BYDはブラジル市場のEVとPHVの合計販売台数で首位に立った(写真は同社のブラジル向けウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)が、南アメリカのブラジルで販売網を急拡大している。同社は9月15日、前日にIR(インベスター・リレーションズ)部門が対応した機関投資家の個別訪問インタビューの要約を開示。そのなかで、2023年末までにブラジルの販売店数を100店舗に増やす計画を明らかにした。

BYDの開示情報によれば、6月末時点のブラジルの販売店数は24店舗。同社はブラジル市場でEVとPHV(プラグインハイブリッド車)の販売台数を急速に伸ばしており、このカテゴリーでは7月と8月の2カ月連続でメーカー別販売台数の首位に立ったという。

ブラジルのEVシフトは初期段階

それだけではない。BYDはブラジルでの現地生産の準備も進めている。同社は7月5日、ブラジルのバイーア州に3つの工場を建設すると発表。1つ目の工場では乗用車の組み立て、2つ目ではリン酸鉄系リチウムイオン電池の材料加工、3つ目では電動バスおよび電動トラックの車台の生産を行い、2024年後半の稼働を目指している。

ブラジルの「新エネルギー車」の市場は(中国に比べて)まだ発展の初期段階にあるが、着実に成長している。業界団体のブラジル電気自動車協会(ABVE)のデータによれば、ブラジル市場における8月の「電動車」の販売台数はエンジン車を含む総販売台数の4.75%にすぎないが、この比率は前年同月比で2.56ポイント上昇した。

なお、ブラジルの新エネルギー車(電動車)の定義にはEVとPHVのほかにハイブリッド車(HV)も含まれている。中国の定義(訳注:HVを含まない)とは異なるため、数字を比較する際には注意が必要だ。

つい最近まで、ブラジル市場での新エネルギー車の主役はHVであり、その大部分は日本メーカーのクルマだった。しかしBYDや長城汽車、奇瑞汽車など中国メーカーの進出とともに、状況が急速に変わりつつある。


ブラジル市場にはBYD以外の中国メーカーも続々進出している(写真は長城汽車のブラジル向けウェブサイト)

ABVEのレポートによれば、ブラジル市場では8月のEVとPHVの合計販売台数が初めてHVを上回った。その要因についてABVEは、「中国メーカーが積極的に新型車を投入したり、ブラジルへの投資を発表したりした結果だ」と分析した。

1〜5月の輸出台数が4倍に


本記事は「財新」の提供記事です

ブラジル政府は輸入車に対して高い関税を課しているが、EVについては関税を免除し、PHVについては半減する優遇策をとっている。このようなブラジル政府のEVシフト推進の姿勢も、中国メーカーの事業拡大の追い風になっている。

中国の業界団体のデータによれば、2023年1月から5月までにブラジルに向けて輸出された中国製の新エネルギー車は1万台を突破。前年同期の4倍超に急増した。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は9月15日

(財新 Biz&Tech)