「お金持ち男性」と結婚しやすい女性の意外な職業
(写真: Fast&Slow/PIXTA)
2020年の国勢調査では、40代が日本で最も人口の多い世代となりました。1971年から1974年に生まれた「団塊ジュニア」(年間200万人超出生)が2020年には46歳から49歳でしたので、当然の結果となっています。
団塊ジュニアの親世代である団塊世代(年間270万人出生)はすでに70代にあり、男性を中心に死亡による人口減が加速しているとはいうものの、40代以上人口:30代以下人口が6:4となっていますので、ライフデザインに関する「普通」の世論がどうしても中高年の意見に偏る傾向にあります。
「職業で見た女性の成婚しやすさのランキング」
教育水準や法律が大きく変わる中で、ライフデザインも中高年と若者との間では、大きなズレが生じています。これまでにもいくつかその証拠となるデータを示してきましたが、今回は結婚相談所に婚活会員データを提供しているIBJが発表している「成婚白書」から、非常に興味深いデータを紹介したいと思います。
結婚相談所は、お見合い相手の紹介料、成婚料の支払いがあるなど、婚活の中でも資本的に恵まれている層の結婚の傾向となります。どちらかといえば普通より経済的上位にある男女の結婚のカタチ、といえそうです。
そう聞くと、中高年層であれば「お金持ち男性が若くてかわいい女性と結婚するのだろうか」とイメージする人も少なくはないでしょう。しかし、同社が発表した白書の「職業で見た女性の成婚しやすさのランキング」を見ると意外な結果となっています。
IBJは会員の職業で見た成婚しやすさの計算指標として、(成婚者に占めるその職業の方の割合)/(会員に占めるその職業の方の割合)を算出しています。この指標の割合が高いほど、成婚しやすい職業といえます。100%となった場合、母集団の割合どおりの結婚割合なので、成婚しやすくもしにくくもない職業、となります。
結婚しやすい女性の職業の特徴
結婚相談所経由の結婚において、結婚しやすい女性の職業の圧倒的1位は、2020年「弁護士」、2022年「航空業界関連職」「薬剤師」「歯科医師」でした。母集団で占める割合のほぼ2倍近い結婚しやすさ、ということになります。
簡単にイメージするために、2020年の1位である弁護士女性の成婚しやすさ199%を例に取り上げてみます。200人の女性がいて、そのうち弁護士女性が20人いたとします。成婚者が100人出たとすると、そのうち10人が弁護士女性であれば「普通」です。しかし、この結果からは20(19.9)人が結婚できました、ということになるのです。つまり、2020年は弁護士女性の人気が極めて高かったことがうかがえます。
いずれにしても120%以上の成婚しやすさを示した職業のほとんどがイメージ的に「しっかりしていて職業安定感がある」、「難関資格の士業が多い」、そして「コミュニケーション力の高そうな女性」といったところです。少なくとも、物言わぬ言いなりになりそうな女性、というイメージは皆無といえます。
逆に成婚しにくい女性の職業を見てみると、ワースト1位は2020年「定年退職」、2022年「家事手伝い」となっています。2020年と2022年の双方に「家事手伝い」「定年退職」、そして図表では見えていませんが2022年のワースト11位に「学生」、2020年の8位に「パート・アルバイト」がきていることからも、「年齢が高すぎる、低すぎる、経済的に自立していない」は「婚難を招く」ということが言えそうです。
時代変化をしっかりとらえた婚活を
アプリ婚活などと比べて、お金持ち男性の登録が多そうな結婚相談所であっても、「若くて物言わぬかわいい女性を選ぼう」という男性が多いという結果には決してなっていません。また、「社会的な立場のある女性よりも、家事育児に専念しそうな『尽くす』女性が選ばれる」という結果にもなっていません。むしろ逆、といったほうが適切でしょう。
成婚白書の集計対象となったIBJ成婚男性の年収を「成婚白書〜2021年度版〜」でみてみると、成婚した男性の平均年齢は39.6歳、平均年収は724万円となっています。
これは国税庁が発表している「令和3年度分 民間給与実態調査」において30歳代後半の給与所得者の平均給与が533万円であることを考えれば、一般的なイメージどおり、かなり富裕層の男性の結婚といえます。このことから、次のことが指摘できるでしょう。
●女性であっても結婚を考えるならばしっかりとした仕事を持っていること。
●特にお金持ち男性狙い、というならば、なおさら、女性自身も経済力を有する覚悟が必要である。
●結婚相談所は、お金持ち男性が自分の言いなりになる女性、家事育児に専念してくれそうな女性との成婚をサポートする組織ではない。
●かつて主流であった専業主婦、パート妻を求めた結婚は少なくとも富裕層では流行らない。
毎年、婚姻届の約4割の離婚届が提出される時代において、せっかく出会えた2人の未来が破綻をきたさないような、互いに均等に助け合えるようなカップルが成立しやすくなっているともいえる、非常に興味深い結果であると思います。
(天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー)