや揚げ玉など、歯応えと香ばしさを加える具材が混ざる。「鉄板焼きそば」400円。

お湯ではなく、自家製スープでほぐす。〈福ちゃん〉はラーメンも人気。そのスープは毎日仕込む自家製で、焼きそばを鉄板にのせたときにほぐすためにも使われる。

炒めてもちぎれない、弾力のある深蒸し麺。店主が探し求めたのは、鉄板で勢いよく炒めてもちぎれない強さを持った深蒸し麺。歯切れの良さがありつつ、もちっとした食感も。

福ちゃん (居酒屋)

東京メトロ銀座線浅草駅の改札すぐ。実演販売のような焼き台が目印。来年で60周年で、現在は2代目が継いでいる。

住所:東京都台東区浅草1-1-12 浅草地下街 TEL:03-3844-5224 営業時間:11:30〜21:00、日11:00〜20:00(焼きそばが売り切れ次第終了) 定休日:土 席数:19席

五反田〈梅林〉

中華鍋でバリッと焼いた麺にソースや餡がよく絡む。肉ソース、五目から始まって現在は16種もの焼きそばを作る。お客の要望に応えるうちに増えたというサービス精神は、その盛りの良さにも。塩崎さん曰く「サイドメニューには手が伸びない」というほどの量だが、焼きそばだけを何種も食べたいというのが本音かも。

Pick up

香ばしい肉は別に揚げてトッピング。「肉ソース焼きそば」980円は、麺と野菜をそれぞれ炒め、最後に下味をつけて揚げた豚肉をのせたもの。食感と香りがいい。

ストレート麺にソースは薄く絡める。新潟から取り寄せるストレート麺は蒸して香りと味を良く仕上げる。麺の良さを伝えるため、「肉ソース焼きそば」のソースは控えめ。

毎日使う分だけ蒸すしっとりとした麺。その日に届いた麺を厨房で蒸し、少し休ませてしっとりとさせる。季節によって水にさらす時間や蒸し時間を細やかに調整している。

「青菜からし焼きそば」1,050円も人気。

梅林 (中国料理)

蒸籠で作る肉まんやしゅうまい、ラーメンやワンタン麺など焼きそば以外のメニューも豊富。

住所:東京都品川区東五反田1-24-1 TEL:03-3473-2005 営業時間:11:00〜15:00、17:00〜21:15LO(土祝〜21:00LO)定休日:日 席数:45席(1Fはテーブル席、2Fは座敷)

“深蒸し麺のカルチャーが途絶えないように発信中!”(塩崎省吾)

小石原 あとは〈あぺたいと〉もおすすめしたい。独特のストレート麺を茹でて洗わず、鉄板でパリッパリッと焼く猯礁名討瓩如

塩崎 初めて食べたときはびっくりしましたね。僕のおすすめはのりシソトッピングです。

小石原 大阪風の焼きそばを食べるなら、どこでしょう?

塩崎 〈大阪お好み焼き ともくん家〉がおいしいですよ。

小石原 こちらは太麺ですね。

塩崎 女性が入りやすい店構えなのもポイントです。

小石原 一見するとワインバルのような。探してみると本当にいろんなお店と麺がありますね。

塩崎 ブームに終わらず、食文化として残ってほしいです。

月島〈あぺたいと酒場〉 

ちびちびとつまんで飲めるパリパリ食感の焼きそば

食感と味の変化を楽しむトッピングの妙。「両面焼きそば小(1玉)」780円。生卵(+60円)をのせればまろやかで軟らかな麺に。シンプルなのりシソもおすすめ。自家製麺を茹でてそのまま鉄板へ。麺はストレートの自家製麺。それを茹で、厚みまで指定して特注した鉄板で高温で焦げ目をつけて作る。そこにソースがからんでいく。後味さっぱりな紅しょうがサワー440円。 あぺたいと酒場 月島総本店 (居酒屋)

数ある店舗の中でも、居酒屋スタイルの月島店で、つまみにもシメにもなる焼きそばのポテンシャルを堪能しよう。

住所:東京都中央区月島3-14-8 TEL:050-5305-6086 営業時間:11:30〜14:00LO、17:00〜24:00(土祝は通し営業で祝〜22:00) 定休日:日、祝の月 席数:38席

赤坂 〈大阪お好み焼き ともくん家〉 

大阪の友人宅に招かれたような居心地。

フレンドリーな魅力はメニュー開発にも。和気あいあいとした雰囲気のこの店では、まかないからアイデアも浮上。海鮮を使った「塩バター焼きそば」1,400円もその一つ。つるりとした茹で麺を生かす変わり種。麺の太さを細かく指定したもちもちとしたストレートの茹で麺は、パスタのような喉越し。故に、洋風アレンジの焼きそばも多い。 大阪お好み焼き ともくん家  (お好み焼き)

大阪では細麺が主流だが、ここでは太めの麺を採用。「かす焼きそば」など大阪定番の味もスタンバイしている。新橋本店とのハシゴをするお客も。

住所:東京都港区赤坂3-16-5 SKR AKASAKA 3FTEL:03-6435-5548 営業時間:17:00〜23:00LO(土〜22:00LO) 定休日:日、祝 席数:36席

OTHER CHOICES

神保町 やきそば みかさ行列ができる焼きそば専門店。北海道産小麦を使った自家製のちぢれ麺は、茹でてから炒めることでもちもちとした食感に。そこにスパイシーなソースが絡むのだが、麺用、具材用、仕上げ用と3種のソースを使い分けている。住所:東京都千代田区神田神保町2-24-3 1F

焼きそばのまるしょう 本郷三丁目店特製ソース焼きそばのほか、スパイシーカレーソース、ほくほくポテトバター雪塩、チーズタッカルビなどさまざまな味付けがあり、常に10種以上がラインナップしている。「このバリエーションの多さは体験してほしい」と塩崎さん。住所:東京都文京区本郷3-42-7

次号のゲストは倉本康子さんで、「大衆酒場の嗜み方」がテーマです。

photo_Kaori Ouchi illustration_Chihiro Yoshii text_Kahoko Nishimura

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No.1225 『美味しいパンには、理由がある』 2023年09月28日 発売号

リニューアル二冊目は、まるごと一冊、パンの特集です。 朝、昼、夜に、おやつの時間と、美味しいパンは私たちの必需品。 探究心と遊び心を持つパン職人のおかげで、日本のパン文化は今日も進化しています。 生産背景がわかる国産小麦にこだわり、地方では薪窯でパンを焼く人が増え、 室町時代から続く麹屋の麹を採用した発酵パンも作られています。 活躍シーンも広がり、ワインに、ビールにぴったりなパンも登場。 お取り寄せできるお店も増え、食べ方も、買い方も、多種多様になりました。 北海道から沖縄まで、評判のパン屋を巡り、美味しいパンが生 …

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